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特集:薬局のリーダーになる技術
調査データ編
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

 本誌調査によって、管理薬剤師は、通常業務に加えて数多くの管理業務をこなしている実態が明らかになった。大きな悩みは、収入と周囲のモチベーション。スタッフを頼れる部下に育て上げ、業務を分担したいところだが、うまくいかずに管理薬剤師が業務を抱え込んでいる。

 薬局の良しあしを決める大きな鍵は、管理薬剤師が握っていると言っていい。ほとんどが薬局長を兼ね、様々な管理業務を担う。管理薬剤師には、気苦労や悩みが絶えないはず─。そう考え、本誌が行った管理薬剤師調査には、薬局関係者から1000件近くの回答が寄せられた。

 まずは調査データを基に、管理薬剤師の実態を見てみよう。

 管理薬剤師と共に働く薬剤師の人数は、常勤、非常勤ともに0~2人が8割近くを占め(Q1)、多くの人は小さな組織で働いていることが分かった。1日の労働時間は、8時間~9時間以上が89.2%を占めた(Q2)。管理薬剤師は常勤で、開局時間をカバーするよう働いているとみえる。1日の残業時間は、0~1時間未満が52.2%だった(Q3)。1日3時間以上残業する人もいるが、全体的にみると、残業時間はそれほど多くはなかった。

 Q4は、担当している管理業務を全て挙げてもらったものだ。90%以上の管理薬剤師が「医薬品の在庫管理」を担当。加えて80%以上が「薬局の備品や機械の管理」をし、70%以上が「医薬品の有効性・安全性情報の管理」「調剤過誤対策の取りまとめ」「スタッフの教育」を行っていた。

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 医薬品の在庫管理は薬局経営の生命線ともいえる大切な業務だ。また備品や機械は、補充やメンテナンスをしないとスムーズに使えない。医薬品情報の管理、調剤過誤対策、スタッフ教育は、業務の質を保つ上で不可欠。

 つまり、管理薬剤師は薬局で重要なモノ、ヒト、システムの管理を一手に引き受けている。他にも60%以上が行う管理業務を合わせると、管理薬剤師が受け持つ業務は多岐にわたる。

 これらのデータから、管理薬剤師は小さな組織のリーダーとして様々な管理業務を1人で担当。業務は、あまり残業時間に回さないよう勤務時間内にキビキビとこなしている─。そんな勤務実態が浮かび上がった。

 報酬面で見てみると、薬局の運営という責任を背負う分、管理薬剤師の年収は高かった。500万円台が31.4%、600万円台が31.2%と両者で半分以上を占め、700万円台も13.5%存在した(Q5)。対して管理薬剤師ではない一般の薬剤師は、非常勤のケースも含むため、300万円未満が26.9%で最も多かった。

業務多いのに他の常勤と同じ収入

 では、管理薬剤師はどんな悩みを持つのだろうか。今回の調査で最も多くが挙げたのは、「責任が重いのに収入が低い、または上がらない」と「スタッフのモチベーションを高めるのが難しい」だ。いずれも回答者の40.5%が悩んでいると答えた(Q6)。

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 収入に関しては、Q5で見た通り、一般の薬剤師より高い水準だ。ただ、このデータは、一般の薬剤師が常勤か非常勤か、労働時間はどのくらいかという情報を反映していない。

 ここで、役職手当である「管理薬剤師手当」の月額を聞いたデータを紹介しよう。すると1万円~3万円未満が27.4%、3万円~5万円未満が24.3%と続く一方で、「ない」という回答が21.2%もあった(Q7)。勤務時間の短い非常勤薬剤師より給与が高いのは当たり前としても、他の常勤薬剤師に比べて給与が高くなければ、納得できないのはうなずける。調査に寄せられた管理薬剤師の声を聞いてみよう。

・残業手当は基本的になし。管理薬剤師手当もなし。もちろん業務は他の薬剤師より多い。それなのに、給与は他の常勤薬剤師と変わらないと思うと釈然としない。(30代女性)

・スタッフが業務時間内にできなかった仕事は、基本的に私が引き受けている。かなりの残業時間だが、同じ年齢の常勤薬剤師と月収を比べると、管理薬剤師手当分の3万円しか違わない。(20代女性)

・気難しい医師や患者の対応は、必ず私に振られる。しかし、給料の差を考えると、そこまで責任を持つべきかと悩む。(30代男性)

 また、管理薬剤師が一生懸命業務に取り組んでも評価や収入に結び付かず、不満を感じるケースもあった。

・以前は年間3200万円の売り上げだった薬局を、4年間で年間1億3500万円の売り上げまでに成長させた。しかしこの間、一度も給料が上がっていないことに納得がいかない。(40代男性)

・今の薬局に異動してから様々な点を見直し、以前より少ない人数で売り上げを伸ばしているが、給与には反映されない。(20代男性)

周囲のやる気のなさに悩む

 もう一つ、収入と同じくらい大きな悩みとして挙がったスタッフのモチベーション。周囲のやる気がなければ、“のれんに腕押し”で、管理薬剤師がいくら打っても響かないだろう。これではリーダーシップを発揮するのは難しい。実際に、こんな訴えがあった。

・なれ合いの雰囲気があり、患者がいてもしゃべり続ける。調剤もしゃべりながら行うことがある。下手に注意すると「パワハラだ」と言われかねず、対応に苦労する。(30代男性)

・他の薬剤師はみな主婦で子持ち。家庭優先で、シフト勤務に急に穴を開けることもあれば、週末勤務には一切応じない。(40代女性)

・同僚に調剤業務の流れを改善しようと提案したら、「今までのやり方を変えたくない」「面倒だ」と言われた。(60代女性)

 モチベーションが低い人には、いくら教育してもスキルアップは望みにくい。管理薬剤師の「特に負担な業務」の1位に「スタッフの教育」が挙がり(Q4)、Q6で「スタッフが思うように成長してくれない」を多くが悩みとして挙げたのは、至極もっともな結果だ。

・部下のパート薬剤師は、いくら注意しても同じミスをし、薬の名前を覚えない。手を付けた仕事を中断した後、忘れて帰宅する。(50代男性)

・前回の指導内容を確認してから患者に対応するよう何度も言っているのに、確認せず投薬する薬剤師がいる。また、投薬後は患者を見送るよう指導しているが、さっさと引っ込む。薬をカバンに入れた後、顔を上げたら誰もいなくて驚いている患者もいた。(20代女性)

・部下は思い込みやうっかりでミスが多いのに反省しない。(40代女性)

 モチベーションの低さは、スタッフのスキルアップを困難にする上、業務を分担できず管理薬剤師の負担が減らないという問題にも進展する。残業時間はそれほど多くはなくとも、勤務時間中は昼食もろくに取れない、有給休暇を全く取れない、と悩む声が数多く寄せられた。

・毎朝早くに出勤し、常に休憩なし。入れ代わり立ち代わり若い薬剤師がやってくる職場で気が抜けない。昼休みに書類やメールを見ながら、冷えた弁当を5分でかき込む。薬歴を打ち、気がつくと午後の調剤が始まる……。(40代男性)

・業務を分担したくてもできない。調剤報酬を理解して、処方鑑査もきちんとできる薬剤師は少ない。(50代女性)

・ほとんどの仕事を私がしている。他の薬剤師は好きな仕事しかしない上、すぐ「辞める」と脅す。(30代男性)

・常勤1人、パート薬剤師1人の薬局。以前勤務していた病院では複数の薬剤師がいて、交代で夏休みや正月休みを取っていたが、今は長期休暇など夢のまた夢。(40代男性)

スキル向上で解決の糸口をつかめ

 ここまでに挙げたような管理薬剤師の悩みは、どうすれば解消するだろうか。収入に関しては、特定社会保険労務士でHMS(東京都台東区)の塚本美智成氏は、「管理薬剤師の年収水準は、以前に比べて大分上がっている。600万円台後半は現場の管理薬剤師に出せる上限に近い額。より収入を上げるとなると、役職を高めてエリアマネジャーになるといった方法しかないだろう」と語る。収入を上げたい場合は、現場を離れて経営側に近いところで働く決意も必要になる。ちなみに、「普通の経営者なら、実績を上げたり、経営者と現場のパイプ役になるような貴重な管理薬剤師には、いずれ高い役職を与えるもの」と塚本氏は話す。

 スタッフのモチベーションに関しては、基本的にはスタッフ自身が意識を変えなければならない問題だ。

 とはいえ、上記の別掲記事のように、周囲と良い関係を築いて現場を引っ張る管理薬剤師もたくさんいる。周囲が悪いと嘆くばかりでは何も変わらない。管理薬剤師がリーダーとしてのスキルを向上させれば、解決の糸口が見える可能性がある。次章では、リーダーとして管理薬剤師が身に付けたい知識や技術を識者に伝授してもらおう。

やりがいもいっぱいの管理薬剤師

 今回の調査では、管理薬剤師に悩みだけでなくやりがいも聞いたところ、たくさんの反響があった。そのうち、いくつかを紹介しよう。初めに挙げるのは、自らの考えを実行できると答えた管理薬剤師の声だ。

・経営方針は大まかに提示されるだけ。自分が具体的に計画し、実行に移せるので楽しい。(50代女性)

・店の雰囲気は自分の目指す通りになっている。私のいる薬局はスタッフが全員女性。インテリアや接遇には女性らしい気配りをして、患者に喜んでもらっている。(40代女性)

・「責任を問われるからこそ知識を向上させよう」「スタッフとのコミュニケーションを密にしてトラブルのない環境をつくろう」などと、色々な考えが浮かび、少しずつ実行しているので充実感がある。(20代女性)

 スタッフと良い関係を築いて、より良い薬局作りに取り組んでいる管理薬剤師の声も多かった。

・スタッフ全員で業務の改善方法を話し合い、実行している。その結果、どのスタッフも同じレベルで患者に対応できるようになった。(30代女性)

・スタッフに業務を割り振り、1カ月間の取り組みをミーティングで発表してもらっている。開始当初に比べるとスタッフに成長がみられ、やりがいを感じる。(40代女性)

・全てのスタッフが患者を第一に考え、自ら行動できる職場にいつかなれると信じている。スタッフから前向きな言葉が出てくるとうれしい。(40代女性)

・スタッフに「付いていきます!」と言ってもらえた。調剤報酬改定のときは、薬局の方針を話し合い、皆がまとまって業務に当たった。 (30代女性)

 そのほか管理業務がスムーズに進むことに、やりがいを感じるという声もあった。

・店舗の機器の配置や業務の流れを改善して、業務効率を上げ、早く業務をこなすことができるようになった。(30代男性)

・後発品調剤率の向上やお薬手帳持参の増加について、自分のアイデアが功を奏した。(30代女性)

・前任者が門前医療機関の医師とトラブルを起こしたが、私に代わってから医師との信頼関係を再構築できた。(30代男性)

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