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特集:整形外科
処方箋の裏側Special2012:整形外科
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 「そろそろ手術を考えましょうか」。5年ほど前から変形性膝関節症を患い、当院で治療を続けてきた村上祥子さん(仮名、76歳)に、大学病院での手術を勧めることにした。

 変形性膝関節症や腰部脊柱管狭窄症など慢性変性疾患では、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の服用、ヒアルロン酸注射、物理療法などの保存的治療で症状が改善せず、激しい痛みを伴うケースも少なくない。当初、村上さんは杖を使えば普通に歩くことは可能だったが、最近になって痛みが強くなり、痛みのため趣味の旅行にも行けず、近所に買い物に行くのも大変になったと話された。年齢的にも手術を受けるぎりぎりのタイミングだった。

 大学病院を紹介した翌週、「3カ月後に手術を受けることになりました」と村上さんが来院された。手術までの間、当院で疼痛管理することになり、大学病院の医師から慢性疼痛治療薬のトラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠(商品名トラムセット配合錠)と吐き気を抑えるメトクロプラミド(プリンペラン)を処方するよう連絡を受けた。

 トラマドール・アセトアミノフェン配合錠は、非オピオイド鎮痛薬で治療困難な非癌性慢性疼痛、抜歯後疼痛を適応として2011年7月に発売された。除痛効果には優れるものの、悪心や嘔吐、傾眠、便秘、めまいなどの副作用が高頻度で見られる。添付文書によれば、同薬の用法・用量は、非癌性慢性疼痛には1回1錠、1日4回、投与間隔は4時間以上空けることとされている。ただし、75歳以上の高齢者では経口投与後の消失半減期が17%延長したというデータがあるほか、投与間隔を6時間以上空け、漸増投与することで副作用が軽減されたという報告もある。そこで村上さんには、1~3日目は1錠/日、4~7日目は2錠/日、8~14日目は3錠/日というように、少量から開始し漸増。必ず6時間以上空けて服用するよう指導した。

 一方、メトクロプラミドは、中枢性嘔吐、末梢性嘔吐のいずれにも制吐作用を示し、高い効果が期待できる。ただし、ドパミン受容体拮抗薬であり長期連用で錐体外路症状を起こす恐れがあるため、漫然と服用することは避けるべきである。トラマドールによる吐き気は、投与開始3日目ぐらいから徐々に消失するといわれている。そこで村上さんには、「吐き気止めは7日分出しますね。3日間は必ず飲んでほしいのですが、4日目以降は吐き気がなかったら飲まなくてもいいですよ」と話した。

 この処方により、村上さんは手術までの3カ月間、副作用で中止することなくトラマドール・アセトアミノフェン配合錠を服用できた。手術後の経過も良好で、現在も当院で経過を観察している。(談)

市谷八幡クリニック院長
古賀 昭義 氏
1996年日本大学医学部卒業。駿河台日本大学病院、日本大学板橋病院などを経て、2007年より現職。12年2月まで日本大学医学部整形外科兼任講師、臨床准教授を兼務。
(写真:小林淳)

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