DI Onlineのロゴ画像

患者指導ワンポイントレッスン
Lesson5 とびひのケア
日経DI2012年6月号

2012/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年6月号 No.176

 伝染性膿痂疹(のうかしん)は、火事の飛び火のようにあっという間に広がることから、俗に“とびひ”と呼ばれる。水疱ができてびらんを作る水疱性膿痂疹と、炎症が強く痂皮が厚くなる痂皮性膿痂疹の2つに大別される。

 とびひの多くを占める水疱性膿痂疹は、黄色ブドウ球菌が感染し、菌が産生する表皮剥脱毒素(exfoliative toxin)が皮膚を侵すことによって起こる。病変部の水疱は簡単に破れてびらんを作るが、水疱内容液やびらんからの滲出液に表皮剥脱毒素が含まれるため、これが皮膚に付着して病変が広がる。乾燥して痂皮を形成すると感染力は弱まる。乳幼児に好発し、初夏から真夏に多く発症するが、最近は他の季節でも見られている。

 特に鼻前庭(鼻孔の入り口)には様々な細菌が常在しているため、鼻をほじる癖があると、鼻孔の周囲からとびひになりやすい。また、その手であせもや虫刺されの部分を掻くことで、とびひになることも多い。

 一方、痂皮性膿痂疹の原因菌はA群β溶血性レンサ球菌である。アトピー性皮膚炎などに合併することが多く、急速に発症する。季節に関係なく、小児より成人に多く見られる。

耐性菌の感染を念頭に

 軽症のとびひ(病変が1カ所で子どもの手のひらのサイズまでが目安)は、フシジン酸ナトリウムやテトラサイクリン系の抗菌薬の外用薬(軟膏)で治療する。病変が大きい、または複数の病変が見られる場合には、外用薬に加えて抗菌薬の内服が必要である。また、痒みが強いときには抗ヒスタミン薬を内服させて掻破しないようにする。

 近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるとびひが増え、治療に難渋する例が増えている。耐性菌の存在を常に念頭に置き、抗菌薬を使っても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は再受診するよう、薬局でも指導してほしい。

救急絆創膏やテープは禁忌

 軟膏を塗る際は、滲出液を広げないように、びらんの周囲から内側に向かって塗るようにする。そして病変部を覆う際には、面積が小さくても救急絆創膏は使用せず、ガーゼで覆う。ガーゼを固定する際もできるだけテープが肌に触れないようにしたい。これは、救急絆創膏やテープが接触した部分にとびひが広がりやすいためだ。手足であれば、ガーゼをぐるりと巻くようにするとよい。びらんからの滲出液の量は多くないが、外へ染み出ないくらいの厚さのガーゼを当てる。ガーゼは1日2回程度交換する。軟膏を少し厚めに塗るとガーゼを剥がしやすく、痛みが少ない。

 発熱などの全身症状がない限り、入浴して皮膚を清潔に保つべきである。湯船には入らず、シャワーを使って、泡立てた石鹸で病変部をやさしく洗い、石鹸分をよくすすぐ。痂皮は無理に取る必要はないが、除去できるものは洗い流す。兄弟姉妹がいる場合は、患児を最後に入浴させるとよい。

プールは完治するまで禁止

 とびひは学校感染症に分類されている。病変部を処置してあれば、保育園や幼稚園、学校を休む必要はない。ただし病変が広範囲の場合や、発熱など全身症状のある場合は休ませる。プールの水を介してうつることはないが、自分の病変を悪化させたり、他人に接触してうつしたりする恐れがあるため、完全に治るまで(乾燥して痂皮が取れるまで)プールは禁止する。

 とびひは細菌による疾患であるため免疫は成立せず、皮膚のバリアが弱い小児では何度もかかる。再発を予防するためには、手洗い、爪を短く切る、鼻をほじらないよう言い聞かせることなどが重要である。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ