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新薬の特徴やエビデンスが多数追加
日経DI2012年5月号

2012/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年5月号 No.175

 世界保健機関(WHO)の定義によると、骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大して骨折リスクが増す疾患である。骨粗鬆症による骨折は、脊椎の圧迫骨折である椎体骨折の頻度が最も高く、大腿骨近位部や橈骨遠位端でも生じやすい。

 日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団から成る「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」作成委員会は2011年12月、同ガイドラインを5年ぶりに改訂した。本稿では、改訂のポイントを中心に、骨粗鬆症治療の概況を解説する。

骨粗鬆症の成因と治療開始基準

 骨では、破骨細胞が骨を破壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作る(骨形成)というリモデリング(骨代謝回転)が起こっている。正常な骨ではこのバランスが保たれているが、加齢や閉経などによってそのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると、骨密度の低下を引き起こす。

 従来、骨折の危険因子は骨密度の低下であると考えられてきた。だが近年、骨強度は骨密度と骨質の2つの要因から成ることが明らかになっている。さらに骨折リスクの増大には、家族歴や生活習慣といった多数の因子が関与することも分かってきた。

 そのため、新ガイドラインでは、骨粗鬆症の薬物治療開始基準が見直され、従来の骨密度や脆弱性骨折の有無を含む複数の危険因子を総合的に加味し、骨折リスクを評価することが提唱された。その評価ツールとして、WHOが開発した「FRAX」を採用している点が特徴である。

 FRAXでは、骨密度のほか、年齢、性別、BMI、骨折歴、現在の喫煙や経口ステロイド投与の有無、関節リウマチの現病歴といった11項目の危険因子を基に、今後10年以内の骨折確率(%)を算出する(http://www.shef.ac.uk/FRAX/)。新ガイドラインでは、脆弱性骨折がなく、骨密度が若年成人平均値(YAM)の70%以上80%未満の場合に、FRAXによる骨折確率が15%以上であれば薬物治療を開始することが提唱された。

骨粗鬆症の薬物療法

 現在、骨粗鬆症治療に使用されている薬剤を表1に示す。新ガイドラインでは、この数年間に発売された新薬を含め、薬効分類ごとに特徴やエビデンスレベルが明記されている。

表1 骨粗鬆症に使用される主な薬剤

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 中でもビスホスホネート製剤は、骨密度上昇効果と骨折抑制効果についてエビデンスがあり、骨粗鬆症治療の主流となっている。経口薬のビスホスホネート製剤には、従来の1日1回、1週1回製剤に加え、11年9月に登場した4週1回製剤(一般名ミノドロン酸水和物)もある。いずれも投与後30分間は横になってはいけない、水以外の飲食物の摂取を避けるといった服薬上の制約がある。また、これらの制約のない点滴投与型のアレンドロン酸ナトリウム水和物(商品名ボナロン点滴静注バッグ900μg)が、骨粗鬆症を適応症として近く発売される。

 なお、ビスホスホネート製剤では、長期間の服用に関連するとみられる顎骨壊死が報告されている。発生頻度は極めて低いが、口腔衛生状態を良好に保つよう指導することが重要である。ガイドラインでは、ビスホスホネート製剤を服用中に侵襲的歯科治療が必要となった場合、医師と歯科医師が、服用期間の長さと顎骨壊死の危険因子(飲酒・喫煙、口腔内の衛生不良など)、骨折リスクを勘案して、休薬の必要性を判断するよう提案している。

 一方、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤は、標的細胞の細胞膜受容体と結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化することで、前駆細胞から骨芽細胞への分化を促進したり、骨芽細胞のアポトーシスを抑制したりして、骨形成を促進する。ガイドラインでは、ビスホスホネート製剤や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などによる治療でも骨折を生じた患者、高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた患者、骨密度が著しく低下した患者などに対して、PTH製剤の使用を推奨している。

 現在、わが国で臨床使用されているPTH製剤には、1日1回自己皮下注射製剤のテリパラチド(フォルテオ)と、1週1回皮下注射製剤のテリパラチド酢酸塩(テリボン)がある。安全性の観点から、延べ投与期間がフォルテオは24カ月、テリボンは18カ月と制限されている点に留意しておきたい。

 なお、従来の骨吸収抑制薬を中心とした骨粗鬆症治療薬の選択肢に、骨形成促進薬のテリパラチドが加わったことを受け、骨代謝回転の状態に基づいて治療薬を選択する重要性が増している。新ガイドラインには、骨粗鬆症に保険適用されている骨代謝マーカーとして、骨吸収マーカーの酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP-5b)、骨形成マーカーのI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP[ECLIA法は保険適用外])、骨マトリックス関連マーカーの低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)についての記述が加えられた。こうした骨代謝マーカーは、治療効果の評価や、患者に対する服薬の動機付けにも有用とされる。

 骨粗鬆症の薬物治療では、治療開始から1年で45.2%が処方通りに服薬できなくなり、5年以内に52.1%が脱落してしまうとの報告がある。服薬コンプライアンスを低下させる要因として、多剤併用、ADLの低下、喫煙などが指摘されている。

 ガイドラインによれば、服薬コンプライアンスを向上させる最も効果的な方法は、薬剤師を含む医療従事者が連携し、服薬の重要性を繰り返し患者に訴えることである。長期にわたってフォローを続ける上で、薬剤師が果たす役割は極めて大きいといえるだろう。

(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部
北村 正樹)

参考文献
1)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』
2)北村 正樹.耳鼻咽喉科展望2008;51:124-6.

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