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DIクイズ3(A)
吸入ステロイドがMDIに変更された理由(A)
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

出題と解答 : 大澄 朋香
(千葉県薬剤師会薬事情報センター)

A1

吸気力が弱まり、吸気速度が低下した結果、ドライパウダー製剤であるフルタイド100ディスカスを適切に吸入できなくなった。

 気管支喘息の治療薬は、(1)気道の炎症を抑え、発作を出にくくする長期管理薬(吸入ステロイドなど)(2)気道の収縮による発作を改善する発作治療薬(β2受容体刺激薬など)─の2つに大別できる。中でも吸入ステロイドは、1990年代後半から喘息治療に積極的に用いられ、現在では治療の主体となっている(参考文献1)。

 治療には、全身性の副作用が少ない吸入薬を主として用いるが、その吸入器(デバイス)には、大きく分けて(1)ドライパウダー製剤吸入器(dry powder inhaler:DPI)(2)エアロゾル製剤用の定量噴霧吸入器(metered dose inhaler:MDI)─の2つがある。DPI製剤は、患者の吸気によって粉末状の薬剤を吸い込み、気管支に到達させる仕組みであることから、吸入には一定量の吸気速度を要する。それに対し、MDI製剤は、加圧ガスによって薬剤を霧状にして噴出させるため、高齢者など吸気速度が低い患者でも使用できる。ただし、MDI製剤は、ゆっくり息を吸い始めると同時に噴霧を始める必要がある。一方のDPI製剤は、吸気と噴霧を同調させる必要はない(参考文献2)。

 Tさんはこれまで、DPI製剤であるフルタイド100ディスカス(一般名フルチカゾンプロピオン酸エステル)を使用していたが、今回、MDI製剤のオルベスコ200μgインヘラー56吸入用(シクレソニド)に変更された。これは、Tさんの吸気力が落ち、吸入ステロイドの吸入量が減ったために、喘息のコントロールが不十分になってきたことが疑われるからである。吸気速度が落ちると、DPI製剤では吸い切れなかった薬剤が吸入器内に残り、Tさんが訴えたように薬剤が吸入器からこぼれることがある。喘息発作の頻度が増え、サルタノール(サルブタモール硫酸塩)の使用量が増えたことからも、主治医は吸入ステロイドをMDI製剤に変更する必要があると判断したのであろう。

 今回、新たに処方されたオルベスコは、肺組織内で活性代謝物に変化するプロドラッグである。主治医は、オルベスコが1日1回の投与で済むことに加えて、嗄声などの局所の副作用が少ないことを期待して、フルタイドから変更したと考えられる。

 MDI製剤を使用する際は、薬剤の噴霧と吸気を同調させる必要がある。具体的には、(1)息を十分に吐き出した後、吸入口をくわえる(2)ゆっくり息を吸い込み始めると同時に、アルミ缶の底を1回押し、3~5秒かけて薬剤を十分に吸入する(3)そのまま口を閉じ、5~10秒間息をとめる─という3点を指導する。

 (2)の「同調」がうまく行えない患者では、スペーサー(吸入補助器)を使用することが望ましい。スペーサーを使えば、薬剤の噴霧と吸気のタイミングを合わせる必要がなく、ゆっくりと落ち着いて吸入できる。また、加圧ガスによる口腔内への刺激も軽減でき、吸入効率も高まる(参考文献3)。

 吸入薬による気管支喘息の治療においては、薬剤師による適切な吸入指導が、患者の手技習得の成否に影響するといわれている。初回だけでなく、定期的に患者の吸入手技を確認していくようにしたい。

参考文献
1)日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン 2009』
2)薬局2008;59:2377-80.
3)薬局2008;59:2363-7.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 吸入の薬には、2つの種類があります。これまでTさんが使用されていたのは、粉状の薬が入っていて、それを勢いよく吸い込むタイプです。今日出された新しい薬は、液体の薬がガスの力で細かい霧状になって出てくるタイプです。最近、Tさんは喘息の症状が少し不安定だったり、薬がこぼれるようになったりしたとおっしゃっていましたね。先生は、Tさんの吸い込む力が弱くなり、粉状の薬では効き目が十分に出なくなったのではと考えて、液状の薬へと変更されたのだと思います。

 使い方は、現在使用されているサルタノールの吸い方とほぼ同じです。吸入口をくわえて、ボンベを強く押し込むと、1回分の薬が噴き出してきます。ボンベを押したら、それと同時に、ゆっくりと深呼吸するように、薬を胸いっぱいに吸い込んでください。

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