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特集:一般名処方の急増はこう乗り切れ
2点の加算が招いた 一般名処方をめぐる混乱
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

 薬局での後発品在庫管理の負担軽減も踏まえ新設された、一般名処方に対する加算。だが、一般名の処方箋が急増した薬局では、疑義照会が必要なケースが増えるなど、大混乱の様相を呈している。

 「ニフェジピン徐放錠って書いてあるけど、アダラートCR錠? それともアダラートL錠?」「ベタメタゾンって、ベタメタゾン酪酸エステルとベタメタゾン吉草酸エステルのどっち?」─。4月以降、多くの薬剤師が、こんな問題に頭を悩ませたはずだ。

 今春の診療報酬改定で新設された一般名処方に対する加算(表1)は、中央社会保険医療協議会(中医協)の検証部会の調査で、保険薬局が一般名処方の普及を望んでいるとの結果が示されたことを受けたものだ。

表1 2012年4月の診療報酬改定で盛り込まれた処方箋料の変更

一般名処方の推進

後発医薬品の使用を一層促進するとともに、保険薬局における後発医薬品の在庫管理の負担を軽減するため、医師が処方箋を交付する際、後発品のある医薬品について一般名処方が行われた場合の加算を新設する。
〔一般名による記載を含む処方箋を交付した場合は、処方箋の交付1回につき2点を加算する〕
(出典:中央社会保険医療協議会総会[第219回]資料 2012年1月30日開催)

 処方箋を交付する側にとっても、「時間外対応加算のように体が拘束されるわけでなく、処方箋に一般名を記載するだけで2点が加算されるのは大きな魅力」と、ある開業医は打ち明ける。この2点を確実に算定しようと考えた医療機関が、一斉に一般名処方に切り替えた結果、一般名で書かれた処方箋が急増している。

 本誌が『DIオンライン』の会員薬剤師を対象に実施した調査でも、4月以降、一般名で書かれた処方箋を応需したとの回答は94.0%に上った(本誌2012年5月号特集「調剤報酬改定 現場の声」参照)。あるチェーン薬局の薬局長は、「近隣の医療機関が使用頻度の高い20~30品目を一般名処方に切り替えたようだ。品目数はそれほど多くなくても、使用頻度が高い薬なので、ほぼ全ての処方箋に何かしらの一般名が入っている」と話す。

患者への説明で待ち時間増

 一般名で書かれた処方箋が急増した薬局では、業務が大幅に増えた。最も時間を要しているのが、患者への説明だ。「『なぜ薬の名前が変わったのか』という質問が少なからずある。一般名という言葉が患者さんには分かりにくいようで、説明に苦労する」と、銀杏薬局(千葉県松戸市)薬局長の山下智子氏は語る。過去に後発品への変更希望の有無を確認済みの患者を含め、一般名処方の患者全員に説明して希望を確認するため、特に4月は待ち時間が長くなってしまったという。

 また、一般名に該当する商品を選ぶ段階でも、混乱が見られる。冒頭のように処方箋の記載に不備があるケースだけでなく、同じ成分でも用法・用量や適応、製剤学的特徴などが異なる商品があるためだ(「資料編」参照)。疑義照会に加え、調剤した薬の商品名を医療機関にフィードバックする業務が増えたことも大きな負担だ。

処方箋を交付する側も悲鳴

 処方箋を交付する医療機関側にも混乱は見られる。薬の商品名を選択すると自動的に一般名に変換するソフトウエアが導入されていれば、それほど手間は増えないが、そもそも電子カルテやレセコンが未整備の医療機関では、「一般名なんて覚えていないから、一つひとつ調べて処方箋を書かなければならない」と、悲鳴を上げる医師もいる(別掲記事参照)。

 全国の大学病院でいち早くオーダリングシステムを導入するなど医療IT化を推進する鹿児島大学医学部・歯学部附属病院は、今年1月に情報システムを更新したばかり。「一般名マスタを準備すれば、すぐに一般名処方に切り替えることは可能。しかし、4月1日からの一般名処方は見送った」と、同病院長の熊本一朗氏は話す。その理由について同氏は、「医師の頭の中に一般名がなく、マスタが不完全な現状で一般名で処方することは、医師の業務負担と医療安全の観点から問題があると判断した」と説明する。

「医師の業務負担、医療安全の観点から、当面は一般名処方加算を算定しない」と語る鹿児島大学の熊本一朗氏。

今夏に全薬剤マスタが公開に

 4月の診療報酬改定に合わせて厚生労働省が公表した一般名処方マスタには200品目程度しか収載されていない上、剤形や規格などに不備がある。マスタにない薬剤については、同じ薬剤でもレセコンメーカーによって一般名の表記が異なるケースもある。「マスタを充実してほしいという声を数多く頂いた。現在、マスタの作成作業を進めており、今夏には一般名処方の加算の対象となる全ての薬剤を含むマスタを公開する予定だ」と、厚労省保険局医療課課長補佐の江原輝喜氏は話す。今後、マスタが整備されて広く普及すれば、鹿児島大病院のように当初は算定を見送った医療機関も、一般名処方に切り替える可能性が高い。

 「短い準備期間で新しい制度を導入すると、初期には色々な問題が出てくるもの。それを批判するよりも、きちんとした対応策を考えることが大切だ」と、日本病院薬剤師会副会長兼日本薬剤師会副会長の土屋文人氏は力説する。既に一般名処方の急増を経験した薬局では、独自の工夫で混乱を乗り切っている。次からはそんな工夫を見ていこう。

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