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DIクイズ3(A)
DIクイズ3(A) ポンタールシロップ食前投与の理由
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

出題と解答 : 後藤 洋仁
(横浜市立大学附属病院薬剤部)

A1

(2) 嚥下痛

A2

(1) プロスタグランジン(PG)製剤
(2) プロトンポンプ阻害薬(PPI)
(4) H2受容体拮抗薬

 食道癌の罹患率、死亡率は、ともに40代後半以降に増加し始め、特に男性は女性に比べて急激に増加する。喫煙や飲酒、熱い食べ物の摂取などが食道癌の発生因子とされている。

 食道癌は、健康診断や人間ドックのときに、内視鏡検査などで発見されることもある。無症状で発見された食道癌は治る確率が高い。初期には、食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだときに染みるように感じることがある。しかし癌が少し大きくなると、このような感覚を感じなくなるため、受診の機会を逃すことも少なくない。そして進行するにつれて、狭窄感や嚥下困難の症状が現れてくる。

 食道癌の治療は、外科療法を中心とし、術前・術後に化学療法や放射線療法が行われる。狭窄感や嚥下困難の症状は、摂食に影響を与え、低栄養状態に陥らせる要因となる。低栄養状態になると、手術後の傷口閉塞の遅延などを招き、治療計画に重大な影響を与える恐れがある。

 そのため、食事の際に、狭窄感や嚥下困難の症状を和らげて、食べられるようにすることが大切である。医師がメフェナム酸のシロップ剤(商品名ポンタールシロップ)を食前服用で処方したのは、おそらくGさんに食べ物を飲み込むときの痛み(嚥下痛)があり、食事の量が減っていたためと思われる。

 メフェナム酸は、アントラニル酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で、作用機序はシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジン(PG)生合成抑制である。COXには、生理機能の維持に関与し胃粘膜や血小板など多くの細胞で発現しているCOX1と、炎症に関与しているCOX2がある。メフェナム酸は、COX2選択性が低く、COX1も阻害するため、上部消化管傷害(NSAIDs潰瘍)を引き起こしやすい。そのためメフェナム酸は通常、食後に服用することが勧められる。しかし、Gさんのように嚥下痛を抑える目的で使用する際には、食前、つまり空腹時に服用せざるを得ず、NSAIDs潰瘍のリスクが高くなる。

 日本消化器病学会が2009年に発表した『消化性潰瘍診療ガイドライン』では、NSAIDsの短期投与(3カ月未満)での胃潰瘍発生の予防には、PG製剤またはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用が推奨されている。また十二指腸潰瘍発生の予防にはPG製剤、PPIのほかH2受容体拮抗薬の併用も有効である。

 今回Gさんには、上記のようなNSAIDs潰瘍の予防薬が処方されていないため、医師に確認して追加してもらうとよいだろう。また、NSAIDs潰瘍の発生を早期に見つけるために、どのような症状が出やすいのかを患者に伝えておく必要がある。NSAIDs潰瘍の自覚症状としては、上腹部の疼痛や胸焼け、黒色便などが挙げられる。食道癌そのものの症状と切り離せるような説明が望ましい。

 なお、メフェナム酸は、主として肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2C9により代謝される。そのため、フルコナゾール、フルボキサミン、ワルファリンカリウムなどの薬剤との併用にも注意する必要がある。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 物を飲み込むときに喉が痛んで、お食事の量が減っていますか。今回Gさんには、栄養を補給するためにエンシュア・リキッドが出されています。こちらのアズレンは、喉の荒れを抑えるうがい薬です。

 そして、このボトルに入っている白い水薬が、ポンタールシロップという痛み止めです。お食事の前に飲むことで、食べ物を飲み込むときの痛みが大分楽になると思います。お薬が効くまでに30分ぐらいかかりますので、お食事の30分前には飲むようにしてください。

 一つご注意いただきたいのですが、この痛み止めで、胃が荒れることがあります。胃の辺りが痛んだり、胸焼けがする、黒っぽい便が出た、というときには、ポンタールシロップの副作用かもしれませんので、すぐに先生に連絡してください。胃の荒れを予防するお薬もありますので、先生に出してもらうよう相談しましょうか。

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