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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:濃度の違う抗菌薬の点眼剤(A)
日経DI2012年5月号

2012/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年5月号 No.175

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(3)1回1滴、1日3回点眼

A2

(4)ほぼ同額

 結膜炎は、眼脂(目やに)、掻痒、流涙、異物感、眼痛などを主訴とし、結膜の充血、浮腫を伴う眼疾患である。細菌性、ウイルス性、アレルギー性、クラミジア性などの原因を鑑別して治療を行う。

 細菌性結膜炎の起炎菌は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などブドウ球菌属のほか、肺炎球菌、インフルエンザ菌などの頻度が高い。点眼薬としてニューキノロン系薬、アミノグリコシド系薬などが処方されることが多い。

 Kさんに処方されたクラビットは、ニューキノロン系抗菌薬のレボフロキサシン水和物を有効成分とする点眼薬である。2000年4月に0.5%点眼液が発売され、外眼部感染症および周術期の無菌化療法に対して最も汎用される抗菌点眼薬の一つとなっている。2011年6月には、高濃度製剤として従来の3倍の濃度の1.5%点眼液が発売された。

 高濃度製剤が発売された背景には、近年の体内動態(PK)/抗菌活性(PD)理論の知見が蓄積されたことがある。

 抗菌薬の有効性は、薬剤のPK/PDパラメーターと相関することが分かっている。PK/PDパラメーターには、(1)血中濃度が最小発育阻止濃度(MIC)を超えている時間(time above MIC:TAM)、(2)最高血中濃度(Cmax)とMICの比 、(3)血中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)とMICの比─の3つがある。

 レボフロキサシンなどのニューキノロン系薬の殺菌作用は濃度依存的に認められ、(2)のCmax/MICと(3)のAUC/MICの値が大きいほど効果が高くなる。

 Cmax/MICやAUC/MICの値を大きくするには、1回当たりの用量を増やせばよい。また、有効性の観点のみならず、耐性菌出現抑制の視点からも、高用量・短期間投与が奨励されるようになっている。

 内服薬であれば、1回当たりの用量を増やすことは難しくないが、点眼液はヒトの眼に1滴以上は入らない。そのため、点眼液で1回当たりの薬剤量を増やすためには、高濃度製剤にする必要があるのである。

 実際、0.5%点眼液と1.5%点眼液では、CmaxとAUCはどのくらい違うのだろうか。ウサギの右眼に1.5%点眼液を、左眼に0.5%点眼液を単回投与した実験において、1.5%点眼液の房水および角膜におけるCmaxは、0.5%点眼液に比べ約3~4倍の増加を示し、眼球結膜および眼瞼結膜では約5~6倍の増加が見られた。また角膜、眼球結膜、眼瞼結膜および房水における0~8時間までのAUCも、1.5%点眼液は0.5%点眼液の3~4倍増加していたと報告されている。

 ただし、単回投与後の角膜での消失半減期は1.5%点眼液で1.43時間、0.5%で1.70時間と大きな差がなかった。そのため、1.5%点眼液の用法・用量は、0.5%と同様に1回1滴、1日3回となっている。

 なお、薬価は0.5%が116.90円/mL、1.5%が118.20円/mLと、ほぼ同額である(薬価は2012年4月2日現在)。

参考文献
1)小林寅哲 他,あたらしい眼科 2006:23.237-43.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 今回処方された目薬は、Kさんがおっしゃるように、前回処方された目薬に比べて3倍の濃度がありますが、前に処方された目薬が効かなくなったわけではありませんので安心してください。

 最近の研究によって、このお薬は高い濃度で短い間使う方が、より効果が高く、お薬が効かない菌が出てくるのを防ぐのにも有効だと分かって、高濃度の目薬が発売されたのです。新しい目薬は、濃度は高くなったのですが、眼からなくなる速さは前の目薬とほぼ同じなので、前回と同様に1日3回点眼してください。

 点眼のとき、容器の先端が直接目に触れないように注意してくださいね。なお、濃度が高くなっても、お薬の値段はそれほど変わりません。

 濃度にかかわらず、このお薬が効かない菌もいるので、目薬を差していても症状が改善しないときには、すぐに受診して先生に相談してくださいね。

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