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CaseStudy
ABC薬局国府台店 (千葉県市川市)
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

 ABC薬局国府台店(千葉県市川市)は、国立国際医療研究センター国府台病院の門前にあり、黄色いテントがひときわ目を引く薬局だ。

 国府台病院では精神病床が135床稼働し、精神疾患の外来患者が多い。ABC薬局国府台店も、精神科系の処方箋を1日約80枚応需している。

 「精神疾患の患者は、ささいなことが気になったり、薬の副作用や飲み合わせに対する不安を訴える傾向が強い。そのため開局以来、こうした不安を和らげるような工夫をしてきた」と同店管理薬剤師の川上玲子氏は話す。

「精神疾患患者が多い病院の門前にあるため、患者の不安を少しでも和らげるような工夫を行ってきた」と話す、ABC薬局国府台店の川上玲子氏。

 その1つが、7年前に薬局の隣に併設した「ABCアネックス」だ(写真1)。国府台店の別館という位置付けで、アロマオイルやハーブなどを販売しており、リラックスできる雰囲気となっている。「薬局の待合室にいると、テレビの音が気になってつらい」などと訴える患者には、静かなアネックスで待つように案内しており、今では国府台店の「第2の待合室」として認知されている。

写真1 ABC薬局国府台店に隣接する「アネックス」

「テレビの音が気になって、薬局の待合室では待っていられない」と訴える患者には、薬局の隣にある「ABCアネックス」 で待つように案内している。アネックスではアロマオイルやハーブなどを販売しており、患者は店先のカフェテーブルや店内のソファで待ち時間を過ごせる。

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 「薬の副作用に対する不安感」の解消にも力を注いでいる。薬の増量や追加が行われた後に、副作用らしき症状が現れると誰でも不安になるものだが、精神疾患の患者ではその不安が特に強い。投薬時にきちんと説明したにもかかわらず、心配になり、「薬を飲み続けてもいいのか」などと、薬局に電話をかけてくる患者も少なくない。

 こうした電話は毎日2~3本、多い日は5~6本来るが、混雑時は電話応対に十分な時間を割くのが難しい。そこで、患者の不安を和らげつつも、効率よく応対するため、国府台店では、患者の訴える症状から指示すべき対処法をすぐに探せる「副作用チェックシート」(表1)を活用している。

表1 ABC薬局で作成した「副作用チェックシート」(一部抜粋)

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患者の訴えをメカニズム別に分類

 このシートの特徴は、「よくある訴え」を経験からピックアップし、原因となるメカニズムごとに分類している点だ。

 例えば、患者から「歩きにくい」「足がもつれる」という訴えや、「食べ物をこぼす」「しゃべりにくい」との訴えがあったとする。前者は歩行に、後者は口の動きに関連する訴えだが、いずれもドパミンD2受容体の遮断による薬剤性パーキンソニズムの症状の1つだ。

 こうした一見無関係に見える症状をメカニズム別にグループ分けすることで、副作用を体系的に理解し、明確な説明につなげることができる。

 さらにこのシートには「処方医が行うと予想される対処法」も記載している。「薬剤師が、治療の見通しを把握して伝えることで、患者の安心感を高めることができる」と、同店などを経営する医療サービス研究所の学術マネージャーを兼務する篠原文里氏は話す。

「患者の訴える症状と対処法を結び付けるシートを作り、薬剤師全員が自然に内容を覚えたことで、指導内容が統一され充実した」と話すABC薬局国府台店の篠原文里氏。

 篠原氏は「向精神薬の副作用や処方変更の意図などに関する説明を、薬局内で統一したい」と考え、7年前にこのシートを作成した。様々な患者の訴えを盛り込んだ結果、A4判5枚の膨大なものとなった。

 当初は服薬指導や電話応対のたびにシートを見て対応していたが、現在では、その内容を皆が覚え、誰でも同じようなレベルで服薬指導できるようになった。社員研修でもシートは使われ、「知識が整理される」と好評だという。

直近投薬者が責任持って対応

 2年前からは、電話応対の手順をルール化して、効率をさらにアップした(図1)。

図1 精神疾患の患者からの電話問い合わせへの応対の流れ

 応対は、直近の投薬者が行うこととした。直近投薬者は、患者が電話してきた理由を聞き取り、緊急性を判断する。例えば、「睡眠薬を大量に飲んだ」という場合は、すぐに救急受診を促す。

 もっとも、薬局にかかってくる電話の大部分は、「副作用が心配」「他科でもらった薬やOTC医薬品との飲み合わせは大丈夫か」といった、比較的緊急性の低い問い合わせだ。

 最も多い「副作用に対する不安」については、表1を基に対応する。電話の内容は、次回の来局時や再度電話がかかって来た場合にも確認しやすいよう、電子薬歴にSOAP形式で記録するルールだ。

 患者からの電話に対し、なんでも「医師に相談してください」と応答するだけでは、患者の安心感にはつながらない─。このスタンスからABC薬局国府台店では、副作用に関してもかなり踏み込んだ説明を行っている。「精神疾患の患者に副作用を説明すると、拒薬につながるのではないかと考えがちだが、患者からは『副作用をきちんと説明してくれるので、信頼できる』と言ってもらえることが多い」と川上氏は話す。

判断と服薬指導をしっかり記入

 では、具体的な電話応対の薬歴を見てみよう(表2)。

表2 電話応対における薬歴の記載例

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 ケース1は、「ロナセン(一般名ブロナンセリン)を増やしてもらったのに、前よりもソワソワする」と訴えた患者だ。

 この患者は以前、リスパダール(リスペリドン)を服用していたが、ふらつきなどの副作用がありロナセンに変更となった。当初は調子がよかったが、落ち着かない気分(ソワソワ感、イライラ)が出てきたため、2週間前にロナセンが増量された。それでもソワソワ感が強くなってきたという。

 処方医はもともとの疾患の悪化が原因と判断してロナセンを増量したと思われるが、応対した薬剤師は、表1の2段目の内容に基づき、副作用のアカシジアが起きていると推察した。

 ロナセンは非定型抗精神病薬ではあるが、急性のアカシジアを起こす可能性があることから、患者には、「ロナセンが増えたことによる副作用の可能性がある。ロナセンを減量したり、副作用を抑える薬剤を飲むことで、症状が落ち着く」と説明し、受診を促した。

 ケース2は、「殺される」という妄想からパニック状態に度々陥っているという統合失調症の患者だ。今回、深夜に不眠時頓用のコントミン(クロルプロマジン塩酸塩)25mgと不安時頓用のリスパダール(リスペリドン)を服用して嘔吐し、翌朝もぼーっとするということで電話してきた。

 担当した薬剤師は、就寝前もコントミンを12.5mg服用したことを確認。ぼーっとしているのは、コントミンの持ち越しと、リスパダールの服用が影響していると説明した。患者に吐き気はあるが、コントミンの総服用量は前日から37.5mgで過量ではないことから、水分をよく摂取し、様子を見るよう伝えた。

 いずれの薬歴でも、患者の訴えと状況をしっかり把握し、薬剤師としての考えや判断(A欄)、それに基づく教育計画と服薬指導(EP欄)を詳しく記入している。「薬剤師同士の情報共有はもちろん、同様の訴えがまたあった場合、過去の相談内容を踏まえた応対ができるようになる」と川上氏は話す。

薬袋にプライバシー配慮の工夫

 患者の不安を和らげるという観点から、ABC薬局国府台店では、プライバシーへの配慮にも力を入れている。

 その1つが薬袋で、飲んでいる薬を知られたくない患者が多いため、精神科などからの処方箋では、薬袋に薬剤名を記載していない(写真2(1))。

写真2 患者の安心感につながる薬袋の工夫

精神科や神経科などからの処方の場合、薬剤名は薬袋に印字しない((1))。「薬の数が足りなかった」との訴えがあった患者では、薬歴の注意事項欄に「錠数確認!」などと入力しておく。投薬時は、カウンターで患者と一緒に薬剤を数えた後、薬袋に「全42錠」などと記載する((2))。

 また、薬を受け取った後、「錠数が足りなかった」と訴えたことのある患者には、全種類の薬剤を一緒に数えて錠数を大きく記載する(写真2(2))。

 「これまで、精神疾患の患者のニーズを踏まえた対応を実践してきた。これからも、患者の安心感につながることは積極的に取り入れていきたい」と川上氏は話している。(河野 紀子)

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