(1)、(3)、(5)、(6) Q1の答えの薬剤は全てケトチフェンフマル酸塩を含有する経口薬であり、てんかんの治療中であるBさんが服用すると、てんかん発作が誘発される恐れがある。 お薬手帳の情報によると、Bさんは近隣の病院の神経内科に通院しており、バルプロ酸ナトリウム(商品名デパケンR)とレベチラセタム(イーケプラ)を処方されていることから、てんかんの治療中であると考えられる。
てんかんは慢性の脳疾患で、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とする。てんかん発作には、意識を喪失して全身を硬直させた後に痙攣を起こす発作(強直間代発作)や、10~30秒程度ぼーっとした状態(欠神状態)のみで終わる発作(単純欠神発作)など、様々な形がある。
2006年以降、ガバペンチン(ガバペン)、ラモトリギン(ラミクタール)、トピラマート(トピナ)、レベチラセタムといった新規の抗てんかん薬が日本で次々と発売された。これらは現在のところ、旧来の抗てんかん薬との併用下でのみ使用が認められている。Bさんも、新規薬剤のレベチラセタムと、従来から使用されているバルプロ酸を併用している。
今回、Bさんが購入しようとしたザジテンAL鼻炎カプセルは、抗ヒスタミン薬のケトチフェンフマル酸塩を主成分とする経口の第2類医薬品である。Q1の選択肢に挙げたコンタック600ファースト、パブロン鼻炎カプセルZ、ヒストミン鼻炎カプセルZも、同じくケトチフェンを含有する経口薬である。
これらのOTC薬の添付文書には、医療用医薬品の禁忌事項に該当する「してはいけないこと」の欄に「次の人は服用しないでください。てんかん又はけいれん発作を起こしたことがある人」と記載されている。また、医療用医薬品においても、ケトチフェンの経口薬(ザジテン他)の添付文書に禁忌として「てんかん又はその既往歴のある患者」が11年4月に追加されている。これらはケトチフェンが脳内に移行してヒスタミンの作用を抑制し、痙攣に対する閾値を下げる恐れがあるためである。
ただし、点鼻薬については、投与後のケトチフェンの血中濃度は測定限界以下であり、非常にわずかしか全身に循環しないことが確認されている。さらに、点眼薬は通常、点鼻薬よりも全身循環が少ないことが知られている。そのため、ケトチフェンを含む点鼻薬や点眼薬については、てんかんや痙攣に関しての注意喚起は行われていない。
第2類医薬品は法律上、薬剤師を配置していない店舗でも、登録販売者がいれば販売することができる。一般に医療用医薬品よりもリスクが低いとされるOTC薬であっても、お薬手帳を活用した薬剤の相互作用のチェック、現病歴や既往歴の確認は非常に重要である。
なお、バルプロ酸については、カルバペネム系抗菌薬と併用すると血中濃度が低下し痙攣を誘発する恐れがあり併用禁忌とされているが、ケトチフェンとの相互作用については記されていない。また、レベチラセタムは他剤との相互作用がほとんどないとされている。つまり、相互作用により抗てんかん薬とケトチフェンを併用できないというわけではないのである。
イラスト:加賀 たえこ 鼻水が止まらなくて困っていらっしゃるのですね。お薬手帳を拝見したところ、現在、デパケンとイーケプラという、てんかんのお薬をお飲みになられていますね。
Bさんがお持ちになったザジテンAL鼻炎カプセルは、てんかんや痙攣発作を起こしたことがある方が飲むと、痙攣発作を起こしやすくする恐れがあるので、お使いにならないでください。
ザジテン以外の鼻炎の治療に用いられる飲み薬も、同様の成分が入っているものが多いので、注意が必要です。
飲み薬と同じ成分で、鼻に差すスプレータイプのお薬があります。鼻に差すタイプは発作を起こしやすくすることはないので、こちらをお薦めします。よろしければ使い方をご説明いたしますが、いかがいたしましょうか。
出題と解答 : 笹川 大介
(はらだ薬局[鹿児島県薩摩川内市])
こんな服薬指導を
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