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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)幼児の抗菌薬が変更された理由
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

出題と解答 : 東風平 秀博
(田辺薬局株式会社[東京都中央区])

A1

フロモックス(一般名セフカペンピボキシル塩酸塩水和物)は代謝・排泄の過程でカルニチン抱合を受けるため、血中カルニチン量の低下、脂肪酸代謝の障害から痙攣などの低血糖症状を起こすと考えられている。

 セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(商品名フロモックス他)は、消化管からの吸収を向上させる目的で活性成分にピボキシル基を付加したプロドラッグである。小児では、中耳炎などの感染症に頻用される抗菌薬の一つになっている。だが、こうしたピボキシル基含有抗菌薬(表1)を小児に投与すると、代謝・排泄の過程で低カルニチン血症を引き起こし、低血糖症や痙攣、脳症などに至ることがある。2012年4月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、改めてこの副作用について医療関係者に注意を喚起した。

表1 ピボキシル基を含有する抗菌薬

 ピボキシル基を含む抗菌薬は消化管から吸収される際、活性成分とピバリン酸に加水分解される。ピバリン酸は、カルニチン抱合を受けて尿中に排出されるため、体内のカルニチン量が減少することになる。

 カルニチンは、長鎖脂肪酸の代謝で重要な役割を果たす物質である。空腹時のエネルギー源となる長鎖脂肪酸は、カルニチンを介して初めてミトコンドリア内に取り込まれ、代謝を受けてエネルギーとなる。このためカルニチンが欠乏すると、長鎖脂肪酸がミトコンドリア内に取り込まれなくなり、糖新生が障害されて、低血糖症に至ることがある。

 通常、カルニチンは肉類から補給されるほか、肝臓でリジンとメチオニンから生合成されるため、不足を心配する必要はない。しかし、もともと体内にカルニチン量が少ない乳幼児では、ピボキシル基含有抗菌薬によるカルニチン消費が重大な影響を及ぼすケースがある。

 PMDAによると、ピボキシル基含有抗菌薬の使用によって38例が低カルニチン血症や低血糖を起こし(表2)、うち3例には後遺症が残った。発症例の年齢は、1歳が20例、1歳未満が5例、3歳が5例と、乳幼児がほとんどを占めていた。

 副作用発現までの投与期間は、14日以上が27例で多かったが、14日未満が9例あった。Kちゃんの主治医は母親に対し、長期投与時にこの副作用が起こると説明したようだが、実際には、短期投与でもカルニチン欠乏が起こる恐れがある。

 今回、Kちゃんの母親は主治医に「Kちゃんの食欲がないので心配だ」と話している。主治医は、食事から摂取できるカルニチン量の減少や、Kちゃんの1歳という年齢を考慮し、セフカペンピボキシルではなく、ピボキシル基を含有しないクラリスロマイシンを処方したのではないかと考えられる。

表2 ピボキシル基含有抗菌薬による低血糖症の発現例(PMDA『医薬品適正使用のお願い』2012年4月No.8より抜粋引用)

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 確かに、フロモックスを長く使うと、ごくまれにですが痙攣などの症状が起こることがあります。フロモックスの成分が尿から体の外に出るとき、カルニチンという栄養素も一緒に外に出てしまうからです。大人では問題にならないのですが、小さいお子さんでは、もともと体内にあるカルニチンが少なく、フロモックスを飲むとカルニチンが大変少なくなってしまうことがあります。すると、おなかが空いたときのエネルギー源が足りなくなって痙攣などの症状が出ることがあるのです。

 一般には、フロモックスは小さいお子さんによく使われる、効果が高く安全なお薬です。ですが、Kちゃんは食欲がない状態ですし、2週間前にフロモックスを使ったばかりですので、先生は、念のために今回はクラリスロマイシンを処方されたのだと思います。こちらも効果の高いお薬ですので、しっかり飲ませてあげてください。

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