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特集:在宅医療
処方箋の裏側Special2012:在宅医療
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 睡眠導入薬は、1日1回就寝前の服用と相場が決まっている。だが私は、山岸勘介さん(仮名、75歳)にゾルピデム酒石酸塩(商品名マイスリー)10mgを分4で処方した。

 山岸さんは、食道癌の末期で「最期は自宅で過ごしたい」と在宅移行した患者だった。入院時からの継続処方で、疼痛管理のためのオピオイドのほか、不眠を訴えていたためブロチゾラム(レンドルミン)などを出していた。その後、「寝付きが良くない」との訴えがあったため、ゾルピデム5mgを追加した。すると、なぜか彼は「マイスリーを飲むと元気になる」と主張し、1日に3回も4回も服用するようになってしまった。いくら末期とはいえ、上限量の10mgを超えて飲ませるのは問題だ。1日1回を守らせようとしたところ「もっと飲ませろ」と暴れることもあったという。

 彼は、眠りたくて飲むというより、飲むことに精神的な安定を求めているようだった。ならば何度も飲めるようにしてあげればいいのではないか。そこで、薬剤師と相談して、ゾルピデム10mg錠を粉砕して、乳糖で賦形して4分包して、「1日4包までなら飲んでよい」とした。嚥下機能が低下していたため、以前から薬を粉砕していたのが幸いした。薬剤師が乳糖の量を調節して、見た目を今までと同じにしてくれたため、彼は薬量が減っているとは気づかず大満足。いつでも飲めるという安心感からか、1日に2包程度の服用で済むようになった。

 末期患者では、不眠治療を考えるよりも、今、その時を満足して過ごしてもらうことが大切だ。昼間に寝ていても構わない。それで気持ちが落ち着くのであれば。在宅医療では、そんな柔軟な考え方が必要になることもある。(談)

安中外科・脳神経外科医院 院長
安中 正和 氏
1996年久留米大学医学部卒業。聖路加国際病院脳神経外科勤務を経て、2005年に安中外科・脳神経外科医院を承継。現在は、在宅医療にも力を入れる。
(写真:浦川祐史)

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