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医師が語る 処方箋の裏側
プリンペランなどが無効の癌患者の吐き気にセレネース
日経DI2012年5月号

2012/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年5月号 No.175

 2年前に胃癌を手術した澤田富子さん(仮名、72歳)は、再発して腹膜播種を起こし、通院が困難となって今月の初めから在宅療養を始めた。現在は、オピオイドによる疼痛緩和が中心だ。その彼女が自宅に戻ってほどなく、「吐き気がして夜、眠れない」と訴えた。

 嘔気・嘔吐は、進行癌の患者さんによく見られる症状だ。腹膜播種による消化管閉塞が原因のことが少なくないため、画像検査を行ったが閉塞はなかった。そこで消化管蠕動の低下を疑い、消化管蠕動を亢進させる作用を持つプリンペラン(一般名メトクロプラミド)とナウゼリン(ドンペリドン)を順に投与したが、いずれも効果がなかった。

 そんなときに私がよく使うのが、抗精神病薬のセレネース(ハロペリドール)だ。同薬は、ドパミンD2受容体を遮断して制吐作用を示す。適応外だが、癌患者の吐き気止めとしてよく使われる。特に、抗癌剤やオピオイド導入時に起こる吐き気に使用されることが多いが、消化管蠕動の低下による吐き気や原因が特定できない吐き気にも、よく効くことが多い。

 ただしセレネースは、眠気が強く出ることがあるため注意が必要だ。また、副作用として薬剤性パーキンソニズムやアカシジアなど錐体外路症状が出ることがある。従って、最初は1mgを睡眠前に服用するように指示するが、しばらく服用を続けて症状が治まってくれば、頓用にすることがほとんどだ。服用後1~2時間以内に効果を発現するので、「早く楽になる」と患者さんから喜ばれることが多い。澤田さんにもよく効いて、飲み始めた日からぐっすり眠れるようになった。

 今では、澤田さんにも「吐き気がないときには飲まなくてもいい」と伝えてある。服用しない日が多く、食事もしっかり取れているようだ。(談)。

清水 政克氏
Shimizu Masakatsu
1997年三重大学医学部卒業。神戸大学病院総合診療部などを経て、2006年よりみどり病院内科・緩和ケア内科。外来診療を行うかたわら訪問診療にも力を入れており、神戸在宅ホスピスネットワークの副代表として、地域医療連携に尽力している。

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