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OTCセレクトガイド
第9回 水虫
日経DI2012年6月号

2012/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年6月号 No.176

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 高温多湿の梅雨の時期は、水虫に悩まされる患者が増えてくる。

 水虫は、白癬菌が皮膚に感染して、角質内で増殖した状態をいう。身体の至る所に感染する可能性があるが、最も多いのは足である(以下、水虫は足白癬を指す)。

 白癬菌は、環境中に存在する真菌の一種で、通常、感染力は弱い。そのため、白癬菌が付着しても、きちんと洗い流し、清潔に保っていれば、水虫になることはほとんどない。

 しかし、足の指の間など、蒸れてこすれやすい部位では、菌が増殖して水虫になりやすい。

 水虫の症状には、足の痒みや悪臭のほか、足の指や足底、踵に皮むけや水疱、乾燥が見られることがある。

 こうした症状から、足の水虫は趾間型、小水疱型、角質増殖型の3つのタイプに分類される。趾間型では、指の間の皮がむけたり、白くふやけて亀裂やびらんが見られる。小水疱型は、土踏まずや足底の辺縁に赤く小さな水ぶくれを伴い、痒みが強いのが特徴だ。また、角質増殖型は、足底全体、特に踵の皮膚が厚くなってひび割れを起こすタイプで、冬に悪化しやすい。

 OTCの水虫薬の剤形には、クリーム、液、軟膏、ジェル、エアゾール、パウダーがある。このうち最も汎用性が高いのは、患部にしっかり塗れるクリーム剤である。

 液剤は、患部が乾燥していたり、破れていない水疱がある場合に薦めるとよい。容器の先端で塗布できる。

 皮膚の亀裂がひどい場合は、患部にしっかりと付着する軟膏を薦める。特にワセリンが基剤になっている軟膏は、じゅくじゅくした状態にも使える。

 ジェル剤は、乾燥が目立つ、角質増殖型の患者に向いている。すぐに乾燥してさらっとするので、塗ってすぐ靴下を履いても付着しない。

 エアゾール剤やパウダー剤のような噴霧する製品は、手を汚さず使用でき、外出先で使いたいときにも便利である。

 エアゾール剤は患部が広範囲の場合、パウダー剤はじゅくじゅくしている場合に使用を勧める。

この成分に注目

 OTCの水虫薬の有効成分は、スイッチOTCの再審査期間を過ぎた成分が多い。そのため、医療用医薬品と異なり、単味よりも複数の成分を配合した製品が主流で、1つの製品で抗白癬菌、鎮痒、消炎、殺菌効果が期待できるものが多い。

抗白癬菌成分

 アゾール系と非アゾール系の2つに分類される。

 アゾール系には、ビホナゾール、ミコナゾール硝酸塩、エコナゾール硝酸塩、スルコナゾール硝酸塩、ラノコナゾールなどがある。真菌細胞膜を構成するエルゴステロールの合成阻害に加えて、細胞膜の輸送能や透過性を低下させ死滅、増殖抑制する。毒性は低く、耐性菌も出現しにくい。

 非アゾール系には、腸管吸収が良く白癬菌に対する抗菌活性と殺菌作用が強いテルビナフィン塩酸塩や、極めて強い抗菌活性を持つブテナフィン塩酸塩のほか、アゾール系に近い抗菌域と抗菌活性を持つアモロルフィン塩酸塩などがある。

鎮痒成分

 消炎成分のクロタミトンや抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンがよく知られている。

 また、局所麻酔成分のリドカインやリドカイン塩酸塩、刺激成分で清涼感のあるl-メントールも痒みを抑える。

角質軟化成分

 サリチル酸や尿素は、角質を軟化させて有効成分を浸透させ、殺菌作用を示す。

収れん成分

 酸化亜鉛など。皮膚を保護し、収れん作用を示す。

殺菌・防腐成分

 患部を殺菌し2次感染を防止する。イソプロピルメチルフェノール、ベンザルコニウム塩化物など。

消炎・保護成分

 皮膚炎を抑えるグリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチルがある。

製品セレクト

 水虫の患者にまず薦めたいのが、ブテナロックVα爽快パウダー(久光製薬)である。

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 医療用医薬品のボレーという製品などに使われているブテナフィン塩酸塩が主成分で、殺菌や消臭作用のあるイソプロピルメチルフェノール、抗炎症作用を持つグリチルレチン酸のほか、鎮痒成分として、抗ヒスタミン成分のクロルフェニラミンマレイン酸塩、局所麻酔作用のあるジブカイン塩酸塩、l-メントール、クロタミトンを配合している。

 噴霧の刺激が痒い部分を掻いてくれるような感じで、使用直後は冷たく気持ちが良い。また、さらさら感が持続するので、患部がじゅくじゅくしている水虫に向いている。

 ブテナロックと同じくブテナフィン塩酸塩を主成分とした製品には、スコルバEX(武田薬品工業)もある。

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 女性をターゲットにした、一見すると制汗剤のようなピンク色の容器で、外出先で使用する際に人目が気になるという女性にお薦めである。

 抗炎症作用のあるクロタミトンを300mgと多く含有しており、水虫特有の臭いを抑えるベンザルコニウム塩化物を配合している点も特徴である。

 なお、スコルバEXには、ピンクと同様の成分・含有量で、蓋が青く本体がシルバーの男性向けの容器もある。

 こうしたスプレータイプの水虫薬は、噴霧時に顔を近づけ過ぎると、薬液を吸い込んでしまうので、顔から離して使用するように指導する。また、製品ごとに使用時のノズルの向きや、患部からの距離、噴霧時間が異なるので、使用前に製品表示を確認するように伝える。

 乾燥やひび割れがひどいという患者には、軟膏タイプのピロエースZ軟膏(第一三共ヘルスケア)を薦めるとよい。

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 2006年にスイッチOTCされたラノコナゾールが主成分で、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノール、炎症を抑制するグリチルレチン酸を含有している。基剤にワセリンを用いている。

 以前は、ラノコナゾールの単味でウィンダムという商品名で販売されていたが、ピロエースシリーズとして今年2月に発売された。なお、ピロエースWは、ピロールニトリンとクロトリマゾールが主成分である。

こんな製品も

 伸びが良く、さらっとした使用感を好む患者には、(a)ラミシールキュアジェル(ノバルティスファーマ)を薦めたい。塗付後すぐに乾燥するので、足底などの乾燥タイプの水虫に向いている。

 主成分は非アゾール系の抗白癬菌成分であるテルビナフィン塩酸塩で、このほか、クロタミトン、グリチルレチン酸、l-メントールも配合されている。

 同じくテルビナフィン塩酸塩が主成分の製品には、(b)ダマリングランデアイススプレー(大正製薬)もある。患部を素早く冷却する泡状のエアゾールが特徴で、痒みの強い患者に薦めたい。

 患部がじゅくじゅくしていたり、皮膚がふやけてむけている患者には、(c)フットガンコーワクリーム(興和)がよい。主成分はアゾール系のラノコナゾールで、組織修復作用のあるアラントインを含有している。クリーム剤なので、患部にしっかり塗れる。

 女性を意識した製品には、(d)メンソレータム エクシブ液(ロート製薬)もある。テルビナフィン塩酸塩を主成分にしたミストタイプで、グリチルレチン酸、ジフェンヒドラミン、リドカインを含有し、痒みにも効果がある。

 また、踵や足底の乾燥タイプや水疱ができて皮がむけている水虫には、同ブランドで尿素を配合したエクシブディープ10クリームが向いている。

 尿素で角質を柔らかくして主成分のテルビナフィン塩酸塩を浸透しやすくする。ただし、ひび割れが特にひどい場合は、尿素で患部が染みることがあるので、注意が必要である。

 水虫薬は、入浴後の清潔な状態で使うことが重要であり、水虫用の皮膚洗浄剤も発売されている。

 (e)ピロエース石鹸(第一三共ヘルスケア)は、殺菌成分のトリクロカルバン、クレゾールと、鎮痒成分のジフェンヒドラミン塩酸塩を含む、薄緑色の石鹸である。

 また、(f)ブテナロック足洗いソープ(久光製薬)は、洗顔フォームのようなチューブタイプ。角質を軟化させ抗菌効果のあるサリチル酸と、抗炎症作用のあるグリチルリチン酸ジカリウムを有効成分とし、清涼感のあるメントールや保湿成分も含む。爽やかなティーツリーオイルの香りも特徴である。

 寝たきりの患者など、頻繁に入浴することが困難な場合は、代わりにウェットティッシュなどで患部の汚れをまめに拭き取るようにする。そんなときに便利なのが、(g)リンスキンL(エーザイ)だ。

 塩化ベンザルコニウム0.01%溶液を含有している医療用脱脂綿で、1枚ずつの個別包装なので衛生的。20包入りと40包入りがある。

 指の間がじゅくじゅくしやすい患者には、指の部分が5つに分かれている靴下の使用も勧めたい。

 こうした靴下は様々なメーカーから販売されているが、(h)紙の5本指ハーフ(テル コーポレーション)は、足の指から土踏まずを覆うタイプで、繊維に和紙を使っており、吸水性に優れている。さらっとした履き心地だが、購入時は素材が硬く、すっぱいような独特の臭いもするので、1回洗濯してから使うとよいだろう。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 水虫薬を2週間程度使用しても症状が改善しなかったり、かえって悪化した場合は、白癬菌以外の感染性皮膚炎、接触皮膚炎、汗疱性湿疹、更年期角質化症などの可能性もあるため、受診を勧める。

 また、爪の肥厚を来した爪白癬は、OTCの外用薬だけでは治りにくいので、医療機関での内服治療を促す。そのほか、ひどいびらんや出血が見られるような亀裂がある患者、免疫力の低下に関わる合併症(HIV感染、悪性腫瘍など)がある、またはステロイドを使用している患者にも、医師の指示を仰ぐように勧める。

副作用

 水虫薬の使用で発疹や発赤、痒み、浮腫を認めたら、直ちに使用を中止するよう伝える。

 塗布した当初は症状の改善がみられても、数週間後にかぶれが出現した場合は、配合成分による接触皮膚炎の可能性が高い。こうした場合にも使用を中止して受診を勧める。

その他

 水虫の原因となる白癬菌は、患部と正常な皮膚との境界に多く見られるので、塗布する際は、境界より広めに塗るよう指導する。

 特に足底や踵など患部が広い場合は、症状がないところも含めて広めに塗るように伝える。

 水虫薬を使用するのは、清潔で角質が柔らかくなった入浴後が望ましい。塗布する前に、水や汗、汚れを拭き取ってから塗る。また、患部はできるだけ乾燥を保つように指導する。

 白癬菌は角質内に入り込んでいるため、角質のターンオーバー(新陳代謝)に合わせて最低でも約1カ月程度、自覚症状がなくなっても2~4週間は続けることが必須である。

 特に皮膚が肥厚している角質増殖型では、治療に数カ月程度かかることもあるので、最低でも3カ月は使用するよう勧める。また、角質増殖型の水虫では、軽石や皮膚用のやすりなどで角質を削ることも有効であるが、削り過ぎて皮膚を傷つけることのないように指導するとよい。

 症状がなくなっても、完治する前に治療を中止したり、十分な薬剤量を塗布しなかったりすると、多くの患者が再発するといわれている。購入時には根気強く塗り続けるよう指導したい。

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