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特集:一般名処方の急増はこう乗り切れ
一般名処方を乗り切る工夫あれこれ
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

 一般名で書かれた処方箋を応需すると、これまで以上に調剤や患者への説明、医師へのフィードバックに手間がかかるのは確か。スムーズに行うために、それぞれの薬局が実践している工夫を紹介する。

 一般名処方の普及で最も懸念されるのは、処方箋に書かれた一般名から該当する薬を選ぶ際に、うっかり別の薬を調剤してしまうミスが増えることだ。これまでのように、処方箋通りであればよいというわけにいかないだけに、一般名処方ならではの調剤ミスを防ぐ工夫が必要といえるだろう。

 レセコンから出力される薬剤情報提供書やお薬手帳シールには、実際に投与する薬の商品名が印字されるため、調剤や鑑査時にそれらを参照する薬局は多い。だが、レセコンには前回投与した薬を基に事務スタッフが入力することが多く、その際にミスが発生しないとは限らない。また、入力する前に調剤を行う場合もある。

 そんなときのために用意しておきたいのが、一般名と商品名の対照表だ。写真1は、ひかり薬局冠店(仙台市泉区)のリスト。主な処方箋の発行元が出した一般名について、先発品名と採用後発品名を記載、一般名の50音順に並べた。薬局で採用している全ての製品を一覧にしている薬局もあるが、近隣の医療機関が一般名で出す薬だけでもリスト化しておくと便利だ。

写真1 「一般名→商品名」の対照表

事務スタッフがレセコン入力時に、また薬剤師は調剤や鑑査時に参照する。

棚のラベルに一般名も記載

 ピッキングのミスを防ぐために、薬棚のラベルに一般名を記載するようにしている薬局も多い。写真2はひかり薬局冠店の棚ラベルだ。昨年の実務実習生が医療安全のカリキュラムで作成したラベルをそのまま使用している。

写真2 商品名と一般名が書かれた棚

薬棚の表示には、商品名と一般名を記載しておく。

 ラベルには、商品名が大きく、一般名はその下に小さく記載してある。同薬局店長兼務管理薬剤師の新谷裕子氏は、「現段階では、商品名で覚えている薬の方が多いので、パッと見て分かりやすいように商品名を大きくしているが、今後、一般名による処方が増えてきたら、表示方法を変えた方がよいのかもしれない」と話す。

 「品目が限られているので既に覚えてしまったが、ピッキング時にはできるだけ薬の箱に書かれた一般名をちらっとでも確認するようにしている」と話すのは、あおぞら薬局姫島店(千葉県山武市)管理薬剤師の筆内隆男氏(写真3)。記憶に頼らず確認を励行し、間違いを防ごうというわけだ。

写真3 ピッキング時の確認

薬をピッキングするときに、少しでも不安に感じたら、棚に入れてある箱や添付文書で確認。

 一般名で処方されたときに、調剤する薬の商品名を書いたシートを患者ごとに作成しているのは、銀杏薬局だ(写真4)。シートは薬歴にはさんでおき、レセコンに入力するときや調剤や鑑査をするときに参照する。

写真4 患者ごとのシートと付箋

患者ごとのシートを作成し薬歴にはさんでおく。付箋は処方箋に貼って調剤や鑑査のときに活用する。

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 さらに同薬局では、「一般名→投与する薬剤の商品名」を記した付箋を1剤ごとに用意して、処方箋に貼って調剤や鑑査を行っている。処方箋に、商品名を鉛筆で記載する薬局もあるが、付箋を作っておけば、毎回書く手間が省ける。鑑査後はシートに貼っておくのがルールだ。「時間の短縮になるし、書き間違いも防げる」と、銀杏薬局薬局長の山下智子氏(前出)は言う。

「一般名+会社名」を選ぶ

 一般名と商品名が違うからミスが起こる。ならば、同じ名前のものにすればいい─。そう考えたのは、西尾久めぐみ薬局(東京都荒川区)だ。「後発品はできるだけ、商品名が『一般名+会社名(屋号)』のものを選ぶようにしている」と同薬局薬局長の高山美奈子氏。商品名が思い浮かばず手間取ることがなく、間違えるリスクも減る。

商品名が「一般名+会社名(屋号)」の後発品は、一般名処方の際に分かりやすい。

 さらに高山氏は、「薬局で選んだ推奨後発品があるものは、できる限り後発品に変更するようにしている」と話す。この患者は先発品、あの患者は後発品とバラバラに調剤するとなると、業務が煩雑になりミスも起こりやすくなるからだ。患者の希望があるため、全ての患者についてどちらかに統一できるわけではないが、推奨後発品を決めたものについては、意識的に変更を勧めて「後発品を投与するのが基本だが、例外的に先発品の患者もいる」という状態にしていく方針だ。

 後発品を推奨する場合は、先発品の薬棚に「GE変更」と書いた紙を貼り、薬剤師全員で取り組んでいる(写真5)。

写真5 後発品に変更する薬の棚

できるだけ後発品に変更するように、スタッフ全員で意識している。

 患者の希望を再確認するためにも、一般名処方に関する説明はしっかり行いたいところだ。しかし説明に時間をかけていては、次の患者の待ち時間が長くなり、クレームにつながりかねない。

 そこで銀杏薬局では、一般名処方についての説明文書を作成。対面での説明にはA4判にプリントアウトしてパウチしたものを使用(写真6)。さらにA5判に縮小したものも用意して、時間の都合などで十分に説明できなかった患者や、その場で選択できなかった患者に渡し、「ご家族と相談してください」などと伝えている。

写真6 一般名処方についての説明文書

患者が選択できることを強調。シートを見せながら説明すれば、説明時間の短縮にもつながる。

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 説明文書では、一般名処方とは「先発品でも後発品でも、患者の選択に任せる」という医師の意思が示されたものであることを強調している。「一般名」の意味が理解できず、これまでと同様に「先生が書いてくれた薬にしておいてほしい」と言う患者が少なくないからだ。

一般名処方では「患者自身が先発品でも後発品でも選べる」と説明するとスムーズ。

 選べることを示すために、後発品と先発品の実物を見せながら説明して、患者に選ばせる薬局もある。ひかり薬局冠店もその一つ。自分で選んだという実感があるからか、「後で『元の薬に戻してほしい』という患者が減った」(新谷氏)という。

 初めて来局した患者には、初回の質問票で後発品の希望を聞いておくとスムーズだ。エンゼル調剤薬局本店(福井市)では、質問票の一番上に後発品の希望を尋ねる設問を記載し、マーカーを塗って目立たせている(写真7)。「上に持ってきたことで回答率が高まった」と、同薬局管理薬剤師の梅木誠一郎氏は話す。

写真7 後発品の希望を聞く初回質問票

初来局の患者には、質問票で後発品への変更の希望を聞く。一番上に記載し目立たせることで記入率が高まる。

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 「先発品名を知っておきたいという患者さんには、お薬手帳に先発品名も記載する」(ひかり薬局冠店の新谷氏)。先発品の方がなじみがある医師にも喜ばれる(写真8)。

写真8 先発品の商品名を書いたお薬手帳

「先発品の名前も知っておきたい」という患者のために、お薬手帳に先発品名も記載。

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 一般名で書かれた処方箋を応需し、後発品を調剤することが増えれば、実際に投与した薬の商品名を処方元にフィードバックする手間が増えることになる。フィードバックに関しては、特に決められたルールはなく、処方元と薬局の間で、情報提供の要否、方法、頻度などを決めることができる。あらかじめ、できるだけ手間が掛からない方法を医療機関と取り決めておくのが得策だ。

 アイ調剤薬局(東京都中央区)取締役の渋谷泰史氏は、「処方箋の発行元に、あらかじめ当薬局の採用品目を記載したリストを渡している。一般名で処方された薬は、基本はこのリスト通りに変更することとし、患者の希望などで別の薬にした場合のみ連絡するように取り決めた」と説明する(写真9)。

写真9 医療機関に提出した採用品目一覧

一覧にある薬以外を投与する場合のみ連絡するようにあらかじめ決めておく。

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 アイ調剤薬局では、1カ月に約90施設の医療機関から処方箋を応需しているが、「3施設にリストを届けることで、一般名処方の8割程度はカバーできている」と渋谷氏。面で処方箋を受けている薬局では、比較的処方箋枚数の多い医療機関と話をしておくだけでも、ずいぶん手間が省けるだろう。

 フィードバックの方法を指定してくる医療機関もある。「ファクスで連絡してほしい」「電話で伝えてほしい」「必ず毎回、報告してほしい」「毎回だとこちらも大変なので、変更があったときのみでよい」「患者ごとではなく一覧にしてほしい」など要望は様々で、スタッフが混乱しがちだ。そんな場合、医療機関ごとのフィードバック方法を記載した一覧表があれば便利だ。

あらかじめ採用品目のリストを渡しておけば、フィードバックの手間を減らせる。

 写真10は福井県薬剤師会が作成した、県内の主要医療機関が指定するフィードバック方法をまとめたリストだ。同会のウェブサイトの会員向けページで公開している。

 同会では、以前から県内の主要な医療機関と協議し、オリジナルのフィードバック用紙を作成するなど、薬局が変更調剤しやすいように環境を整備してきた。このリストも、その一環という。

 同会常務理事で薬事情報センター長の木村嘉明氏は「一般名処方は、薬の選択の一部を薬局に委ねるというメッセージだと思っている。安全面に配慮して、患者さんの希望を聞きながら、薬剤師が良いと思ったものを薦めていく。それらをスムーズに行うために工夫することが大切だ」と話している。

写真10 医療機関ごとのフィードバック方法一覧

近隣の医療機関へのフィードバック方法を一覧にしておくことで、スムーズな情報提供が可能だ。

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