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特集:神経内科
処方箋の裏側Special2012:神経内科
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 抗てんかん薬クロバザム(商品名マイスタン)の用量は、添付文書によれば、初期量は10mg/日、維持量は10~30mg/日である。だから、2.75mg/日とした私の処方箋を見た薬剤師は、なぜこんなに少ないのか、と疑問を抱くかもしれない。

 石田由紀さん(仮名、34歳)は7年前にてんかん発作を起こして脳外科を受診したところ、脳腫瘍が見つかり、腫瘍切除術を受けた。その後の療養中に、カルバマゼピンでStevens-Johnson症候群を来し、併用していたバルプロ酸とともに中止せざるを得なくなった。ゾニサミド(エクセグラン)に変更したものの、てんかん発作が毎日出現する状態で、2007年に当科を紹介受診した。

 石田さんには、Stevens-Johnson症候群の既往があるため、まずはクロバザムを2.5mg/日と極少量から追加してみた。すると、それまで毎日出現していた発作が出なくなった。

 なぜ極少量で十分な効果が得られたのか。これには肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2C19の遺伝子多型が関与している。

 クロバザムは、CYP3A4によってN-デスメチルクロバザム(N-CLB)に代謝され、さらにCYP2C19によって代謝される(図1)。N-CLBは抗てんかん作用を有するが、その効果はクロバザムの約20~40%である。

 CYP2C19遺伝子が変異型のホモ接合体(日本人の約20%を占める)の場合は酵素活性が非常に低いため、N-CLBの血中濃度が上昇し、その血中濃度はクロバザムの10~100倍に達することもある。

 石田さんもクロバザム投与開始から1カ月以上経過した時点で血中濃度を測定したところ、クロバザム22.6ng/mLに対してN-CLBは2009ng/mLと非常に高かった。そこでCYP2C19の遺伝子型を調べたところ、変異型のホモ接合体であることが判明した。

 クロバザムの副作用として、眠気、ふらつき、めまい、流涎などが報告されている。石田さんも投与開始3カ月目ぐらいから流涎の副作用が出たことから、一旦は1.25mg/日に減量したが、2008年の妊娠・出産を契機に発作が再燃、クロバザムを3.25mg/日まで増量した。しかし再び流涎の副作用が出現したため、2.75mg/日に減量し、現在に至っている。

 副作用の発現を最小限にするためにも、CYP2C19の遺伝子多型を明らかにすることは意義があると考え、現在では当科と薬剤部の共同研究として、クロバザムを使用する患者については投与前にCYP2C19の遺伝子多型を調べることにしている。(談)

京都大学大学院医学研究科
臨床神経学准教授
池田 昭夫 氏
1985年佐賀医科大学卒業。国立療養所筑後病院、米国オハイオ州クリーブランドクリニック財団病院などを経て、2000年京都大学大学院医学研究科臨床神経学助手、07年より現職。
(写真:山本尚侍)

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