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特集:糖尿病
処方箋の裏側Special2012:糖尿病
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 この処方箋を見て、「グラクティブ(一般名シタグリプチンリン酸塩水和物)は28日分処方されているのに、なぜメトグルコ(メトホルミン塩酸塩)は24日分なのか」と疑問に思うかもしれない。

 やや肥満気味の菅井真一さん(仮名、62歳)は2型糖尿病の治療のため、既に当院に5年以上通院している。菅井さんにはビグアナイド(BG)薬のメトホルミンとDPP4阻害薬のシタグリプチンを併用してもらっており、HbA1cは6.7%(NGSP値、JDSでは6.3%)前後でコントロールされている。

 1970年代後半にBG薬の一つであるフェンホルミンによる乳酸アシドーシスが問題となり、同じBG薬のメトホルミンの使用にも制限が加えられた。以来、日本では欧米諸国よりも低用量でしか使用できなかったが、2010年5月にメトグルコが発売され、維持量1日750~1500mg、最高1日2250mgまで使用できるようになり、当院でも処方する頻度が増えている。

 しかし、添付文書の警告に「重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがある。乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には投与しないこと」と記されているように、常に乳酸アシドーシスのリスクを念頭に置かなければならない。

 今回、菅井さんのメトホルミンを24日分に減らしたのは、先に受診した消化器内科で、翌週の腹部造影CT検査がオーダーされていたからだ。菅井さんはC型慢性肝炎も患っていて、定期的に腹部造影CT検査を受けている。

 ヨード造影剤は全て腎臓から排泄されるため、腎臓(特に尿細管)に負担を掛け、時には腎臓の機能を低下させる場合がある。一方、メトホルミンも代謝を受けず未変化体のまま腎臓から排泄されるが、腎機能が低下すると排泄が遅延し、血中濃度が上昇して乳酸アシドーシスを起こす恐れがある。

 このリスクを回避するために、「糖尿病標準診療マニュアル」(厚生労働科学研究班、2011年)では、造影剤使用時の前後48時間ずつBG薬を休薬することと明記されている。そこでメトグルコを4日分減らしたのだ。

 菅井さんはメトホルミンを休薬して血糖値が上がらないかを心配していたが、「もう一つのお薬は飲み続けますし、短期間だから大きな影響はありません。検査の後、体調が悪かったら来院してくださいね」と話したところ、安心されたようである。

 薬局で、BG薬を服用している患者が造影検査を受けると分かった際には、休薬の指示が出ているかを確認してほしい。なおヨード造影剤のほか、ゲンタマイシンなど腎毒性の強い抗菌薬も併用注意とされており、メトホルミンの投与を一時的に減量・中止する必要があることも知っておいてほしい。(談)

船橋市立医療センター
代謝内科部長
岩岡 秀明 氏
1981年千葉大学医学部卒業、同大第二内科入局。国立佐倉病院内科、成田赤十字病院内科などを経て2002年4月より船橋市立医療センター。
(写真:山下裕之)

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