DI Onlineのロゴ画像

InsideOutside
ルールなど撤廃してしまえ
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

 2012年の調剤報酬改定において、基準調剤加算の施設基準が見直され、「地域の保険医療機関の通常の診療時間に応じた開局時間となっていること」という条件が加わったことは記憶に新しい。その疑義解釈から、「昼休みに閉局していても、その間に在宅薬剤管理指導を行っていればよい」とか、「近隣医療機関より1週間の総開局時間が長くなくてはならない」といった、非常に細かな縛りも明らかになった。

 これには「薬局の薬剤師は昼休みも取らずに働けということか!」「労働基準法に触れるのでは?」といった疑問の声が上がったが、薬局に対する諸々の規則が厳しくなるのは、今に始まったことではない。前回の調剤報酬改定の際も、調剤手順が子細に決められ、調剤明細書の発行が義務化された。このように改定の都度、新たなルールが増えている。現役の管理薬剤師といえども、全貌を正しく記憶しておくことは困難とも言えるのではないか。

 開局時間に関しては、「隣の開業医は2時間半も昼休みを取っているのに、なぜ薬局だけ」という恨み節も分からないわけではない。しかし、ルールができるには、それなりの理由がある。

 増える一方の事細かなルールの裏には、言葉はきついが、やはり増える一方の「ダメ薬局」の存在があると筆者は考える。患者のため、地域のために身を粉にして働く薬剤師が多数いる一方で、十分な薬歴も書かない薬剤師、あるいは「笑っていいとも!」が始まったらカーテンを引いてしまうような薬局も、同じくらい、いやそれ以上に存在しているのではないだろうか。

 そう考えると、薬局のルールは、これから先も厳しくなっていくだろう。「10年後、20年後の薬局や薬剤師は、規制でがんじがらめにされてしまうのではないか」と案じてしまう。だがその半面、どこかで大きな揺り戻し、すなわちルールの緩和や廃止があるのではという、期待にも似た思いもある。

 緩和なんて不可能と思うかもしれない。だがここで、薬剤師の間で今、流行となっているバイタルサインを例に考えてみよう。一昔前まで「薬剤師は患者の体に触れてはならない」などと言われていたが、現在では多くの識者が、「それは都市伝説だった」と声を大にして語っている。

 基準調剤加算の施設基準については厳格なルールが規定された一方で、バイタルサインについては業界を挙げて、「薬剤師も積極的に関わろう」と推奨されている。ましてや厚生労働省が「薬剤師はバイタルサインを取ってはならない」といったルールを定めることはないだろう。 この違いを見れば、ルールは誰に向けたものかで変わるということが分かる。

 ならばいっそのこと、事細かにルールを作るのではなく、今あるルールを一度全て廃止して、薬剤師法第1条にある、「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」の部分に対して忠実に業務を遂行しているか否かを基準に、その薬局や薬剤師を評価してみてはどうだろうか。

 門前の医療機関に合わせて昼休みを取るとか、十分な薬歴を書かないとかは、結局はその薬剤師の「思い」の表れであろう。だから表面的な部分をルールで縛っても、結局は何も変わらない。だったら、底辺を規定するような網は取り外してしまい、自主的なルールの構築に期待しようというわけだ。

 唯一にして最大の心配は、それが守れない薬剤師が、実はかなりの数に上るのではないかという点だ。「薬剤師としての良心」までも薬担に盛り込んでもらわなければならないほど、この国の薬剤師は落ちぶれてはいないと信じたいのだが。 (十日十月)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ