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薬剤師よ、兵(つわもの)たれ。
日経DI2012年5月号

2012/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年5月号 No.175

 早いもので、東日本大震災から1年がたつ。あの惨劇がいまだ記憶に残るなか、東京大学地震研究所のグループがまとめた衝撃的な研究結果が大きく報道された。

 なんでも、都心を含めた関東南部でマグニチュード7クラスの大地震が発生する確率は、4年以内で約70%に上るのだという。政府の地震調査研究推進本部ではこれまで30年以内で70%としていたが、同グループでは東日本大震災の余震を含めて計算したところ、このような結果になったとしている。

 ここで重要なのは、「いつ来るか」ではなく、「いずれ必ず来る」ということだ。日本の中心部たる関東南部で大震災が発生すれば、大混乱は必至だ。当然そのような状況を想定し、われわれ薬剤師も準備をしておく必要があるだろう。1年がたった今だからこそ、この場を借りて改めて問いたい。もし薬局で仕事をしている時、営業の続行が困難なほどの大震災に見舞われたら、薬剤師たるあなたはどう動くのか? その心構えはできているだろうか?

 この場合、もし正解と呼べるようなものがあるとしたら、まずは避難所へ駆けつけるというのがベターであると筆者は考える。避難した人たちが続々と集まってくるなかで、薬剤師としてできることは、探せばきっとあるはずだ。また避難所に行くことをあらかじめ決めて普段から周囲に伝えておけば、後で本人の所在確認がしやすいというメリットもある。

 なかには、薬局を運営する会社上層部とか薬剤師会からの指示を待てばいいと考えている人がいるかもしれない。だがそれは、連絡手段が確保されていればの話である。いざという時にケータイというものがいかに脆弱なものだったか、1年前の大震災で痛感したはずだ。

 では、はたしてあなたの勤める薬局に、災害にも比較的強いとされる衛星電話は用意されているだろうか。またあなたの地元の薬剤師会には、関係各所と連絡を取るための防災無線が設置されているだろうか。確認してみるといい。

 災害用の備蓄は色々していても、災害時の連絡手段については、具体的な対策を講じていないところが多いのではないか。なぜなら、このような連絡手段の確保には、高いコストがかかってしまうためである。個人なら、なおさらだろう。

 結論として、もし大震災に見舞われ連絡手段も断たれたその時は、現場の薬剤師が独自の判断で動かざるを得ない。指示待ちでは、遅い。そもそも指示を出す側が状況を正確に把握しているとは限らない。素早く適切な判断を下せないという事態も、十分あり得る。

 現に1年前の大震災では、薬剤師会からのボランティア派遣が遅れた。それとは対照的に、あの地震直後の混乱のなか、自ら判断して動いた現場の薬剤師がいた。そのような兵(つわもの)たちが一足早く被災地に駆けつけ、電気も水も医薬品さえ不十分な状態で懸命に活動し、救援活動の一翼を担ったと聞く。

 組織として統制のある動きを取ることも必要であり、否定はしない。だが、どうか次の緊急事態が来るまでに、現場の薬剤師一人ひとりが自ら考え、自ら動ける兵になってほしいと筆者は切に願う。

 既にあなたの隣にもいるかもしれない。白衣のポケットにペンライトやホイッスルなど、災害時に役立ちそうなものをさりげなく準備し、名札に薬剤師の登録番号をメモしている同僚が……。自ら考え、自ら動くことができる兵かどうかというのは、そういうところで差が表れるのである。(みち)

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