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薬歴添削教室
関節リウマチ患者への着眼点とアセスメント
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

 今回は、すみれ調剤薬局に来局した61歳の男性、山田公一さん(仮名)の薬歴をオーディットしました。山田さんは、以前に会社の健康診断で「関節リウマチ」と言われたことがあるそうです。今回は、階段を上るときなどに膝に痛みを感じたため受診しました。

 関節リウマチは、痛みをコントロールすると同時に、抗リウマチ薬を上手に使いながら長期的に管理していくことが望まれます。患者に対していかに継続的にケアを提供できるかがポイントとなります。薬物治療が開始される初期の段階で、患者のどのような点に注目し、どうアセスメントするかを考えながら、オーディットを読み進んでほしいと思います。

 本文は、会話形式で構成しています。薬歴作成を担当したのが薬剤師A~Iです。(収録は2012年3月)

講師 早川 達
北海道薬科大学薬物治療学分野教授。POS(Problem Oriented System)に基づく薬歴管理の第一人者。著書に『POS薬歴がすぐ書ける「薬歴スキルアップ」虎の巻』基本疾患篇、慢性疾患篇、専門疾患篇など。

今回の薬局
すみれ調剤薬局(茨城県土浦市)

 すみれ調剤薬局は、茨城県、栃木県、群馬県で薬局を展開するアルファームが、1992年に開設した。応需している処方箋は月4800~5000枚程度。近隣にある病院からの処方箋が9割を占め、特に循環器内科、整形外科、神経内科、皮膚科、眼科の処方箋が多い。

 同薬局には、常勤・非常勤合わせて12人の薬剤師が勤務している。内訳は、20代2人、30代2人、40代3人、50代5人。

 薬歴は電子薬歴を使用し、SOAP形式で記載している。薬歴を記載する際は、過去から現在に至る経過がよく分かるように気をつけている。また、SやOで重要な情報が得られていても、Aが定型的になりがちなことがあるので、その点を改善することが課題であると考えている。

薬歴部分は、PDFでご覧ください。

早川 薬歴の表書きを確認しましょう(薬歴(1))。患者の山田さんは、61歳の男性です。7月27日に、すみれ調剤薬局に初めて来局しました。アレルギー歴、副作用歴、他科受診、併用薬などはないということが、この時点で確認されています。主病名については、8月15日に担当した薬剤師が確認し、上書きしています。これはとても良いと思いますね。

A 表書きに「無」と書いてあって、日付が入っていない場合、「ない」というのではなく、「情報がない」という意味です。

早川 例えば「体質特記」とか「飲食相互」といった欄のことですか。

A そうです。「まだ聞いていない」という意味です。

早川 分かりました。この部分は、「ない」のか「未確認」なのかを、明確に区別できるようにした方がよいですね。

 7月27日の薬歴は、患者の症状やこれまでの経過が、要領よく聞き取れていると思います(薬歴(2))。一つ確認したいのですが、7月27日のS情報に「昔」とあるのは、何年くらい前のことでしょうか。

A この時点で、患者から聞き取りはしませんでした。実は、「本当にリウマチなのかな」とちょっと思ったのです。「昔」がいつのことだったか、聞ければよかったのですが。

早川 もし聞き取れていたら、どんなアセスメントができるでしょうか。

B 発症の初期なのか、1年以上経過しているのかといったことが分かると思います。

早川 つまり、今後、この患者の管理を行っていく上で、発症した時期は重要な情報になりますね。

A はい。患者さんからリウマチという言葉を聞いたら、「いつからですか」と聞くようにしたいです。

早川 それができれば、2回目、3回目に患者が来局した折に、もっと詳しいことが聞けるでしょう。私は「昔」という言葉に着目しましたが、皆さんだったら、どのあたりに着目しますか。

関節リウマチの特徴的症状は?

C 次の8月11日は私が担当したのですが、改めて薬歴を見直してみると、7月27日から2週間たっているのに、相変わらず痛みを訴えています。前回と比較すれば、あまり改善していないということが分かったはずです。それを踏まえて、「朝のこわばりがありますか」などと聞けたはずなのに、すぐにお薬を渡してしまいました。

早川 関節リウマチの特徴的な症状である「朝のこわばり」が出ました。他にはどんな症状がありますか。

D 関節の腫れ。これだけではアバウトすぎますか。

早川 どの関節に、いくつ、どの程度の痛みや腫れがあるか、と見ていけばよいですね。

E 関節の腫れが左右対称かどうか。

早川 Aさんのように、「本当にリウマチかな」と思うことも大事です。関節症状が左右対称に出ているかどうか確認できれば、関節リウマチの可能性が高くなります。

E 患者は「昔、健診で関節リウマチと言われた」ということを、病院で話しているのか。もし話していれば、検査などが行われているかもしれません。

早川 関節リウマチ患者に表れるのは関節症状だけですか。それ以外の症状はどうでしょうか。

B リウマトイド結節。

早川 そうですね。私たちも押さえておきたいところですね。検査についてはどうでしょうか。関節リウマチにはどんな検査がありますか。

C CRP、リウマトイド因子、赤沈。

早川 他にもありますか。

B 目に炎症が起きたり、血管がやられたりする。

早川 確認ですが、症状や検査をチェックする目的は何でしょうか。

B 関節リウマチの鑑別診断。関節リウマチの薬物治療に入ってよいかどうかを確認するため。

早川 関節リウマチかどうか、関節リウマチだった場合にどの程度なのかによって、治療方針にも影響してきますね。そのため、今挙げたようなことは、できるだけ初期に押さえておきたいということだと思います。

 別の観点からも整理しておきたいのですが、こういう患者に対して指導をしていく際、私たちはおおよその見通しを押さえておくことが必要ではないでしょうか。一般的に、関節リウマチの予後不良因子は何でしょうか。

D リウマトイド因子の値が高い。

C CRPや赤沈で、炎症反応が強い。

早川 検査でいうと、MMP-3(Matrix Metalloproteinase-3)高値も予後不良因子といえますね。若年発症であることも予後不良因子です。だからこそ、「いつから」を知ることが大事なんです。また、関節外症状のある患者は、明らかに予後が不良です。

 これらの予後不良因子は、単に覚えるのではなくて、タイミングよく患者に聞けるようにすることが重要です。このまま放っておくといけないとか、まだ大丈夫とか、そういう感覚を持っているかどうかで、患者への対応も変わってくると思います。

DMARDsはリウマチ治療の基本薬

早川 8月15日の薬歴を見ましょう。リウマトレックス(一般名メトトレキサート、以下MTX)が処方されています。担当したCさんは、処方された薬を見て、患者に確認したのですね。

C はい、そうです。患者さんから「リウマチと言われた」と聞き取ることができました(薬歴(3))。

早川 関節リウマチの薬物治療が始まりました。初期治療の評価をしましょう。皆さんはこの時点で、どのようなことを確認したいですか。

D 関節リウマチと確定診断された理由となる検査の結果を聞きたい。

E 既往症や合併症を確認したい。例えば糖尿病があるかどうか。

F 喘息も。

A 腎障害の有無。

早川 それは、薬の副作用のリスクを考えてのことですね。初期治療の評価という観点からは、まずは検査値を押さえておきたいですね。

 さて、関節リウマチの場合、一般的に、どの系統の薬から開始しますか。

B 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)。

早川 DMARDsの基本薬は。

B MTXです。

早川 まさにこの患者に投与された薬です。ただ、DMARDsには色々な薬があります。この患者にMTXが使われた理由は何だと思いますか。

D 疾患活動性が高いから。

A 炎症が強いから。

早川 それは何で評価しますか。

A CRP。

早川 この段階で検査値を確認できていればよかったですね。「先生は検査の結果について説明されませんでしたか」などと聞けば、情報が得られたかもしれません。それによって、プレドニン(プレドニゾロン)の処方が適切かどうかの評価もできます。一般的に、プレドニンはいきなり処方されますか。

D 痛みを取るという意味では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われることが多いと思います。

早川 治療初期からプレドニンが処方されるのはどんな場合ですか。

C 疾患活動性が高い場合。

早川 そうですよね。さらに、関節外症状がある場合もそうです。この2つを確認することで、プレドニンが出た理由、妥当性を薬歴にも記載できます。リウマトレックスの用量はどうですか。

C 少ないと思います。

早川 そう判断した場合、患者にどんなことを確認しますか。

C 腎機能。

早川 まずそれが大事ですね。他にはありませんか。

D アルコールの常飲。肝障害を増悪させるおそれがあるから。

E 体重。

早川 この患者の体重はどうですか。

E けっこう上背があり、体格は普通だと思います。

早川 このタイミングで、アルコールについて聞いておきたかったですね。「上背がある」という情報も表書きに書いておきましょう。そうすることで、他の薬剤師も、投与量を減らす必要はないことが分かりますから。

C 大事なタイミングだったんですね。

MTXによる初期治療を評価する

早川 8月22日にいきましょう。プレドニンが減量されました(4)。担当薬剤師のFさんは、検査値を聞き取り、しっかりアセスメントしています。これはよろしいと思います。

F 肝機能を心配してASTやALTをチェックしましたが、問題はありませんでした(4)。

C プレドニンを使っているせいか、炎症反応は低いですね。

早川 下がったんでしょうか。

C 最初がどうだったのかが分からないので…。

F 「良くなっているみたいです」と患者さんが話していたので、下がったんだと思います。

早川 おそらくそうなのでしょうが、意識して確認するのと、曖昧なままにしておくのとでは大きな違いがあります。

 次の8月29日は、「腕は上がらないが良くなった」と聞き取っています。どうアセスメントしますか(薬歴(5))。

D はじめから上がらなかったのかな。

C それが聞けていなかった。

早川 これはリウマチのせいですか。

B 違う可能性もある。五十肩とか。

早川 われわれも鑑別する必要がありそうですね。それによって、薬の効果をどう評価するかも変わってきます。患者が「良くなった」と言っているのはどういう意味ですか。

B 痛みのことです。

早川 そうですね。患者の訴えは、常に大事にすべきです。

 9月12日、MTXが開始されて4週が経過しました。初期治療の評価をするタイミングです(薬歴(6))。担当したGさんは、患者に症状を確認したのですね。

G はい。前回のS情報に「腕が上がらない」とあったので聞いたところ、変わらないという答えでした(6)。

早川 痛みは。

G 痛みは特に言わなかった。

早川 この日のA情報に、2日分続けて服用してしまったと書かれています(薬歴(7))。

G MTXは週1回の薬なので、何曜日に飲んでいるかを確認したら、「飲む曜日ってあるの」と言われて、分かったのです。

早川 そこで、次回にMTXをきちんと飲めたか確認するというプランにつながっています(7)。これは良いと思います。

 次は10月27日です。12月5日と一緒に見ていきましょう。

H 10月27日は私が担当しました。患者さんから、リウマトレックスは痛み止めだと思っており、痛いときだけ飲んでいたと言われたので、1週間に1度、金曜日に飲むように説明しました(8)。

I 12月5日は私ですが、前回のことがよく分かっておらず、「コンプライアンス良好」としてしまいました(8)。でも実は、来局日がちょっと遅れていますよね。

早川 この点については、プロブレムとして挙げておくと、後の対応にも厚みが増すと思います。

コンプライアンスを高めるには

早川 ここで皆さんにうかがいます。患者のコンプライアンスを改善するために、どのような対策が考えられますか。

E 患者さんは61歳なので、いったん退職して今は定期的な仕事をしていない可能性や、夜に仕事をしている可能性もあります。コンプライアンスが悪いのは、そうした生活リズムが影響しているかもしれません。

B そもそも患者さんは、リウマチという病気に対してどう思っているのかな。

A これからどうなっていくのかについて、理解しているのでしょうか。

早川 患者の認識を探る必要がありそうですね。私たちが支援できることとしては、どんなことがありますか。

D 日常生活上の注意点を知らせる。冷やしすぎないようにするとか。

C 薬を飲む日を忘れないよう、家族にも協力してもらう。

E 次回の受診日を薬袋に大きく書いておく。でも61歳でしっかりしているので、あまり大きく書くのもどうか…。この患者さんはどちらかと言えばとっつきにくくて、自分から情報を出してくれるタイプではないので、どんな反応をされるのかが分からないのです。

早川 薬剤師がどこまで関わっていけばよいのか。そうしたアセスメントも、ぜひ薬歴に書いておいてください。

 12月26日の薬歴には詳しい検査値が書いてあります。治療の効果をどのように評価しますか(9)。

D リウマチ因子が結構高いと思う。

早川 担当したDさんは、MTXの用量が少なめだとアセスメントしました。

D はい、増量の可能性を考えました。他のDMARDsや生物学的製剤の併用もあるかもしれません。

早川 患者の腎機能、肝機能は。

D ぎりぎり大丈夫かな。

早川 どこまでなら大丈夫と判断できますか。

C ガイドラインでは、AST、ALTが正常の2倍を超えると肝障害の危険因子とされています。

早川 私たちが判断する際も、何を根拠にするのかが重要ですね。

患者の不安にどう向き合うか

早川 12月26日と2月8日の薬歴のS情報からは、患者の不安な様子がうかがえます(薬歴(10))。

E 12月26日は、あまり突っ込んだことを聞くと患者さんを怒らせてしまいそうな感じでした。何も聞かれたくない様子でした。病院で先生から何か言われたのかもしれないと思いました。

B 患者さんと医師との相性はどうなんでしょうか。医師とのやりとりが分かると、対応のしかたも見えてくるのでは。

D コンプライアンスが悪いので、しっかり飲めれば検査値ももっと下がってくるということを伝えたいです。

E 寒い時期なので、体を冷やさないようにとか、できることをアドバイスしたい。薬剤師と話すことのメリットを感じていただけるようにしたいです。

早川 薬剤師が関わることの意味を理解してもらうことも大切ですね。

すみれ調剤薬局でのオーディットの様子。

参加者の感想

中島 茂 氏

 初回の聞き取りがけっこう重要なんだということが、改めて分かりました。どのような経過をたどっているのか、そしてこれからの見込みについて、初めからイメージしておくのも大事だと思いました。

森山 美智子 氏

 リウマチは苦手という意識が自分の中にあり、ガイドラインも見ていなかったので、今回、改めてガイドラインを確認しました。基本的な情報を押さえておいた上で、患者さんとコミュニケーションを取るようにしないと、重要な情報を聞き出せないと思いました。

木村 学 氏

 つねづね、過去から現在に至るSOAPの流れに注目して薬歴を記載しようと思い、そうやってきたつもりでしたが、忙しさを理由に、重要なSやOがあるのに見逃して、定型的なAやPで終わっているところがあるということに気づきました。忙しさの中にも一呼吸置いて、時間をとって患者さんのケアができればいいと思いました。

西野 純子 氏

 患者さんに接する前に、まずその方がどういう問題を抱えているのかというのを、自分の頭の中で予測していかないといけないと思いました。短い時間の中で、現時点では何が問題なのかを判断できるよう、トレーニングする必要があると思いました。また、患者さんの問題は、毎回変わってくるということも分かりました。

全体を通して

早川 達氏

 薬歴全体を通して、薬剤師が継続的に関わっていく視点がうかがえます。すみれ調剤薬局のような多くの薬剤師が対応するところでは、特に大事なことです。薬剤師全員が共通の認識をもって業務に当たっているところは、大変良いと思います。

 一方で、基本的な病態と薬物治療の捉え方に、若干弱いところがあるように感じました。ガイドラインの基本を押さえることによって、的確に患者に確認したり、治療を評価したりすることが可能になります。リウマチ因子が下がらないことへの患者の不安の表出についても、病態と検査の概略の知識を基に、適切に患者への指導につなげることが可能です。

 後は、患者にどのように対応するか、アウトプットの部分が課題であると感じました。今回のオーディットの経験を生かして、今後の業務を行っていただきたいと思います。

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