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DIクイズ4(A)
DIクイズ4(A) アリセプト再開時の投与量
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

出題と解答 : 伊藤 雅之
(株式会社コスモファーマ東京[福島県郡山市])

A1

(2) 約3週間

 ドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト他)は、アセチルコリンの加水分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより、アセチルコリンの分解を抑制し、作用部位(脳内)のアセチルコリン濃度を高める。その結果、コリン作動性神経の神経伝達が促進され、加齢とともに低下していく認知機能などをより長く維持するとされる。

 しかし、ドネペジルの服用により、嘔気、嘔吐、食欲不振など消化器症状の訴えが多いことも事実である。その原因は、コリンエステラーゼの阻害により、末梢のムスカリン受容体へのアセチルコリン作用が増強するためである。すなわち、胃の壁細胞にあるムスカリン受容体(M1受容体)への作用が増強され、胃酸分泌が促進されるために生じる。

 報告の多くは投与初期に集中しており、ある程度連用すると慣れにより消失することが多いため、投与初期の血中濃度の上昇に起因した、コリンエステラーゼ阻害作用に基づく急性症状と考えられている。従って消化器症状をある程度軽減するために、添付文書では3mg/日から服用を開始し、1~2週間後に5mg/日へと増量するよう定めている。

 消化器症状がごく軽微な場合には、経過観察のみで症状が軽減し、継続投与が可能なことがある。また、ドネペジルの一時的な減量や休薬によって、症状が軽減・消失する場合もある。一方、症状が重い場合は、消化器系薬剤の併用という選択肢もあり、患者の症状に合わせた対応が必要となってくる。

 さて、今回のNさんのようにドネペジルを一度中止した場合、再開時の投与量をどう判断すればよいだろうか。先に述べたようにドネペジルによる消化器症状の発現機序は、血中濃度の上昇に起因したコリンエステラーゼ阻害作用に基づく急性症状と考えられている。そこでドネペジルが体内から完全に消失している場合は、消化器症状の発現する可能性が、投与初期同様に高くなると推測される。

 ドネペジル(錠5mg)の半減期は、89.3±36.0時間である。一般に半減期の5倍の時間が経過すれば、体内からほぼ排泄されたと見なすことができる。このことから、約18.6日たたないとドネペジルの体内濃度は0にならないと考えられる。実際、アリセプトの国内第3相臨床試験において、服薬中止後3週間以内では、同薬物の血中濃度が0になっていないことが確認されている。

 以上のことから、ドネペジルの休薬期間が3週間以内であれば、5mg/日から再開しても、消化器症状の副作用発生は低く抑えられると考えられる。今回のNさんのように、中止してから3週間を超えている場合は、3mg/日から再開するように疑義照会が必要だろう。

 代表的な認知症治療薬について、維持量のままで再開できる休薬期間を表にまとめたので参照されたい。

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こんな疑義照会を

イラスト:加賀 たえこ

 今回、アリセプトが再開されていますが、Nさんの場合、中止してから28日経過しています。アリセプトの半減期を勘案すると、その主成分は既に体内から排出されているので、新規の服用開始と同様の条件と考えられます。そこで、消化器症状の副作用回避の観点より、5mg/日ではなく3mg/日から開始すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

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