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OTCセレクトガイド
下痢 第11回
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 暑い夏の季節、下痢や軟便で「おなかの調子が悪い」と訴えて、薬局を訪れる患者は少なくない。この季節に起こる下痢の原因には、食中毒や食あたりといった感染性下痢(または腐敗性下痢)や、エアコンの冷やし過ぎ、冷たい物の食べ過ぎなど物理的刺激(寒冷刺激)による非感染性下痢がある。

 なお、季節を問わず、精神的ストレスで自律神経のバランスが崩れて起こる下痢、非吸収性物質(キシリトールなどの糖アルコール)やビタミンCの過剰摂取による下痢もよくあるが、本稿では触れない。

 下痢は、一般に有害物質を排泄させる生体防御反応の1つであり、止瀉効果が強過ぎると、かえって症状を遷延させたり、便秘を誘発したりする恐れがあるので、販売時にはOTC医薬品で対処できるかどうか見極めることが重要である。

 下痢を発生機序別に分類すると、分泌性、運動亢進性、浸透圧性に分けられる。

 分泌性下痢は、胃液・膵液・小腸液といった消化液の分泌が著しく亢進することで起こる。消化液は、病原性微生物の感染による消化管粘膜への刺激や、微生物が産生する毒素などの刺激で分泌が亢進する。このほか、消化性潰瘍、特に十二指腸潰瘍で胃酸分泌の亢進に伴って起こる場合もある。

 運動亢進性下痢は、ストレスや暴飲暴食、冷え、消化不良(高齢者に多い)などが原因となるが、病原性微生物による刺激でも起こる。

 浸透圧性下痢は、消化管運動異常による小腸や結腸の水分吸収能の低下や、非吸収性物質の摂取により腸管内の浸透圧が上昇して、腸管内に水分が移動することで起こる。

この成分に注目

殺菌成分

 ベルベリン塩化物は、腸内において有害なアミン(インドール、スカトールなど)生成酵素を阻害し、腸内の腐敗発酵を抑えて便の悪臭を抑制する。また、胆汁分泌作用により腸内の細菌叢を正常にし、病原菌の増加を防ぐ。

 アクリノールは、イオン化して細菌の呼吸酵素を阻害し、腸内細菌を殺菌する作用を持つ。

 クレオソート(木クレオソート)は、殺菌作用を持つといわれていたが、最近の文献では、病原菌が死滅するほどの効果はなく、むしろ大腸の異常運動および腸管内の水分分泌の異常亢進を抑制する作用があることが明らかになっている。

収れん成分

 次硝酸ビスマスおよび次没食子酸ビスマスは、腸粘膜の蛋白質と結合して不溶性の膜を形成し、腸の炎症を鎮めて強力な収れん作用を示すほか、腸の蠕動運動も抑制する。

 ビスマスは長期連用により、不安感や脱力感、震え、頭痛といった神経系の副作用の恐れがあるので、注意が必要である。

 タンニン酸アルブミンは、腸粘膜にタンニン酸が蛋白結合し、収れん作用を呈する。穏やかな作用で、胃腸障害を起こしにくい。タンニン酸ベルベリンは、収れん作用のほかに腸内殺菌作用がある。渋味や苦味がなく飲みやすいのが特徴である。

吸着成分

 カオリンは腸管内で過剰な粘液や有機成分などを吸着して、止瀉作用をもたらす。ケイ素とアルミニウムを含み、化粧品や血液検査の吸着にも使われている。

腸管運動抑制成分

 ロートエキスは抗ムスカリン作用により、腸管への水分分泌を抑制するとともに、腸の蠕動運動も抑制して腹痛を鎮める。

 ロペラミド塩酸塩は、医療用医薬品のロペミンとして処方される成分で、腸の蠕動運動抑制、消化管輸送能抑制により、止瀉作用を持つ。

生薬成分

 オウバクは、抗菌作用、抗炎症作用がある。

 オウレンは、ベルベリンを含み、止瀉、抗菌、抗炎症といった作用があるほか、整腸作用も有する。苦味健胃薬として胃弱・食欲不振、消化不良にも用いられる。

 ケイヒは、鎮静作用、消化管運動亢進作用があり、ガスの排出を促す。

 ゲンノショウコは、粘膜修復作用や腸管運動抑制効果、整腸作用がある。

整腸生菌成分

 乳酸菌(ビフィズス菌、フェカリス菌、アシドフィルス菌)は腸内で乳酸を作り、悪玉菌の発育を抑制する。

 酪酸菌および宮入菌は、腸内で酪酸を生成し、悪玉菌の発育を抑制するほか、病原性大腸菌O157の毒素産生も抑制する。

 乾燥酵母は、必須アミノ酸9種類を含み、栄養補給、滋養強壮、整腸作用を促す。

ビタミン類

 ビタミンB1、B2、B6、B12、Cなど、下痢により不足したビタミンを補給する。なお、B2、B6は、乳酸菌の増殖を助ける働きもある。

製品セレクト

 下痢は、症状の回復までに数日程度かかることが多いため、携行に便利な製品を薦めることも重要である。

 そこで、まずお薦めしたいのがセイロガン糖衣A(携帯用)(大幸薬品)である。

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 大腸の過剰な蠕動運動を抑え、水分量の調節、腸内の殺菌・静菌作用のあるクレオソートが主成分であり、粘膜修復作用のある生薬のゲンノショウコ、オウバク乾燥エキスも含有している。正露丸の姉妹品であるが、独特の香りはしない。

 5歳以上で服用できるが、小児に内服させる場合は、服用量を間違えないようにするのに加え、薬剤を喉に詰まらせることのないように、保護者に注意を促す。

 ポケットにも入るサイズで、ケースはピンクとイエローの2色がある。24錠入りだが、成人は1回に4錠服用するため、6回分(2日分)となる。家庭やオフィスに常備したい人には、PTP包装の大容量サイズ(120錠入り)を薦めるとよいだろう。このPTPシートは1回分ずつカットできるように工夫されている。

 サトウ下痢どめ内服液(佐藤製薬)は、30mLの瓶の2本入りで、薬局の店頭ですぐに飲めるというメリットがある。1回1瓶を、1日3回を限度として食後に服用する。服用間隔は4時間以上置くこととされている。レモン風味で飲みやすい。

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 同製品は、腸内で下痢の原因物質を吸着する作用を持つカオリンを含む。また、収れん作用の次没食子酸ビスマス、収れん作用と腸内殺菌作用を持つタンニン酸ベルベリンを配合している。

 カオリンはケイ素とアルミニウムを含み、添加物としてマグネシウムも含有しているため、透析療法を受けている患者は服用できない。また、15歳未満の小児は服用できない。

 下痢は、食べ過ぎや飲み過ぎによる消化不良や食あたりに加えて、ストレスによっても起こる。そこで、ストレス性の原因も思い当たるという患者には、5成分を配合したエクトール赤玉(第一三共ヘルスケア)を薦めるとよい。

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 殺菌作用のアクリノール水和物、殺菌作用と収れん作用のあるタンニン酸ベルベリン、収れん作用のあるゲンノショウコエキス末、腸管運動抑制成分のロートエキス3倍散のほか、消化を助けるウルソデオキシコール酸も配合しているので、様々な原因で起こる下痢を治し、整腸効果を表す。

 ちなみに、同ブランドのエクトールはカプセル剤で、アクリノール水和物、ベルベリン塩化物水和物、ロートエキスの3成分を配合。ロートエキスは3倍散ではない。

 エクトール赤玉は3歳以上の小児で服用可能だが、服用量が年齢によって異なるので注意する。また、錠剤は小さいが、服用時に喉につかえさせないよう保護者に指導する。

こんな製品も

 散剤を好む患者には、(a)スメクタテスミン(佐藤製薬)を薦めたい。地中海原産の天然ケイ酸アルミニウムの単味剤で、腸内のウイルスや病原菌を吸着して除去する。バニラ味の顆粒で、水で服用するか、コップ半分の水に溶かして服用する。かぜによる下痢や軟便にも服用できる。

 下痢の患者にOTCの漢方薬を選ぶなら、(b)胃苓湯エキス錠クラシエ(クラシエ製薬)がよい。胃がもたれて消化不良の症状に用いられる平胃散と、喉が乾いて尿量が少なく、吐き気やむくみが見られる場合に使われる五苓散を合方したもので、水瀉性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴う食あたり、暑気あたり、冷え腹などの効能を持つ。

 錠剤で、1日3回食前または食間に服用する。5歳以上で服用できる。食あたり、暑気あたりに服用する場合は、5~6日間、急性胃腸炎では5~6回服用しても症状が良くならない場合は、医療機関の受診を勧める。

 (c)ストッパエル(ライオン)は、水なしで飲めるアセロラ味の止瀉薬で、電車などの移動中にも手軽に服用できる。同じブランドのストッパA下痢止めの8割ほどの大きさである。収れん、殺菌作用を持つタンニン酸ベルベリンを含み、腸の過剰な動きを抑えるロートエキス3倍散やシャクヤク乾燥エキスも配合され、腹痛にも効果がある。

 同じ成分を配合した製品には、フルーツミント味のピシャット錠(大幸薬品)もある。

 小児用の止瀉薬には、3カ月の乳児から使える(d)大正下痢止め<小児用>(大正製薬)がある。

 タンニン酸ベルベリン、穏やかな収れん作用で炎症を鎮めるタンニン酸アルブミン、消化酵素のビオヂアスターゼ2000も配合され、消化不良による下痢に向いている。ビタミン補給としてチアミン硝化物、リボフラビンも含む。

 下痢しがちな患者には、日ごろから整腸剤の服用もお勧めしたい。

 (e)パンラクミンプラス(第一三共ヘルスケア)は、緑麦芽由来の植物性乳酸菌である有胞子性乳酸菌(ラクボン原末)を配合し、腸内で繁殖する悪玉菌の発育を抑える。また納豆菌末を配合しており、整腸作用と消化吸収促進作用を持つ。沈降炭酸カルシウムは、胃酸を中和することで胃部不快感を和らげるとともに、服用した善玉菌を腸まで届ける役割も担う。

 消化不良だけでなく、栄養補給の目的でも薦めるのが、指定医薬部外品の(f)エビオス錠(アサヒフードアンドヘルスケア)である。発酵を終えたビール酵母をアルコール乾燥させたものを主成分とし、必須アミノ酸、ビタミンB群、食物繊維、ミネラルが含まれる。

 下痢の際には脱水症状も見られることが多いため、経口補水液の(g)オーエスワン(大塚製薬工場)も薦めたい。

 かすかな塩味と甘さが特徴であるが、飲みにくいという患者もいる。ただ、ジュースなど他の物を一緒に混ぜると組成が変わり吸収率が低下することがあるので、混ぜる時には極少量とするよう伝える。小児用の経口補水液としては、ヨーグルト味のアクアライト(和光堂)もお薦めである。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 下痢の患者が来局したら、OTC薬で対応できるかどうかを見極める必要がある。

 症状およびその継続期間、摂取した食べ物、冷えなど思い当たる理由と、他剤服用の有無を聞く。嘔吐や発熱、下痢が3日以上続いている、便に血が混ざっているなどの症状があれば、速やかな受診を勧める。

 朝や昼間に頻繁に下痢が見られるようであれば、過敏性腸症候群が疑われる。また、夜間就寝中に目覚めるような下痢は器質的病変の可能性がある。これらの場合も受診を勧める。

 また、添付文書に記載されている日数(多くは5~6日)を服用しても改善が見られない場合も、速やかに受診するよう指導する。

副作用

 服用後、発疹や発赤、痒みといった皮膚症状が見られたら、直ちに使用を中止して受診するよう指導する。

その他

 ロートエキス、ロペラミド塩酸塩、ビスマス製剤は、小児と妊婦は禁忌となっている。特にロートエキスは、母乳に移行しやすいことが報告されているため、授乳中の使用は避ける。また、抗コリン作用を有するため、緑内障、前立腺肥大の既往歴を確認する。三環系抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など、他の抗コリン薬との併用による相互作用にも注意したい。

 タンニン酸アルブミン含有製剤は、牛乳アレルギーの既往歴があるとショックを起こす可能性があるので、服用を避ける。アルミニウムを含む製剤は、透析患者でアルミニウム脳症、アルミニウム骨症を発症する恐れがあるので注意する。

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