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6社の自主回収から見えてきたこと
日経DI2012年7月号

2012/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年7月号 No.177

 今年 5月11日、長生堂製薬の『セフカペンピボキシル塩酸塩細粒小児用10%「CH」』が自主回収された。定量試験において、一部に規格外となる製品の混在が判明したためという。

 医薬品において品質は命綱であることは自明の理で、こうした自主回収はないに越したことはない。とはいえ、この1例をあげつらって、「後発品はこれだから…」と言うつもりはない。先発品を含めた全ての医薬品で、同様の事態が起こる可能性があるからだ。

 だが今回のケースで気になったのは、その後、後発品メーカー各社から発売されている「セフカペンピボキシル塩酸塩細粒小児用10%」が、次々に自主回収となったことだ。

 医薬品医療機器総合機構のウェブサイトで検索してみると、5月14日には辰巳化学、5月18日にはマイラン製薬、日本ジェネリック、陽進堂、日医工のセフカペン小児用製剤の自主回収が発表されている。一方、沢井製薬と東和薬品の2社の製品は、自主回収はされていない。

 回収された6社の製品は共同開発され、全て同一の工場で製造されていた。つまり、同じ「セフカペン」に、各社が自前の看板を付けて販売していたということになる。

 2005年の薬事法改正以降、医薬品製造の他社への全面的な委託が可能になった。だから製造委託が法に触れるというのではない。しかし、今回の事態に違和感を覚えたのは、筆者だけではないだろう。

 ここで問題としたいのは、中身が全く同じでありながら、かなりの数のメーカーから異なった製品名で発売されていることだ。今回のセフカペン小児用製剤に限った話ではない。1種類の先発品に対して、まさに雨後のたけのこのように多数の後発品が存在することは、現場の混乱を招くだけでなく、後発品に対する信頼性の低下につながりかねないことに、メーカーは気づいているのだろうか。

 もう一つの問題は、その製剤を実際に作った「製造元」が公表されていないことだ。今回のような回収騒ぎになってもなお、それが明記されていないことについては、不自然さすら感じる。メーカーは、製造元や委託先を隠しておかなければならない事情を抱えているのではないかと、邪推もしたくなる。

 スーパーの店頭にある肉や魚、野菜などを考えていただきたい。それぞれの商品のプレートには、商品名と価格だけでなく、多くの場合は産地まで記されている。中には、2次元バーコードが印刷され、そこから野菜の生産者や栽培方法、農薬や肥料を与えた日まで、インターネットで事細かに見ることができるシステムが構築されているものもある。

 今や、食品に対する消費者の目は非常に厳しい。そしてそれに応えるべく、単に生産者のレベルだけでなく、業界を挙げて「食の安全確保」に取り組んでいる。先に紹介したようなトレーサビリティーの確保も、その一つといえるだろう。

 片や、後発品業界はこのありさまである。今回の回収騒ぎは、われわれ薬剤師が何を指標にすれば質の高い後発品を選択できるか、その情報が極めて限られていることを明らかにしたといえる。これでは、薬剤師からはもちろん、他の医療従事者からの信頼を獲得することは不可能であるし、エンドユーザーである患者からの支持も得られないのではないか。

 現場の薬剤師の尻をたたけば、後発品の使用が進むというわけではないはずだ。後発品の品質確保や信頼性の向上という観点から、さらなる情報公開が必要だと考える。メーカー、業界団体、そして厚生労働省は真剣に考えてほしい。 (十日十月)

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