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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)潰した錠剤の異臭が気になる在宅患者の家族
日経DI2012年6月号

2012/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年6月号 No.176

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(1)オルメテック(一般名オルメサルタンメドキソミル)

A2

(1)ジアセチル

 脳梗塞の再発を予防するためには、血圧の管理が重要である。血圧の管理には複数の降圧薬が組み合わされて処方されることが多いが、OさんにもアンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬(ARB)のオルメサルタンメドキソミル(商品名オルメテック)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のイミダプリル塩酸塩(タナトリル他)、β遮断薬のビソプロロールフマル酸塩(メインテート他)の3種類が処方されている。これら3剤の剤形は錠剤のみであるため、Oさんのように嚥下が困難な患者に対しては、粉砕して服用させることが多い。

 錠剤をそのまま、あるいは粉砕して分包すると、分包紙を開けたときに臭いが気になることがある。上記3剤の中で臭いに関する訴えがしばしばあるのは、オルメサルタンメドキソミルである。

 オルメサルタンメドキソミルは、イミダゾール環カルボキシル基をエステル化したプロドラッグである。経口投与後、腸管や肝臓、血漿で加水分解され、活性代謝物のオルメサルタンに変換される。オルメサルタンは血圧の上昇に関与するAIIタイプ1(AT1)受容体に選択的に作用してAIIの結合を競合的に阻害し、血管組織レベルにおいてAT1受容体を介したAIIの血管収縮反応を抑制することにより、降圧作用を示す。オルメサルタンは主に胆汁を介して糞中排泄される。この薬剤は1日1回投与で、食事による影響をほとんど受けないとされている。

 このオルメサルタンメドキソミルが、活性代謝物であるオルメサルタンに変換される際、CO2とジアセチルが発生する。ジアセチルはさらに、アセトインを経て2,3-ブタンジオールへと分解される。

 これらの分解物のうち、ヨーグルトのような臭いを持つのはジアセチルである。ジアセチルはもともと体内にもある物質であり、特に血圧に関与するわけではない。また、その香りは乳酸発酵で製造する乳製品に独特の風味を与えるが、一方で酒類などアルコール発酵で製造する飲食品にとっては好ましくない異臭とされる。濃度によっても異なるが、人によって好き嫌いがあり、異臭と感じる人もいるようだ。

 ジアセチルが発生しても薬剤の安定性および有効性に問題があるわけではないが、揮発成分なので、分包して時間がたつほど、分包紙を開けたときの臭いが強くなると考えられる。そのため、特に臭いが気になるという人に対しては、服用する直前にPTPシートから出して粉砕するようアドバイスするとよいだろう。

 なおジアセチルは、メトホルミン塩酸塩やカモスタットメシル酸塩などが有するグアニジノ基と高温多湿条件下で反応し、薬剤が変色することが明らかになっている。そのため、オルメサルタンメドキソミルをメトホルミン塩酸塩などと一包化することは避ける必要がある。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 お義父様がむせ込むことが多くなって、ご家族で食事やお薬の服用を工夫されていらっしゃるのですね。

 お義母様が、お薬の包みを開けたときの臭いが気になるとおっしゃっているのは、処方されている3つの薬のうち、オルメテックだと思います。オルメテックから出る、ジアセチルという成分はヨーグルトのような臭いがします。ジアセチルは、人間の体にもある成分で、有害な作用を持つものではありません。臭いが出たからといって、お薬の効き目に影響はありませんのでご安心ください。

 脳梗塞の再発を予防するためには血圧のコントロールが重要なので、血圧のお薬は続けてください。お義父様に処方されているお薬には錠剤しかありませんので、飲みやすいように潰して粉状にする必要があります。

 お義母様が「臭いがどうしても嫌だ」とおっしゃるようでしたら、私どもで粉砕してお渡しするのではなく、ご自宅でお義父様に飲んでいただく直前にシートから出して潰していただければ、臭いが弱くなると思います。いかがいたしましょうか。

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