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Report-1
水虫、7つの誤解を解く
日経DI2012年6月号

2012/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年6月号 No.176

指の間が赤く腫れたり、皮がむける。白くふやけてじゅくじゅくし、赤くむけてただれることもある。

土踏まずを中心に足底や側面などに、小さな水疱ができる。周りが赤くなり、大きく腫れる場合や、水ぶくれが目立たず、薄い皮がむけるだけの場合もある。

がさがさして角質が肥厚し、ぼろぼろと皮がむけたり、踵がひび割れることもある。痒みが少ないので、乾燥による肌荒れと間違いやすく、水虫と気づかないことも多い。

初期は爪の一部が白っぽく濁る。徐々に濁った部分が広がり、爪が厚くなってぼろぼろになる。爪が厚く変形してくると、靴を履いたときに痛みが生じ、歩けなくなることも。

症例写真提供:比留間氏

 水虫は治らない─。そう思っている人は多い。実際に、毎年のように皮膚科を受診したりOTC薬を買いに来たりする人が少なからずいることを考えると、治っていない人が多いのも事実だ。

 しかし、東京女子医科大学皮膚科講師の常深祐一郎氏は、「水虫は、適切な治療をきちんと継続すれば、ほとんどは2~3カ月で治る」と言い切る。では、なぜ水虫は治らない、あるいは治りにくい人が多いのか。それは「適切な治療をきちんと継続できていないことによる」(常深氏)。

 水虫の治療は外用薬が中心となるが、正しい使用法を継続することは内服薬以上に難しい。塗布する量や範囲が不十分だったり、薬の使用を自己判断でやめてしまう患者も多い。つまり中途半端な治療が、水虫を治らない病気にしてしまっているといえる。

 「十分に指導すれば、きちんと薬を使えるようになり、途中でやめてしまう患者も減って、治る患者が増える」と常深氏。指導いかんでは、治療効果を高めることに貢献できるという。薬剤師の腕の見せどころといえそうだ。

 水虫は、白癬菌(真菌)が感染、寄生して起こる。足に感染したものを足白癬、足の爪に感染したものを爪白癬といい、足白癬は趾間型、小水疱型、角質増殖型に病型分類される。足白癬では、抗真菌外用薬が治療の中心となる(表1)。「最近の薬剤については、有効性に関して有意差がある報告はほとんどない」と埼玉県済生会川口総合病院皮膚科部長の加藤卓朗氏。主流は1日1回タイプだが「どれを使っても、それなりに効く」というのが大方の見方であり、医師の好みによって使い分けられているのが現状だ。

表1 水虫治療に用いられる主な医療用の抗真菌外用薬(加藤氏による、一部改変)

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 抗真菌外用薬の剤形は、軟膏、クリーム、液、ローション、スプレーがあるが、病変部の状態と使用感との兼ね合いで選択される。

 どの剤形にもある程度の刺激性があり、接触皮膚炎を起こす可能性があるが、液剤>クリーム>軟膏の順で刺激性が強い。加藤氏は「特に、びらんや亀裂がある病変部は、接触皮膚炎を起こしやすいため、軟膏を用いる」と説明する。軟膏は最も安全性が高く、保湿性があり皮膚を保護する効果も高いが、べとつくため嫌がる患者も少なくない。その点、クリームは伸びが良く、使用感は良好で患者にも好まれる。刺激性もそれほど強くないため、使いやすい剤形といえる。

 液剤やローションは使用感は良いが、アルコールを含むため乾燥しやすく刺激が強い。中には「染みた方が効いた気がする」と液剤を望む患者がいるが、「刺激を感じるということはかぶれやすいということなので、染みないものを選ぶ」(常深氏)。スプレー剤は、十分に塗布されているかが分かりにくいが、「病変部に触らず塗布できるため、介護者が塗布する場合などに適している」(加藤氏)。

 爪の周りには液剤、足底にはクリーム剤といった使い分けをする医師もいる。これに対し常深氏は、「剤形による浸透性などの違いはあまりなく、部位によって使い分ける必要があるとは思えない。むしろ2剤になることでコンプライアンス低下を招くといった弊害がある」と話す。患者が使い分けを面倒と感じるようでは治療継続が危ぶまれる。1剤をきっちり塗ってもらうようにしたい。

埼玉県済生会川口総合病院
皮膚科部長
加藤 卓朗氏

 水虫といえば「痒いもの」というイメージがあるが、実はそれは大きな間違いだ。「水虫は、痒みを訴えない患者の方が多い。水虫で痒みを訴えるのは1割程度というデータもある。痒みは、むしろ湿疹など水虫以外の疾患に多い」と常深氏は説明する。

 「水虫=痒い」というイメージが強いことが、様々な問題を引き起こしているともいえる。まず、痒くない水虫では、水虫と気づかれず放置されること。その結果、「難治化したり、爪白癬に進行して爪がぼろぼろになり、歩行が困難になるなどの問題にもつながる」と、長年、水虫治療に携わってきた順天堂大学練馬病院皮膚・アレルギー科教授の比留間政太郎氏は言う。痒みがなくても、皮がむけたり肥厚して亀裂があるなど、足底や指の間に異常があるとの訴えがあれば、足白癬を疑って早めに皮膚科を受診するよう促したい。

 反対に、「足が痒いので水虫だ」と自己判断してしまう患者も多い。しかし、足の痒みから「水虫ではないか」と訴えて受診してくる患者のうち、水虫でない患者の数は多いと、医師たちは口をそろえる。

 皮膚科では、視診に加えて、白癬菌がいるかを調べるKOH(苛性カリ)直接鏡検を行い、足白癬の診断をするのが一般的だ。具体的には、足の皮膚片をピンセットで取り、スライドガラスに載せて、苛性カリを主成分とする強いアルカリ性溶液で溶かして、顕微鏡で拡大して白癬菌を見つけ出す。「病変部を見ただけで水虫と診断するのは専門医でも難しい。必ず直接鏡検を行う」と比留間氏。

 その際に医師たちが困るのは、既に抗真菌薬を塗っているケース。患者は薬を塗っても良くならないといって受診するわけだが、抗真菌薬を塗っていると、検査をしても白癬菌が見つからないことになる。診断のために、抗真菌薬を塗るのをやめてもらって、後日改めて検査を行い、白癬菌が見つかれば水虫の治療を行うことになる。「結果として治療を始めるまでに時間がかかってしまう」と常深氏は説明する。OTCの水虫薬を求めて薬局に来た患者には、痒くても水虫とは限らないことや、先にOTC薬を使うことの弊害を説明し、まずは皮膚科を受診するように勧めたい。

薬は広めに十分に塗る

 「水虫=痒い」という誤解が、治療の邪魔をすることも少なくない。外用薬は痒い部位にだけ塗ればいいと思ったり、痒くなくなれば治療をやめてもいいという考えにつながったりするからだ。

 白癬菌は、痒みや病変を起こしていない部分にも感染していることが多い。そのため、抗真菌外用薬は、少し広めに塗布することが大切だ。ステロイド外用薬は、病変部に限局して塗布する必要があるが、それとは違うことを患者に伝えて、理解してもらうようにする。

 具体的には、足底全体と足の縁、指の間や上の部分、踵はアキレス腱あたりまでカバーするようにしっかり塗る(図1)。病変部が指の間に限られていても、「足の甲以外は全部塗るぐらいの気持ちで塗るように指導してほしい」と常深氏。また、症状が片足だけであったとしても、必ず両足に塗布するように指導しよう。症状がなくても感染している可能性が高い。

図1 抗真菌外用薬の塗布範囲

両足の足底全体と、指の間や上側、足縁、踵の上方まで、症状のないところも含めて、広く塗布する。

 もう1つ、薬の塗り方の注意点として、1回の使用量の目安を伝えることも大切だ(図2)。チューブに入ったクリームや軟膏の場合は、1FTU(Finger Tip Unit)が目安となる。1FTUは、外用薬を口径5mmのチューブから、成人の人さし指の先端から第1関節までの長さ分だけ出した量で、おおむね0.5gに当たる。1FTUは、成人の手のひら2つ分の面積に外用薬を塗布する量の目安とされている。足の場合は「片足=1TFU」が目安となる。チューブの口径によって量に差はあるが、「人さし指の第1関節までの長さを出して、片足に塗ってください」と言えば分りやすいので、目安にするには適当だ。

図2 1回の塗布量

軟膏やクリームは、「人さし指の第1関節分(1FTU)=片足分」を目安に使用する。

 1日に両足で約1gを使うことになるので、10日で10g入りチューブを1本、1カ月では3本を使用することになる。そのぐらいの量をきちんと使っているかを確認し、正しい塗り方を繰り返し指導するとよい。外用薬は単に「足にしっかり塗ってください」という漠然とした指導ではうまくいかない。量や範囲をできるだけ細かく説明するのがポイントだ。

痒くなくなってももう一踏ん張り

 抗真菌外用薬を塗布すれば、痒みを含めて症状は1~2週間程度で治まることが多い。

 しかし、そこで治ったと考えて治療をやめてしまうと、翌シーズンなどにぶり返すことになる。痒みや症状がなくなっても白癬菌は角質に潜んでいる。「足の症状がなくなり皮膚がきれいになってからも、冬であれば1カ月、夏なら2カ月程度は外用薬を塗り続ける必要がある」(常深氏)。患者には、治療継続の重要性を話し、自己判断でやめないように伝えよう。

 抗真菌外用薬を使っている患者が、「水虫が悪化した」と言って皮膚科に駆け込むことがある。しかし、「水虫が悪化した」というのは大きな誤解だ。「抗真菌外用薬を塗っているにもかかわらず水虫が悪化することは、白癬菌が活発に増殖する夏場であってもあり得ない」(常深氏)からだ。

 この場合、水虫が悪化したのではなく、外用薬による接触皮膚炎(かぶれ)を起こしている可能性が高い。ところが患者は、水虫がひどくなったと勘違いして、外用薬をそれまで以上に熱心に塗ってしまう。当然ながら逆効果だ。「状態が悪くなったときは、トラブルが起こっていると考え、すぐに薬の塗布を中止する必要がある」と比留間氏は指摘する。

 外用薬による接触皮膚炎は、基剤によっても起こるが、抗真菌成分や他の成分でも起こり得る。写真1は、OTC水虫薬によりかぶれたケースだ。多成分が含まれるOTC薬は、それだけかぶれるリスクも高まるが、処方薬であっても、病変部が悪化した場合には、外用薬の塗布をすぐにやめて連絡するよう、患者にあらかじめ話しておきたい。

写真1 OTC薬による接触皮膚炎
(提供:比留間氏)

順天堂大学練馬病院
皮膚・アレルギー科教授
比留間 政太郎氏

 爪白癬では、抗真菌内服薬による治療が行われる。内服薬は、足白癬、爪白癬の全ての病型に有効だが、外用薬でも治癒可能な足白癬では、全身性の副作用がないことや経済的に安価であることなどから、外用薬による治療が中心となる。ただし、足白癬であっても、角質増殖型は難治性のものが多く、内服薬による治療が必要となることが多い。また、患部が広範囲にわたっていたり、再発を繰り返したりするケースなどには内服薬が用いられることがある。

 現在、日本で使われている抗真菌内服薬は、テルビナフィン塩酸塩(商品名ラミシール他)とイトラコナゾール(イトリゾール他)の2種類だ。テルビナフィンは、爪白癬と足白癬ともに1日125mg(分1)を連日投与する。一方、イトラコナゾールの場合は、爪白癬にはパルス療法(1日400mg[分2]の1週間連続投与後3週間休薬を3回繰り返す)を行い、足白癬には1日50~100mg(分1)を連日投与する。このように、病態や薬剤によって用法・用量が異なることに注意したい。

 このほか、テルビナフィンは肝機能障害や血球減少などの重篤な副作用があり、死亡例も報告されている。しかし併用禁忌の薬はない。一方のイトラコナゾールは重篤な副作用は少ないが、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4で代謝されるため、CYP3A4で代謝される薬物との相互作用に注意が必要だ。また、治療にかかる時間や費用も異なり、どちらも一長一短だ。(表2)「これらを患者に説明して、どちらの薬剤にするか、選んでもらう」(加藤氏)ことが多いようだ。

 ちなみに、どちらの薬剤も後発医薬品が出ている。特に経済的な負担が大きいイトラコナゾールでは、後発医薬品の使用を検討したいところだ。しかし、イトラコナゾールは、消化液に溶けにくく、吸収性が低い。先発品であるイトリゾールは、製剤学的工夫を施して吸収を高めている。その技術が先発品と後発品では違っており、後発品では効果が低い可能性がある。常深氏は「後発品が全て悪いというのではなく、きちんと理解して使い分けるべき」と話している。

表2 ラミシールとイトリゾールの爪白癬治療(加藤氏による、一部改変)

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東京女子医科大学
皮膚科講師
常深 祐一郎氏

 一般に、ステロイドには免疫抑制作用があるため、真菌や細菌、ウイルスに感染しやすくなることから、皮膚感染症の治療には使用しないとされる。しかし、「病変部がじゅくじゅくと湿潤していたり、ひどいびらんがある場合には、その治療が優先される」と常深氏。ダメージを受けている皮膚は、抗真菌薬を塗ると刺激を受けてさらに悪化しやすい。まずステロイド外用薬を1~2週間塗布し、炎症が治まって状態が改善してから、抗真菌薬による水虫治療を行うことになる。また、足のコンディションが悪くて、じゅくじゅくした水虫が治りにくい患者の場合、ステロイド外用薬と抗真菌内服薬を併用することもある。

 皮膚科医の間では、「じゅくじゅく水虫にステロイド外用薬」は常識だが、薬剤師の間では案外知られていない。医師に疑義照会したり、患者に「足に塗るように指示がありますが、水虫などがある場合はその部分には塗らないでください」と、わざわざ処方意図と逆の説明をしてしまう薬剤師もいるという。「水虫にステロイド外用薬が出ることがあると認識して、適切な指導をしてほしい」と常深氏は言う。

 水虫の患者には、家族や周りの人にうつさないようにするための生活指導も併せて行いたい。「感染予防は、(1)患者が白癬菌をまき散らすのを抑える、(2)環境中の白癬菌を減らす、(3)足への菌の付着、増菌、発症を防ぐ─の3つの観点から考えると分かりやすい」と加藤氏は説明する。

 (1)については、患者がきちんと水虫の治療を行うことが重要だ。抗真菌外用薬を使うことで白癬菌の散布はずいぶん抑制される。患者が、家の中では靴下を履いて過ごすことでも菌の散布抑制につながる。

 環境中の白癬菌を減らすには、足拭きマットやスリッパなど、直接患部に触れるものを清潔に保つよう心掛けたい。洗濯したりぞうきんなどで拭くのが望ましいが、掃除機による掃除やほうきで掃くなどでも、菌量が減るとされている。

 マットやスリッパに付着した白癬菌は、洗濯したり布で拭くだけでほとんど落ちるため、患者が履いた靴下と家族のものとを一緒に洗濯しても何ら問題はない。

 患者が使ったマットなどを消毒する必要もない。消毒用エタノールなどの消毒薬は、真菌に対する殺菌効果があるため、意味がないわけではないが、「安全性や経済性を考えると、そこまでやる必要はない。普通に洗濯や掃除をすれば十分に感染は予防できる」と加藤氏。清潔を保つことは大切だが、神経質になって特別なことをする必要はないといえる。

 足への菌の付着を防ぐには、例えば水虫に罹患していない人が靴下を履いて過ごすといった方法が考えられる。ただ、同じ家の中に水虫の患者がいると、菌の付着を完全に防ぐことは難しい。そこで菌を落とすことを考えたい。白癬菌が付着したからといって、すぐに感染するわけではない。健康な足であれば、白癬菌が付着してから角質に侵入するまでには24時間程度かかるという報告があり、「毎日の入浴時に足を洗えばよい」(加藤氏)ことになる。その際には、指の間もしっかり洗うようにしよう。

 白癬菌の増殖を防ぐには、足拭きマットやスリッパなどを清潔にすること、サンダルなどの通気性の良い履き物を履くなどして足が蒸れないようにするなどが有効だ。安全靴やブーツなどは蒸れやすいので、できるだけ避けたい。また、履き物は脱いだ後、乾燥させるようにするとよい。

 「足を清潔に」と言われると、ごしごしと洗う人がいるが、こすり過ぎると角質が傷つき、白癬菌に感染しやすくなる。石鹸でやさしく洗うことが勧められる。また、健康サンダルも、角質の肥厚や傷の原因になる。「水虫の予防の観点からは良くない」(加藤氏)。角質を傷つけないように注意することが大切だ。

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