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ビタミンD代謝が関与する相互作用
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

 くる病や骨軟化症は、かつては原因不明の疾患であったが、ビタミンDの摂取不足や日光照射不足が原因であることが明らかになって以来、これらを原因とした発症はまれになっている。

 一方、現在でも臨床上問題となるのが、薬剤誘発性のくる病や骨軟化症である。特にPXR活性化作用がある一部の抗てんかん薬による発症に、注意が必要である。薬剤性のくる病や骨軟化症に関する相互作用について、ビタミンD3(VD3)代謝を中心に紹介する。

くる病、骨軟化症とは

 骨形成は、骨芽細胞が網目状になったI型コラーゲンを中心とする非石灰化骨基質(類骨)を形成し、そこに石灰化が起こることで完了する。石灰化は、類骨に骨塩のCaやPよりなるヒドロキシアパタイトの結晶が沈着して起こる。この石灰化が障害されると、小児ではくる病、成人では骨軟化症を発症する。

 小児のくる病は、成長期に骨の石灰化障害が起こるために、骨の形成障害や変形(低身長、O脚、X脚、鳩胸など)を伴う。一方、大人の骨軟化症は、骨痛、筋力低下などを主症状とし、骨折を引き起こす。

薬剤によりビタミンD3の作用が低下

 くる病や骨軟化症を誘発する可能性がある薬剤と機序には表1のような報告がある。中でもVD3の作用低下による誘発が多い。VD3は、腸管からのCa、Pの吸収や、骨から血中へのCa動員、腎臓でのCa、Pの再吸収促進などにより、血清Ca、Pの恒常性を維持している。VD3作用が低下して低Ca、P血症になると、骨の石灰化が障害される可能性がある。

表1 くる病・骨軟化症を誘発する可能性がある薬剤とその発現機序

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 VD3の作用を低下させる薬剤として最も注意すべきなのが、PXR活性化作用があるバルビツール酸系やヒダントイン系、イミノスチルベン系の抗てんかん薬である。

 図1に示すように、食物から摂取されたり皮膚で作られたVD3は、肝臓のCYP2R1による25位の水酸化を受けて25(OH)D3となり、次いで腎臓のCYP27B1による1α位の水酸化を受けて最終的に活性型VD3[1α,25(OH)2D3]となり、体内で生理作用を発揮している。

図1 ビタミンD3の代謝経路

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 肝臓では、ブタを用いた実験ではあるが、バルビツール酸系の抗てんかん薬のフェノバルビタール(商品名フェノバール他)が直接的に、あるいはPXRや構成的アンドロスタン受容体(constitutive androstane receptor:CAR)を介して、肝臓のCYP27A1、CYP2D25の発現を抑制し、活性型VD3の生成量を減少させる可能性が指摘されている。

 また、PXR活性化作用がある薬剤が肝臓のCYP3A4を誘導して25(OH)D3の代謝を促進する結果、活性型VD3の生成量が減少することも報告されている。さらに、PXR活性化剤やバルプロ酸ナトリウム(デパケン、バレリン、ハイセレニン他)が、肝臓や小腸、あるいは腎臓のCYPを誘導することで、活性型VD3の不活化を促進することも示唆されている。

 このように、抗てんかん薬は活性型VD3の産生や不活性化に関与する様々なCYPの発現に影響し、活性型VD3量を低下させることで、くる病や骨軟化症を誘発する可能性がある。

低P血症起こす薬剤との併用にも注意

 くる病や骨軟化症は、低P血症を引き起こす薬剤によっても誘発される。PXR活性化作用がある抗てんかん薬とこれらの薬剤を併用すると、発症の可能性がさらに高まるため、注意が必要である。

 Al含有製剤は消化管でのP吸収を阻害するほか、長期投与によりAl骨症を起こすなど様々な機序により骨軟化症を誘発する。また、アデホビルピボキシル(ヘプセラ)などファンコニ症候群を誘発する薬剤や、アセタゾラミド(ダイアモックス)などは、尿細管障害を引き起こしてPの再吸収を阻害する。

服薬指導の実際

 表1に示した薬剤を併用している患者に注意が必要である。特に抗てんかん薬の多剤併用やAl含有製剤との長期併用には注意を要する。

 一般に、抗てんかん薬の投与時には薬物血中濃度モニタリング(thera-peutic drug monitoring:TDM)を行う必要がある。また、骨軟化症の発症時には血清Ca、P濃度の低下やアルカリフォスファターゼ(ALP)値の上昇が特徴的であるため、患者には定期的な血液検査が必要であることを伝える。

 さらに、小児では骨の変形に注意するよう伝える(ケース1)。一方、成人では、発症初期は無症状であることが多いが、進行すると、関節や腰、背中、大腿部などの痛みや、筋力低下、脱力感が現れ、容易に骨折する恐れがあることを説明する(ケース2)。

 A君は幼児期からてんかんと診断されている。数カ月前からイーケプラ(レベチラセタム)が追加された。母親には、テグレトール(カルバマゼピン)とデパケン(バルプロ酸ナトリウム)は飲み合わせが問題になる薬剤が多いため、OTC医薬品を服用する場合にも必ず相談するように伝えている。

 また、治療により、骨が変形するくる病や血液障害(白血球減少)、肝臓や腎臓の機能障害などの副作用が出る恐れがあることを伝え、薬局でも定期的な検査の結果を確認している。

 BさんはAl含有製剤のバファリン配合錠A81(アスピリン・ダイアルミネート配合)とつくしA・M散を数年間服用している。2週間前に三叉神経痛に対してテグレトールが追加された。同薬を長期服用すると、VD3作用低下による骨軟化症や、降圧薬の代謝促進による効果の減弱が起こる恐れがある。Bさんは高齢であり、Al含有製剤も併用しているため、副作用を起こす危険性が高いと推測された。

 Bさんには、これまでと同様に血液検査を継続し、家庭血圧を測定することが重要であると伝えた。また転倒や骨折に注意し、関節、腰、背中、大腿部の痛みや、力が入らないなどの症状が認められた場合は、かかりつけ医に相談するよう指導している。

(杉山薬局・ラララ薬局[福岡市]
落合寿史、杉山正康)

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