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DIクイズ4(A)
膀胱炎でESBL産生大腸菌が検出された患者(A)
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

出題と解答 : 鈴木 光
(株式会社南山堂[東京都港区])

A1

(1)大腸菌

A1

(2)起炎菌:ESBL産生大腸菌 抗菌薬:カルバペネム系薬

 尿路感染症は、臨床経過により急性と慢性に、その発症に関わる基礎疾患の有無により単純性と複雑性に、感染部位により上部尿路感染(腎盂腎炎など)と下部尿路感染(膀胱炎など)に分類される。急性単純性膀胱炎の起炎菌は、大腸菌が7~8割で、そのほか肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリスなどを加えたグラム陰性菌がほとんどを占める。頻度的には低いものの、グラム陽性菌の腐性ブドウ球菌や、セフェム系薬に対してほぼ100%耐性がある腸球菌などが起炎菌となる場合もある。

 『JAID/JSC感染症治療ガイド2011』(日本感染症学会/日本化学療法学会編、2012年)では、単純性尿路感染症の初期化学療法としてニューキノロン系薬の3日間投与、新世代セフェム系薬の3~7日間投与などが推奨されている。ただし、ニューキノロン系薬のうち、ガレノキサシンや尿路移行性の低いモキシフロキサシンは膀胱炎に適応がないので注意が必要である。なお欧米では、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤の3日間投与、ホスホマイシンのトロメタモール塩(日本未発売)の単回投与などが推奨されている。

 従来、これらの抗菌薬に対する患者の反応性は良好で、治療において大きな問題はなかった。ところが近年、キノロン耐性大腸菌や基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL:extended- spectrum β-lactamase)産生大腸菌など、大腸菌の耐性化が問題視されるようになってきた。

 ESBLとは、主としてペニシリン系薬を分解するβラクタマーゼが、第3世代や第4世代を含む全てのセフェム系薬、モノバクタム系薬も分解するようになったものである。このESBLをコードする遺伝子はプラスミド上にあり、プラスミドを介してESBL産生菌が急速に広がる可能性があり、世界的に警戒されている。国内でも市販鶏ひき肉および市中医療機関の外来患者の下痢便におけるESBLの検出状況を調べた報告があり、その分離状況から、鶏肉を介してESBL産生菌の感染が市中レベルで拡大する可能性が示唆されている(参考文献1)。

 ESBL産生大腸菌は、セフェム系薬、モノバクタム系薬のみならず、キノロン系薬にも耐性を示す菌株が多い。カルバペネム系薬が治療の中心として挙げられるが、小児用薬であるテビペネムピボキシル(商品名オラペネム、膀胱炎の適応なし)を除き、注射製剤以外の剤形が存在せず、外来治療での有用性が明らかな経口抗菌薬は存在しないのが現状である。

 今回、Aさんに処方されたホスホマイシンカルシウム水和物(ホスミシン他)は、大腸菌やブドウ球菌属などに有効で、膀胱炎にも適応があり、経口薬が存在する。

 ホスホマイシンは、近年、海外において有用性が注目されてきており、感性を示すESBL産生大腸菌に対して、ホスホマイシントロメタモールの3g単回投与で有効であったという報告がある。これを国内で認可されている製剤・投与法で再現するには、ホスホマイシンカルシウム塩1回1gを1日3回、2日間投与するのが妥当とされる(参考文献2)。Aさんを診察した医師は、こうした知見から、ホスミシンを2日分処方したと考えられる。

 なお、ホスホマイシンに関しても、使用量の増加に伴って耐性株の分離頻度が高くなったとの報告もあり、今後の耐性菌の動向に注意する必要がある。

参考文献
1)日本食品微生物学会雑誌2011;28(2):123-7.
2)綜合臨牀2009;58(6):1415-20.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 ESBLというのは、いろいろな抗生物質を分解して、効かなくしてしまう酵素のことです。ESBLを出している菌には一部の抗生物質が効かず、これまでお飲みになっていたフロモックスも効かない可能性があります。

 新しく出されたホスミシンは、ESBLを産生している大腸菌に対して有効であったという報告がありますので、先生はホスミシンに変えて様子を見ようとおっしゃったのだと思います。

 症状が治まっても病原菌が残っている場合がありますので、2日間はきっちりお薬を飲んでくださいね。

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