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DIクイズ3(A)
DIクイズ3(A) こむら返りにエルカルチンが出された理由
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

出題と解答 : 東風平 秀博
(田辺薬局株式会社[東京都中央区])

A1

芍薬甘草湯の服用により、副作用の偽アルドステロン症による浮腫を起こした恐れがあると考えたため。

A2

脂肪酸の代謝に重要な成分であるカルニチンを補うことで、こむら返り(有痛性筋痙攣)の発生を抑えるため。

 こむら返り(有痛性筋痙攣)は、下肢の筋肉が突然収縮して戻らなくなり、痛みを伴いながら痙攣を起こしている状態を指す。原因は明らかではないが、睡眠時や疲れている時、妊娠、電解質異常がある場合などに起こりやすい。また、透析患者や高齢者も起こしやすい。

 治療には、筋肉の伸展や患部の保温などのほか、芍薬甘草湯がよく使われる。同薬は、(1)芍薬に含まれるペオニフロリンが、筋収縮に必要なカルシウムイオンの細胞内への取り込みを抑制する、(2)甘草に含まれるグリチルリチン酸が、カリウムイオンの細胞外への排出を促進する─という機序で筋肉を弛緩させる。

 しかし一方で、甘草やグリチルリチン含有製剤を使用すると、副作用として偽アルドステロン症を起こすことがある。偽アルドステロン症は、高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスなどの原発性アルドステロン症に似た症状を示す疾患で、芍薬甘草湯の添付文書に重大な副作用として記載されているほか、厚生労働省が作成する「重篤副作用疾患別対応マニュアル」にも取り上げられている。

 同マニュアルには、発症のリスク因子として、高血圧や心不全に対してチアジド系降圧利尿薬やループ利尿薬が投与されている場合が紹介されている。Fさんには心不全があり、ループ利尿薬のフロセミド(商品名ラシックス他)を服用していることから、偽アルドステロン症を発症しやすいと考えられる。

 さらに同マニュアルでは、早期発見の手がかりとして、四肢脱力や全身倦怠感のほか、浮腫を挙げている。Fさんは足のむくみがひどくなってきたと話していることから、主治医はFさんが芍薬甘草湯により、偽アルドステロン症を起こした可能性があると考え、薬を変更したと推察される。

 さて、有痛性筋痙攣に対して、近年、使用例が増えているのが、今回Fさんに処方されたレボカルニチン塩化物(エルカルチン)である。

 カルニチンは筋細胞における脂肪酸代謝に必須のアミノ酸誘導体で、主に肝臓と腎臓で合成され、腎臓で再吸収される。腎機能が低下している患者や透析患者では、しばしばカルニチンの欠乏や不足が生じる。カルニチンが不足すると、筋細胞におけるエネルギー代謝が障害され、筋肉痛や筋痙攣などの骨格筋症状が表れる。

 透析患者を調べた研究で、有痛性筋痙攣を起こしやすい患者は、そうでない患者よりも血中カルニチン濃度が低いことが明らかになった。また、カルニチンを補充すると透析中の筋痙攣が抑制できることが報告され、有痛性筋痙攣の発症を抑制するためにカルニチン補充による治療が試みられるようになった。

 なお、レボカルニチンは、以前は、プロピオン酸血症とメチルマロン酸血症に対してのみ使用が認められていた。しかし、カルニチンの欠乏は、有機酸・脂肪酸代謝異常症や血液透析、肉類の摂取制限など様々な原因で生じる。現場では、これらに対して適応外処方でレボカルニチンを使用する状況が続いていたが、その後、同薬を二次性も含めたカルニチン欠乏症に使用できるよう公知申請が行われ、2011年3月に効能を「カルニチン欠乏症」とすることが承認された。

参考文献
1)Geriat Med. 2011; 49(6): 679-81.
2)『重篤副作用疾患別対応マニュアル(偽アルドステロン症)』 厚生労働省 2006.
3)医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 『公知申請への該当性に係る報告書』(レボカルニチン塩化物)厚生労働省

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 これまで服用されていた芍薬甘草湯という漢方薬は、こむら返りに大変よく効くのですが、まれに、むくみなどの副作用が出ることがあります。Fさんの足のむくみがひどくなってきたので、先生は副作用ではないかと心配し、お薬を変更されたのだと思います。

 今日からお飲みいただくエルカルチンは、筋肉でエネルギーを作り出すのに欠かせない栄養素です。こむら返りなど、筋肉のエネルギー不足で起こる様々な症状を和らげます。飲んでみてどうだったか、次回教えてくださいね。

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