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特集:小児科
処方箋の裏側Special2012:小児科
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 「実は、お薬の吸入を途中でやめてしまうことがあります。指示通りに朝晩しっかり吸入させなければいけないのは分かっているのですが…」

 山本陽菜ちゃん(仮名、1歳)のお母さんが、思い切って打ち明けてくれた。陽菜ちゃんは、生後6カ月で喘息発作を起こして以来、たびたび発作を起こして入退院を繰り返しており、近医の紹介で生後11カ月のとき当院を受診した。

 1歳前後の赤ちゃんの喘息治療には、ジェット式ネブライザーを使って吸入するブデソニド(商品名パルミコート他)を使うのが一般的だ。陽菜ちゃんにもブデソニドが処方されていた。

 ジェット式ネブライザーを使うと、赤ちゃんでもしっかり吸入できるのだが、吸入のたびにネブライザーをセットする必要がある上、1回の吸入に5分以上かかってしまう。

 一人っ子であれば吸入に時間をかけられるだろうが、陽菜ちゃんには幼稚園に通う年子の兄が2人いて、特に朝は、食事や着替え、幼稚園への送りなどで大忙し。そんな朝に、陽菜ちゃんにネブライザーで吸入させることは、お母さんにとって負担が大きく、コンプライアンスが低下するのも仕方がないことだ。

 このようなケースには、ネブライザーに比べて手間も時間もかからない定量噴霧式エアゾール剤(pMDI)のシクレソニド(オルベスコ)を処方している。pMDIは、乳幼児では吸入が困難とされているが、実際には、適切なスペーサーを使えば、生後半年ぐらいの赤ちゃんにも吸入させることができる。

 私がシクレソニドを使う理由はもう1つある。同薬は、肺組織内のエステラーゼで加水分解を受けて、初めてステロイド薬としての効果を発揮するプロドラッグである。口腔内では活性がなく、口腔内カンジダなどのリスクが小さいことから、うがいができない乳幼児に、あえて適応外で処方しているのである。

 なお、私はスペーサーとして最近、アルミニウム製の「ボアテックス」(輸入販売:パリ・ジャパン)を使っている。スペーサーの多くはプラスチック製で、内壁に発生する静電気が薬剤粒子を捉えてしまうため、吸入効率が下がるとされる。呼気流量の多い幼児や成人であれば問題ないが、「大きくゆっくり吸って」と吸入指導ができない乳幼児では、少しでも吸入効率を高めたい。そこで、静電気を生じさせにくいアルミニウム製のスペーサーを使っているというわけだ。

 pMDIに変更して半年が経過したが、陽菜ちゃんの発作はぐっと減った。「新しいお薬は時間がかからないので、朝晩きちんと吸入させています」。お母さんのストレスも減ったようだ。(談)

西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニック院長
西藤 成雄 氏
1988年川崎医科大学卒業。滋賀医科大学小児科、社会保険神戸中央病院などを経て、97年西藤こどもクリニック、2007年西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニックを開業。
(写真:山本尚侍)

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