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DIクイズ4(A)
DIクイズ4:(A)プリンペランで月経が止まるメカニズム
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

出題と解答 : 河野 佐東子
(クオール株式会社[東京都港区]西日本薬局事業本部)

A1

(2)ドパミンD2受容体

A2

(1)プロラクチンの分泌促進

 Iさんが服用しているメトクロプラミド(商品名プリンペラン他)は、ドパミン受容体に対する遮断作用を持つ薬剤である。現在知られているドパミンの受容体にはD1~D5の5つのサブタイプがあり、ドパミンD1様受容体ファミリー(D1、D5)とドパミンD2様受容体ファミリー(D2、D3、D4)の、2つのファミリーに分類されている。

 ドパミンがD1様受容体に結合すると、アデニル酸シクラーゼを活性化して細胞内の環状アデノシン一リン酸(サイクリックAMP:cAMP)濃度を上昇させ、最終的に神経細胞の活動電位を高めることから、神経細胞に対して興奮性に作用するとされる。一方のD2様受容体は、ドパミンの結合によりcAMPの分解酵素であるホスホジエステラーゼの活性を高めるため、神経細胞に対して抑制性に作用すると考えられている。

 メトクロプラミドはこれら5つのサブタイプのうち、D2受容体に対する強い遮断作用を示す。D2受容体は、脳の嘔吐中枢へと刺激を伝える化学受容器引き金帯(CTZ)や、胃などの消化器に分布している。メトクロプラミドの服用でD2受容体を遮断することにより、吐き気が抑制され、消化管運動も改善される。しかし、D2受容体は視床下部や下垂体にも発現しているため、内分泌系の副作用、中でも高プロラクチン血症に起因する症状が問題となることがある。

 プロラクチンは、主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞から分泌されるホルモンである。通常は、視床下部から放出されるプロラクチン抑制因子により分泌が抑制されているが、授乳期には子どもが母親の胸に吸い付く搾乳刺激により分泌が促進される。乳腺の分化・発達や乳汁の合成・分泌を促進するほか、下垂体前葉からの卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌を抑制して、排卵や子宮内膜の増殖が起こらないようにする作用も持つ。

 ドパミンには、視床下部からのプロラクチン抑制因子の放出を促進する作用がある。そのため、メトクロプラミドのようなD2受容体遮断薬を服用すると、プロラクチン分泌に対する抑制が外れて、高プロラクチン血症を呈し得る。高プロラクチン血症に伴い、女性では、Iさんのような無月経のほか、不妊や乳汁漏出などが生じる。男性では、乳汁漏出や女性化乳房に加え、性欲低下が問題になることがしばしばある。

 薬剤性高プロラクチン血症の治療では、まず原因薬剤の服用を中止させるのが基本である。しかし、Iさんが「プリンペランを飲んでいると胃が楽なので、やめたくない」と訴えたため、婦人科医は黄体ホルモン製剤であるジドロゲステロン(デュファストン)の補充で月経の再来を促しつつ、経過観察としたと推測される。

 なお、薬剤性高プロラクチン血症との診断を確定するには、下垂体腺腫や甲状腺機能低下症など、高プロラクチン血症を引き起こす疾患の否定も必要である。薬剤師としては、現段階では薬剤性と断定できないことを踏まえた上で、原因薬剤の将来的な中止も視野に入れつつ患者説明を行いたい。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 生理が2カ月も止まって驚きましたね。婦人科の先生がおっしゃったように、プリンペランを飲んでいると、生理が止まってしまうことがあります。プリンペランには、吐き気や胃のもたれを軽くする作用の他に、プロラクチンという、生理を止めるホルモンを出させる作用があるのです。

 ただ、生理不順の原因はプロラクチンだけではありません。婦人科では、他の原因がないかを調べる検査も進めていくと思います。今回、処方されたデュファストンというお薬は、生理を起こす作用を持つホルモン剤です。まずはこのお薬を指示通りに飲んで、生理が起こるか様子を見てください。プリンペランをやめたり、他のお薬に替えるかどうかは、消化器内科の先生にもよく相談して決めていきましょう。

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