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Interview
三浦洋嗣氏
日経DI2012年5月号

2012/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年5月号 No.175

 中央社会保険医療協議会(中医協)の薬剤師を代表する委員として、調剤報酬改定に携わった日本薬剤師会常務理事の三浦洋嗣氏。同氏にとって2度目となる今回の調剤報酬改定は、薬剤師にとってどんな意味を持つのか。そして薬局はどう変わっていくのか。改めて話を聞いた。(聞き手は本誌副編集長、北澤 京子)

Hirotsugu Miura 東北薬科大学薬学部卒業。病院勤務などを経て、95年にサンレイク調剤薬局(北海道恵庭市)を開局。日本薬剤師会では2008年より現職。北海道薬剤師会副会長。

─今回の調剤報酬改定をどのように見ていますか。

三浦 前回の改定以降、2年間にわたって中医協で議論をしてきました。全体的には、医療をめぐる環境が厳しくなる中で、診療報酬点数の整理・合理化を進めないといけないという雰囲気がありました。昨年12月に改定率(本体+1.38%、調剤は+0.46%)や基本方針が決まり、それに沿った形で具体的な改定をまとめました。

 薬剤師の立場では、「在宅」と「後発医薬品」の2つが、改定の大きな柱だと思います。さらに、薬歴が国民から分かりにくいという指摘がありましたので、「薬歴の“見える”化」というのが3番目の柱です。

─薬歴の“見える”化は、薬剤師の“見える”化にもつながりますか。

三浦 そうだと思います。薬剤師はこれまでも、薬歴を活用してきました。薬歴には、どんな薬が出たかだけでなく、どういう状況で出たのかも全部書いてあります。患者さんに薬の説明をする際も、これまでの経過を踏まえてお話をすると、安心していただけます。

 ただ、残念ながら薬歴については、患者さんに十分理解していただいてはいません。今回の改定では、薬剤服用歴管理指導料が見直され(処方箋受け付け1回当たり30点→41点)、お薬手帳の記載や後発品の情報提供なども、全て薬歴の中に含めることになりました。お薬手帳は、言ってみれば患者自身が持つ薬歴ですから、一体化したわけです。

 昨年の東日本大震災で、お薬手帳の有用性が改めてよく分かりました。しかし一方で、お薬手帳をご存じない方もまだたくさんいらっしゃいます。私としては、国民の皆さんに、なるべくお薬手帳を携帯していただくようお願いしていきたい。中でも小児、複数の医療機関にかかっている方、多種類の薬を飲んでいる方は、ぜひお薬手帳を活用していただきたい。お薬手帳のメリットを伝えるのは、薬剤師の役目です。

─ですが現実には、患者の多くはそれぞれの医療機関の門前薬局を利用しており、1冊のお薬手帳で薬をまとめて管理することができていません。

三浦 分業の進展はいわゆる門前薬局の展開と相関関係があり、お薬手帳もそれぞれが発行してきた経緯もありますが、1冊にまとめるようお願いしているところです。かかりつけ薬局という点で言えば、今回の改定の重点課題の一つでもある在宅医療(在宅患者調剤加算、処方箋受け付け1回につき15点)が進むことにより、状況は変わってくると思います。薬剤師が患者さんの自宅を訪問してお話しする機会が増えると、患者さんの側も、自宅近くの薬局を一つ決めてかかりつけ薬局にしよう、ということになるはずです。

 薬局の薬剤師が患者さんの自宅に薬を届けることは、現在でも結構多いと思います。玄関先で患者さんやご家族と話をするうちに、患者さんのお薬箱を見せてもらうことになり、飲んでいない薬がどっさり見つかることはよくあります。その時に、薬を整理するとか、薬による副作用を疑って医師に報告するといった、薬剤師が患者さんの役に立ち、なおかつ医療費の削減にもつながることができないかと思うのです。

 日薬では「在宅療養推進アクションプラン」を作成し、薬剤師の在宅への取り組みを支援しています。今後、在宅を上手に進めているところ、逆にそうでないところが出てくると思います。そうした実態をきちんと把握した上で、次回の改定までに、どうすればよいのかを具体的に提案できるようにしていきたいと思っています。

─後発医薬品の使用促進の観点から、一般名処方の増加についてはどのようにお考えですか。

三浦 薬剤師はずっと前から、一般名処方を要望してきました。今回、処方箋料に加算(一般名を記載した処方箋の交付1枚当たり処方箋料に2点加算)が付いたことは、薬剤師にとって決してマイナスではないと思います。一般名で処方された薬に関しては、具体的な薬の選択を薬剤師が担うことになるわけですから、薬剤師の裁量が増すことになります。

 薬剤師が薬を選択する基準としては、まずメーカーからの情報提供がきちんとなされているか、流通の面では安定供給ができているか、さらには価格があります。価格だけを見て安い方を選ぶのは誰でもできます。情報を読み込んだ上で判断を下すのが薬剤師の仕事です。

 ただ初めのうちは一般名に慣れていないため、調剤ミスを起こさないよう、現場は大変だろうと思います。医療機関には経済的なインセンティブが働いていますので、配合剤など、本来は一般名処方に向いていない薬であっても、一般名で記載されているケースがありますから。

 一般名処方については、実際にどの薬を調剤したか、薬剤師は処方医に情報提供することになっています。基本的には、処方医に1度連絡を取って、電話で連絡するか、ファクスを送るか、それともお薬手帳への記載で構わないかを確認しておけばよいのです。後発品に変更調剤する際に、従来から薬剤師がやってきたことですね。

─前回の改定を受けた本誌のインタビュー(2010年3月号)で、「次回の改定では薬剤師の裁量の範囲を少しずつ増やしたい」と語っておられましたが、実現できましたか。

三浦 3本柱には入れませんでしたが、病院薬剤師の病棟常駐化(病棟薬剤業務実施加算、入院患者1人当たり週1回100点)は、一歩前進だと思います。

 実際に見学させていただいた病院では、病棟に薬剤師が常駐するようになってから、薬剤師と患者さんとの関わり合いがとても増えたんですね。例えば、抗癌剤の使用などで精神的に落ち込んでしまった患者さんがいた場合、薬剤師がそれをキャッチして、カンファレンスの場で他の医療スタッフと情報を共有し、対策を立てる。そんな取り組みを続けていくと、薬のことは薬剤師に相談しようと、患者さんを含めて周囲が思うようになるわけです。

 すると当然ながら、退院後も薬のことは薬局の薬剤師に相談するようになってきます。病院薬剤師だけではなく、薬局薬剤師にもつながることなのです。

─今回の調剤報酬改定を踏まえて、薬局の薬剤師に何を期待しますか。

三浦 医薬分業を国民に理解していただくには、病気になったときに「薬局の薬剤師から薬をもらって良かった」と実感してもらえるよう、一人ひとりの薬剤師が努力することに尽きると思います。だから、個々の薬剤師の責任は重いんです。

 多くの人の意見を聞いて、仕組みをつくるところまでは日薬がやります。それを具体的に実行するのは、現場の薬剤師です。むしろ、現場はちゃんとやっているから、日薬はこういうこともやってくれ、こうしてくれればもっと良くなる、と、どんどん声を上げていただきたいと思っています。

インタビューを終えて

 今回の改定では、基準調剤加算の施設基準に開局時間の要件が新たに盛り込まれました。その背景には、中医協の場で「近隣の医療機関が昼休みを2時間取っている場合に、薬局の昼休みも全く同じ2時間というのは、国民の目から見てどうなのか」と指摘されたことがあります。ただ、開局時間については様々なケースが考えられ、「セーフ」か「アウト」かの判断に悩む薬局もあるのではないでしょうか。三浦氏は厚生労働省に対して、地方の厚生局間で判断が異なることのないよう、注文を付けたそうです。(北澤)

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