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薬の規格単位を比べて薬効強度を誤解
日経DI2012年6月号

2012/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年6月号 No.176

 薬の規格単位(1錠当たりの主薬の含量)が関係したトラブル事例で最も多いのが、これまで処方されていた薬と新たに処方された薬の包装などに記載された数字を比較して薬の強さを判断してしまうことである。

 実際は、同様の薬効を有する薬剤でも、単位重量当たりの薬効強度が10倍以上異なる例は少なくない。患者が新しい薬を正しく理解していないと、「薬が強過ぎるのではないか」「処方や調剤が間違っているのではないか」など処方に疑問を持ち、自己判断で服薬を中止したり、服用量を変えたりすることがある。

 今回は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システム「アイフィス」や、全国薬剤師から寄せられた事例の中から、薬の規格単位などが関係した患者のトラブルの実例を紹介する。

 なお、筆者らが収集した服薬指導におけるヒヤリハット・ミス事例などは無料で閲覧が可能である。入会申し込みは、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターのウェブサイト「アイフィス(薬剤師)」コーナーから(http://www.iphiss.jp/i-phiss/i-phiss.html)。

弱い軟膏と考え倍量塗布

 本ケースは、副腎皮質ステロイド外用薬であるロコイド軟膏とアンテベート軟膏は薬効成分が異なり、薬効の強さも異なるということを患者が理解していなかったために生じたトラブルである。

 ロコイド軟膏の有効成分であるヒドロコルチゾン酪酸エステルは、ステロイド外用薬の薬効による強弱分類においてmedium(中等度)に分類されている。一方、アンテベート軟膏の有効成分であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルは、very strong(かなり強力)に分類されている。しかし、患者は薬の規格単位の1g中1mg(0.1%)と1g中0.5mg(0.05%)という数字だけを見て薬効の強弱を判断してしまった。

 このようなトラブルを防ぐために、薬剤師は処方変更時に次のように説明すればよかった。「今回は、これまで使用してきたロコイド軟膏よりも作用の強いアンテベート軟膏が処方されています。アンテベート軟膏には、ロコイド軟膏より強い成分が入っています。成分が違うので、お薬のチューブに表示されている有効成分の数字と薬の強さは関係ありません。先生の指示通り、1cm程度を塗ってください」。

自己判断で“強い薬”の服用中止

 初めて睡眠薬が処方され、しかも1度に2種類の薬が出されたが、その違いや服用方法を患者が理解していなかったために起こったトラブルである。

 睡眠薬に限らず、1つの疾患に対して複数の薬が処方された患者に対しては、それらの薬剤の違いを患者が十分に理解しているかを確認しながら服薬指導する必要がある。

 今回のケースで薬剤師は次のように患者に説明すればよかった。「ロゼレムとレンドルミンはともに睡眠薬ですが、全く違う成分の薬です。ロゼレムの1錠は8mg、レンドルミンの1錠は0.25mgとなっていますが、この数字は薬の強さを表しているのではありません。先生の指示通りにロゼレムを毎日飲んで、それでもよく眠れないときにレンドルミンを飲むようにしてくださいね」。

用量と賦形の変更で混乱

 散剤の処方において、用量や賦形方法が変わる場合には、患者に分かりやすく説明する必要がある。このケースにおいては、服用する薬剤の見かけの量は同じだが、有効成分の含有量が増えていることを患者に理解させるべきであった。

 今回のケースで薬剤師は次のように患者に説明すればよかった。「前回までは薬の量が少なかったので、飲みやすくするために乳糖でかさを増やしていました。今回は薬の量が増えたため、かさを増やす必要がなくなりました。今回お渡しするお薬は、見かけの量は前回までと同じですが、医師の指示通り、メジコンの量は増えています。安心して服用してください」。

(東京大学大学院教授 薬学系研究科
医薬品情報学講座・澤田康文)

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