DI Onlineのロゴ画像

特集:皮膚科
処方箋の裏側Special2012:皮膚科
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 大きめのマスクをして診察室に入ってきた篠田みゆきさん(仮名、38歳)。マスクを取ると、頬、鼻を中心に赤く、頬には丘疹を伴っていた。

 話を聞いたところ、2年前の冬から、暖かい部屋に入ると頬が赤くなり、ほてりを感じるようになったという。医療機関を受診せずに放置していたが、半年ほどすると頬が常に赤い状態で紅色の丘疹が目立つようになり、近所の皮膚科クリニックを受診した。そこで非ステロイド消炎外用薬を処方されたが治らず、さらに別の皮膚科クリニックで処方されたステロイド外用薬を塗ったところ、急激に症状が悪化し、当院を受診したという。診察の結果、酒さ(しゅさ)と診断した。

 酒さは、主に顔面に生じる慢性の炎症性疾患で、中年期以降に発症することが多い。毛細血管拡張が特徴で、顔面が赤くなる「紅斑性酒さ」から始まり、ニキビ(ざ瘡)に似た皮疹を伴う「酒さ性ざ瘡」、そして進行すると鼻の周囲の皮膚が厚く凸凹になる「鼻瘤」(びりゅう)になる。女性は比較的軽症で、鼻瘤は男性に多く見られる。

 発症の原因として、ニキビダニ(毛包虫)の感染などの可能性が指摘されてはいるが、明確になっておらず、治療に難渋することも少なくない。

 私は酒さの薬物治療では、経口テトラサイクリン系抗菌薬のミノサイクリン塩酸塩(商品名ミノマイシン)とアトピー性皮膚炎治療薬のタクロリムス水和物(プロトピック)の併用をまず試すようにしている。

 以前から、酒さの治療にはテトラサイクリン系抗菌薬が使われてきた。毛穴周囲の細菌増殖を抑えるだけでなく、真皮の炎症を抑える作用があるからだ。ここに、T細胞や肥満細胞など炎症性細胞の働きを強く抑制するタクロリムスを組み合わせることで、さらに炎症が抑えられると考えている。

 タクロリムスは免疫抑制作用を有しているため、強い皮膚感染症を伴う患者は原則禁忌であるが、やむを得ず使用する場合には抗菌薬などとの併用を考慮することになっている。皮膚感染症を予防する観点からも、ミノサイクリンとの併用はよい組み合わせだと思う。なお、ミノサイクリンでめまいやふらつきの副作用が出た場合には、マクロライド系抗菌薬に切り替えているが、酒さの治療のためにはミノサイクリンの方が効果が高いと感じている。

 この治療で、早い患者では2週間で症状が軽快し、大半の患者である程度の症状の改善が見られている。2週間後に再度訪れた篠田さんも、紅斑が少し薄くなったと喜んでくれた。症状の改善に応じて、ミノサイクリンの服用量やタクロリムスの塗布回数を減らしていく予定だ。(談)

慶應義塾大学医学部
皮膚科准教授
海老原 全 氏
1986年 慶應義塾大学医学部卒業。清水市立清水総合病院、東京電力病院、東京都済生会中央病院などを経て、2005年同大医学部皮膚科専任講師、10年より現職。
(写真:山下裕之)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ