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認定薬剤師最新ガイド
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 職場に新入社員を迎える春は、“先輩”薬剤師にとっても、新たな気持ちで目標を立てるチャンス。キャリアプランを描く中で、「認定薬剤師」の資格取得にチャレンジしようと考えている人もいるのではないだろうか。

 卒後の自主学習や臨床経験を生かして取得できる認定制度は多数あり、ここ数年はさらに増えてきている。

充実する生涯学習のサポート体制

 薬剤師の認定制度には、大きく分けて、(1)自主学習の証しを認定するもの(2)特定領域の専門的な知識や技能、実績を認定するもの─の2つがある。

 「認定薬剤師」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、日本薬剤師研修センターが1994年に開始した「研修認定薬剤師」だろう。その後、2004年に薬剤師認定制度認証機構(CPC)が設立され、現在では17団体がCPCの認証を受けた認証研修機関(研修機関)として、研修会を開催したり認定を行っている(表1)。認定を取得するためには、各研修機関で行われている研修を受講し、規定の単位(シール)を集めた後、認定を受けたい研修機関に研修手帳を提出する。

表1 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修機関

原則として、研修単位は相互に有効で、どの研修機関にも認定証の申請を行える。P01、P02でも同列の生涯研修認定制度を実施しているが、特定領域を研修対象としている。
上の画面写真は、『認定薬剤師.com』のトップページ。

星薬科大学の亀井淳三氏は、「認定薬剤師.comを活用して、特色やポリシーが異なる様々な研修機関の研修会を受講し、視野を広げてほしい」と話す。

 この認定制度の大きな特徴は、複数の研修機関にまたがって研修を受けられる点。昨年8月には、認証研修機関でつくる協議会が、全国の研修会の開催情報を入手できるウェブサイト「認定薬剤師.com」をオープンした(http://ninteiyakuzaishi.com/)。認証研修機関の一つである星薬科大学で生涯学習支援室室長を務める亀井淳三氏(薬物治療学教室教授)は、「これまでは研修機関同士の情報共有の場がなく、ユーザーがそれぞれのニーズに合った研修会情報を見逃していた可能性があった。各研修機関が特色ある研修会を提供しているので、視野を広げるためにもぜひ、『認定薬剤師.com』を活用してほしい」と話す。

 なお、日本薬剤師会も4月から、生涯学習支援システム「JPALS」をスタートさせた(別掲記事)。JPALSには、「クリニカルラダー」というレベル判定の仕組みが盛り込まれている。

日薬の生涯学習支援システム「JPALS」がいよいよ始動

 4月1日、日本薬剤師会は生涯学習支援システム「JPALS」の提供を開始した。「今年は6年制薬学部を卒業した薬剤師が初めて社会に出てくる節目の年。日薬として卒後教育の環境を整えておく必要があった」と、日薬生涯学習委員会委員長でファーミック(東京都国立市)代表取締役の上村直樹氏は説明する。

 JPALSはウェブサイト上のサービスで、薬剤師であれば誰でも利用できる。柱となるのは、「ポートフォリオシステム」だ(下の流れ図)。これは、個々の薬剤師が生涯にわたって自主学習を続けるための仕組みで、「自己査定(reflection)」「学習計画(planning)」「実行(action)」「評価(evaluation)」という4つのステップから成る。

 自己査定には、日薬が2009年4月に公表した「薬剤師に求められるプロフェッショナルスタンダード(PS)」の383項目を使用する。学習を始める際に各項目の習得状況をチェックし、どの領域を学習によって補うべきかを把握。それを参考にしながら、学習計画を立てる。

 実際に学習した内容は、ポートフォリオに記録していく。「学会や研修会といった特別な学習の機会だけでなく、日常業務の中で気付いたことや経験したケースについても書きとめておく“日記帳”として、気軽に活用してほしい」と上村氏。

 加えてJPALSには、学習の動機付けのため、「クリニカルラダー」と呼ばれるレベル判定の仕組みも導入された。ポートフォリオを年6本以上、日薬に提出し、ウェブサイト上のテストに合格すれば昇格できる。一方でポートフォリオの提出数が規定に満たない場合、レベルは自動的に降格する。「高いレベルに到達することがゴールではなく、あくまでレベルの維持・向上のために生涯学習を続けることが大切」と、上村氏は話している。

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キャリアを見直すきっかけにも

 特定領域の専門知識や技能を、学会発表の実績や認定試験などによって評価・認定する制度もある。緩和ケアや腎臓病薬物療法など、近年の高齢社会のニーズに合わせた専門系資格の認定制度も増えている(表2)。

 「患者が医療従事者を選ぶ現代においては、専門系資格の取得という形で、知識や技能の高さを社会にアピールすることがますます重要になる。その代わり、認定母体は責任を持ってその質を担保していくべきだろう」と、慶応義塾大学医薬品情報学講座教授の望月眞弓氏は話す。

 もっとも、雨後のたけのこのごとく創設される専門系資格のうち、どれを取得すればいいのか迷う人も少なくないだろう。望月氏は、「資格をたくさん持っていればいいわけではない。今後どんな分野に力を入れていきたいのかをよく考えた上で、取得を目指す資格を選ぶといい」とアドバイスしている。

表2 薬剤師が取得できる主な認定制度(認定機関のウェブサイトの情報などを基に編集部で作成)

カテゴリーに分けた上で、原則として、認定制度が開始された年が古いものから順に並べた。

・生涯学習支援系
・特定の疾患・研究領域を対象とするもの
・臨床試験系

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・主に病院薬剤師向け
・医療資格を持たない人も取得可能

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 腎臓病薬物療法認定薬剤師は、日本腎臓病薬物療法学会(旧・日本腎と薬剤研究会)が2011年に創設した認定資格の一つだ。背景にあるのは、近年の高齢患者の増加。「高齢者は基本的に腎機能が低下していることから、全ての薬剤師が腎臓病の薬物療法に関する基礎知識を身に付けておく必要がある」と、同学会理事長で熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長の平田純生氏(写真)は強調する。

 認定制度は、「単位履修修了」「認定薬剤師」「専門薬剤師」の3段階から成る(図1)。平田氏は、これらの認定薬剤師が率先して果たすべき役割として、(1)腎機能が低下した患者への薬物適正使用と副作用の防止(2)適切な服薬指導による、腎機能の悪化防止と心血管合併症の予防(3)透析患者の合併症に対する最適な薬物療法の提供(4)薬剤性腎障害の防止─を挙げる。

 例えば、健診で尿蛋白を指摘され、初めてレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬を処方された患者が薬局を訪れた場合、どのように服薬指導すべきか。「薬剤情報提供書には『血圧を下げる薬』と書いてあっても、ここで薬剤師が早期の慢性腎臓病(CKD)と気づけるかどうかが、悪化を防ぐカギとなる」と平田氏。「加えて、患者に正しく病識を持たせ、薬物療法や生活習慣の改善に前向きに取り組んでもらうためには、コンコーダンスに焦点を当てた服薬指導が重要」と続ける。コンコーダンスとは、患者と医療者が情報や価値観を共有しながら、治療方針を決定していく考え方のこと。

 患者にとって最も身近な医療者である薬局薬剤師にこそ、こうした考え方を身に付け、高齢者を透析導入や副作用から守るゲートキーパーになることが期待されているのだ。

図1 認定制度のイメージ

資格取得まで:日本腎臓病薬物療法学会に入会し、同学会が指定する学術集会や研究会などに参加。学会発表や論文発表による単位も合わせて、2年間で30単位以上履修すると「単位履修修了証」が交付される。認定試験の受験資格を得るには、これに加えて、(1)薬剤師歴5年以上、同学会会員歴3年以上(2)指定の認定薬剤師資格(3)日本腎臓学会もしくは日本透析医学会の個人会員かつ指定学会への所属(4)腎臓病および透析患者の薬物療法に関する3回以上の学会発表─を全て満たすことが条件。第1回の認定試験は、2013年夏に実施される予定。

詳細:日本腎臓病薬物療法学会

 小児薬物療法認定薬剤師制度は、4月に募集が始まったばかりの新設制度。日本小児臨床薬理学会と日本薬剤師研修センターが共同で認定する。

 「小児の薬物療法は重要な領域であるにもかかわらず、これまで薬剤師が総合的な知識を身に付ける場がなかった」。日本小児臨床薬理学会教育委員会委員の小高賢一氏(国立成育医療研究センター[東京都世田谷区]薬剤部長、写真上)は設立の経緯をこう説明する。

 認定を取得するためには、「小児薬物療法研修会」の受講が必須。研修会は、6月~来年1月にかけて全34項目の講義をインターネット配信する形で行われる。

 講義のテーマは、難病を含む小児科疾患の病態から、薬物動態、薬剤管理指導、調剤、市販薬、臨床試験の仕組みに至るまで、多岐にわたる。「第一線で活躍する医師・薬剤師延べ30人以上が講師陣を務めるため、研修会の質は担保されている」と、同委員会委員で国立成育医療研究センター副薬剤部長の石川洋一氏(写真下)は太鼓判を押す。患児と家族をサポートする専門職であるチャイルド・ライフ・スペシャリストが、小児の心理・行動特性を生かした服薬指導のコツを伝授するというユニークな講義もある。

 「特に小児に多い急性期疾患の薬物療法では、厳しい処方鑑査と効果的な服薬指導が欠かせない。薬局薬剤師にはぜひ認定を取得し、子どもたちを守るセーフティーネットとして活躍してもらいたい」と小高氏は話している。

資格取得まで:保険薬局または病院・診療所での実務経験が3年以上あり、現在も勤務している薬剤師が対象。小児薬物療法研修会に応募し、6月~2013年1月にかけて順次インターネット配信される講義を受講する(受講料は5万円。研修会への応募期間は5月21日までだが定員300人に達した時点で締め切られる)。13年3月3日(予定)に座学形式の総括講義を受け、同日実施される試験に合格すると、研修会の修了証が交付される。小児薬物療法認定薬剤師の認定を取得するためには、研修会の修了に加え、指定医療機関での実務研修(6時間程度)を修了することが必要。

詳細:日本薬剤師研修センター

 緩和薬物療法認定薬剤師は、2009年度から日本緩和医療薬学会が認定している専門系資格。病院や自宅で癌などの緩和ケアを受ける患者に対し、専門的な薬物療法を支援する。

 癌領域の認定薬剤師制度には、日本病院薬剤師会による「がん薬物療法認定薬剤師」や日本医療薬学会による「がん専門薬剤師」があるが、いずれも医療機関での研修・業務実績が必要であり、薬局薬剤師は事実上、取得できない。それに対し、緩和薬物療法認定薬剤師は、薬局薬剤師にも取得の門戸が開かれているのが特徴だ。

 ただし、認定を取得するには学会参加などによる単位履修(100単位以上)や症例提出などが必要であり、ハードルは高め。在宅緩和ケアのニーズが高まっている今こそ、勉強を始める絶好のタイミングかもしれない。

資格取得まで:第3回(既に受け付け終了)の認定試験要項によると、薬剤師歴5年以上で、日本緩和医療薬学会および指定学会の会員であること、指定の認定薬剤師資格を取得していることが条件。加えて、薬局薬剤師の場合は、3年以上麻薬小売業者免許を取得し、かつ癌診療を行っている在宅療養支援診療所などの医療機関と連携した保険薬局で、緩和ケアに従事していることが必要。さらに指定講習会での単位履修、学会発表実績、症例報告(15症例以上)などの要件を満たすと、年1回行われる認定試験の受験資格が得られる。第4回の要項は今年8月ごろ、下記のウェブサイト上に掲載される予定。

詳細:日本緩和医療薬学会

 医薬品情報専門薬剤師は、2011年から日本医薬品情報学会が認定している専門系資格。同学会会長で慶應義塾大学薬学部医薬品情報学講座教授の望月眞弓氏(写真)は、「医療機関や企業、地域といった枠組みの中で、医薬品情報を統括し、俯瞰的な視点を持って医薬品の適正使用を推進できる人材が求められている」と、創設の背景を説明する。

 取得を目指してほしい人材として望月氏は、地域の薬剤師会の薬事情報センターや保険薬局チェーンの教育部門に勤務する人、病院薬剤部の医薬品情報担当者などを例に挙げる。

 例えば新薬を導入する際には、効果だけでなく安全性についても十分に評価しなければならない。「組織における情報担当者は、安全性を確保するために、審査報告書にまで遡り、あらゆる情報を批判的に評価し、環境に応じた最適な提案を行う必要がある」と望月氏。

 そのため医薬品情報専門薬剤師の認定には生涯教育セミナーの受講を必須とし、試験や学会発表の実績などによって質を担保する仕組みにしている。「将来的には、医薬品情報専門薬剤師を広く社会から認められる存在にしていきたい」と望月氏は抱負を語る。

資格取得まで:日本医薬品情報学会の生涯教育セミナーを受講(今年の受け付けは終了)。指定の学術集会やフォーラムへの参加も合わせて、60単位以上取得する。認定にはこのほか、同学会の会員であること、5年以上の医薬品情報に関わる業務経験、一定レベル以上の学会での発表と論文発表、医薬品情報に関する教育・業務実績の証明、施設長・所属長の推薦、さらに年1回実施される試験への合格が必要。

詳細:日本医薬品情報学会

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