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お薬手帳の行く末
日経DI2012年8月号

2012/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年8月号 No.178

 今年 4月の調剤報酬改定により、お薬手帳を使った情報提供は薬剤服用歴管理指導料(薬歴管理料)に一本化された。これ自体は、お薬手帳の必要性を長年訴えてきた薬局薬剤師の願いがかなったということであり、歓迎すべきである。しかし人とはぜいたくなもので、一つの願いが達成されると、また次の願いが出てくる。筆者は、お薬手帳に触れるたびに思うのだ。「この21世紀にいまだに紙の手帳とは、なんとまあアナログなことよ」と。

 レセプト請求がオンラインへと切り替えられたように、医療情報の電子化は着々と進行している。電子薬歴を導入した薬局も珍しくなくなってきた。厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会では、処方箋の電子化も話し合われている。この流れに伴い、お薬手帳もいずれ電子化されるだろうことは、想像に難くない。

 そんな時代の流れを先取りしてか、既に一部の薬局チェーンで、試験的に電子お薬手帳の導入が始まっている。その方法は、2次元バーコードなどで薬局が提供した情報を、患者が自らの携帯電話に読み取るというものだ。

 だが筆者は、この方法には懐疑的である。その理由は、第一に携帯電話が必要になるということ。高齢者になるほど携帯電話の所持率が下がることは、周知の事実である。

 第二は、この方法ではお薬手帳への入力を患者が行わなければならないことだ。薬剤師がお薬手帳に入力するのではなく、患者自身が自分の携帯電話に読み取らせるわけで、「面倒臭い」とか「やり方が分からない」といった声が必ず出てくるだろう。

 第三に、薬局で薬剤師がお薬手帳を確認する際、患者の携帯電話を薬局が預かるという点も問題となろう。携帯電話は個人情報の塊である。一時でも、他人に預けることに拒否感を持つ患者も多いはずだ。

 では、どのような方法が理想的なのだろうか。これもおそらく誰もが想像していると思うが、患者のデータを外部のサーバーに置いてインターネット上で管理する、いわゆるクラウド化がその答えであろう。

 つまり、個々の患者の投薬状況をデータベース化し、関係者が電子端末を使って閲覧できるようにするのである。患者には本人認証ができるICカードを所持してもらう。病院や薬局は、窓口で患者にICカードを提示してもらい、データベースにアクセスする許可を得て、情報の閲覧・更新をしていくという方法だ。

 もちろん、この方法はセキュリティーの確保など、解決しなければならない問題が多々ある。お薬手帳は患者も閲覧するものなので、電子端末の普及も課題となる。何より保険証のICカード化すら遅々として進まない日本の現状で、実現するにはかなりの時間を要するかもしれない。

 お薬手帳は、日本が生み出した優れたシステムだと思う。しかし、このお薬手帳が海外でも導入されたという話は、聞いたことがない。海外では、これからの医療情報の管理は電子化が基本だと考えているからだろう。

 日本独自の携帯電話がガラパゴス携帯などと呼ばれ、世界標準のスマートフォンに駆逐されていく現状のように、このままではお薬手帳もまた、ガラパゴス的なものになるかもしれないと、筆者は予想している。

 いっそのこと、思い切って開き直ってしまうのも、一つの考え方だろう。紙の手帳にも利点はある。紙ならば、大災害などにより電気が使えなくなった時にも使える。

 世界有数の地震国かつ超高齢社会の日本には、紙の手帳というアナログな方式が、ある意味お似合いであることは確かなのだから。(みち)

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