(1)単純部分発作 (1)~(3)の全て
てんかんは有病率0.5~1%の、頻度の高い神経疾患である。乳幼期から高齢期まで幅広い年齢で発病するが、3歳以下の発病が最も多く、全体の約8割は18歳以前に発病するといわれている。
若年で発症した患者にとって、自動車の運転免許の取得は大きな悩みの一つである。かつてはてんかんと診断されると運転免許を取得できなかったが、2002年6月1日に施行された改正道路交通法において、てんかんなど一定の病気があっても、条件を満たせば運転免許が取得できるようになった。てんかんに関する運用基準は表の通りである。同基準には、抗てんかん薬の服用の有無に関して記載はなく、コントロールのために抗てんかん薬を服用していても、免許を取得できる。
てんかんの発作型は、全般発作、部分発作、二次性全般化発作(部分発作から始まり、全身の痙攣が起こる)に分けることができる。そして部分発作には、意識が保たれている単純部分発作と、意識が消失する複雑部分発作がある。
Tさんのてんかんは、医師が「発作型から見て、車を運転しても大丈夫」と伝えていることから、表の3)に該当する単純部分発作と推察される。
てんかんの薬物治療においては、06年以降、ガバペンチン(商品名ガバペン)、ラモトリギン(ラミクタール)、トピラマート(トピナ)、レベチラセタム(イーケプラ)といった新規の抗てんかん薬が日本で次々と発売された。
旧来の抗てんかん薬は相互作用が多く、併用に注意が必要であったが、新規の抗てんかん薬は、ラモトリギン以外は抗てんかん薬同士の相互作用は少ないとされる。Tさんに処方されているトピラマートについては、相互作用により併用注意になっている薬剤に抗てんかん薬のフェニトインとカルバマゼピンがある。部分発作に対する第一選択薬はカルバマゼピンであるが、トピラマートと併用するため、第二選択薬のゾニサミド(エクセグラン)が処方されていると考えられる。
なお、運転免許の取得に際して、免許の拒否または保留の事由となる病気には、てんかんの他に、統合失調症、躁うつ病、再発性の失神(神経起因性失神、不整脈を原因とする失神)、無自覚性の低血糖症(薬剤性低血糖症など)、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、脳卒中、認知症、アルコールの中毒者などがある。これらの病気にかかっている人の免許取得については、都道府県警察の運転免許センターなどに設置されている運転適正相談窓口で相談するようアドバイスするとよいだろう。
表 てんかんのある人で運転免許が認められる条件 ※2)に該当する場合については、一定期間(X年)後に臨時適性検査を行うこととする。 イラスト:加賀 たえこ Tさん、もう高校3年生なんですね。てんかん患者さんの運転事故がたびたび報道されましたから、お母様としては心配なのですね。
てんかん患者さんの運転免許の取得については、基準が決められています。どのぐらいの期間、発作がないかによって違いますし、発作のタイプによっても異なります。主治医の先生が「車を運転しても大丈夫」とおっしゃっておられるのなら、安心して免許を取得できると思います。
Tさんには、2種類のてんかんのお薬が出ています。てんかんは発作がなくても、主治医の先生から服用をやめてよいといわれるまで、お薬を続けて飲んでいただくことがとても大切です。
うっかり飲み忘れのないように、お母様からもTさんにお声を掛けてくださいね。
出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)
出典:警察庁「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」別添こんな服薬指導を
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