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患者指導ワンポイントレッスン
高齢者の熱中症・脱水を防ぐ
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

 夏季に熱中症で救急搬送される患者の数が急増している。「熱中症患者速報 2011年度報告」(国立環境研究所)によると、救急車で搬送された熱中症患者のうち、65歳以上が男性の33.9%、女性の54.0%を占めている。しかも、65 歳以上では軽症45.8%、中等症49.9%、重症・重篤・死亡4.3%と、若年者に比べ、中等症以上の患者が多い傾向にあった。

暑さや口渇の感受性が低下

 高齢者の熱中症が問題になる背景には、様々な要因が影響している。まず、加齢に伴い、皮膚の温度感受性が低下し、暑さに対する自律神経の順応と体温調節が遅れることがある。また、口渇中枢の感受性も低下するため、喉の渇きを認識しにくくなる。特に、口を開けて呼吸している高齢者は、口渇を感じにくいようだ。

 さらに、発汗量が減少し、皮膚から熱を放散する能力が低下して、深部体温が上昇しやすい。加えて、体液・電解質のホメオスタシス機能が低下するため、電解質異常が容易に起こるほか、腎機能が低下して低張多尿傾向になりやすいのも高齢者の特徴である。

 これらの要因により、高齢者では、住居内での室温の上昇に気づかずに脱水が進み、熱中症を発症した後も発見が遅れがちになり、中等症~重症に至って医療機関にかかるケースが多くなるのである。

服用している薬剤にも注意を

 加齢の影響に加えて、精神・神経疾患、糖尿病、高血圧、心疾患、腎疾患などの疾患を抱え、多数の薬剤を服用していると、熱中症のリスクはさらに高くなる。

 パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などの薬剤は、視床下部機能を抑制し、体温調節や発汗を阻害する。また、高血圧、心疾患、腎疾患の治療のために利尿薬を服用している患者では、十分な水分が取れていないのに利尿薬を服用するケースもあり、特に注意が必要である。

 また、コントロール不良の糖尿病患者では、浸透圧利尿を起こし、脱水に傾きやすい。このほか抗コリン薬や抗ヒスタミン薬など、抗コリン作用のある薬剤も発汗を抑制するので、これらを服用中の患者も熱中症のリスクが高い。

 暑さで食欲が低下すると、水分や塩分の摂取量が不足しがちである。食欲がなくて食べられないときは、薬剤の用量の調節が必要になることがあるので、自己判断で薬を服用せずに、かかりつけ医に相談するよう、指導してほしい。

温度計を置いて室温をチェック

 特に対策が遅れがちな独居の高齢者には、湿度計付きの温度計を居室に置き、「室温28℃、湿度60%を超えたら、エアコンを付ける」など、室温を視覚的に捉えて対策を講じることができるようにアドバイスするとよい。また、いつもより尿の回数や量が減ったり、腋下が乾いていたりするのは、脱水傾向のサインであることを伝えておきたい。

 脱水を防ぐためには、あらかじめ食事以外の水分量と飲む時間を決めておき、喉が渇いたと感じなくても飲むように指導したい。夜間の頻尿を気にして、就寝前に飲水を控える患者もいるが、就寝中も発汗するので飲水は大切だと伝えるべきである。

 水分補給には、経口補水液(ORS)、あるいはスポーツドリンクなどが望ましいが、飲み慣れない、あるいはお茶に比べてコストがかかるなどの理由で、口にしない高齢者もいる。そのような場合には、飲み慣れたお茶に加えて、梅干や塩昆布、漬物など、塩分を含む食品を適宜摂取するように勧めている。

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