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患者指導ワンポイントレッスン
Lesson4 腰痛時の正しい安静の姿勢
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 腰痛の原因は様々だが、大きく分けると、腰部に負担のかかる動作による腰痛と、転移性脊椎腫瘍や脊椎感染症などの重篤な疾患が背景にある腰痛に分けられる。

 前者では、俗に“ぎっくり腰”と呼ばれる急性腰痛症が多い。腰を構成する腰椎、椎間板、筋肉、靭帯のいずれかに負担がかかり損傷して痛みを感じる。急性腰痛症の治療は、痛みを和らげながら安静にすることである。

温めるべきか、冷やすべきか

 対症療法として私は、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の中で消化管障害が比較的少ないセレコキシブ(商品名セレコックス)と、ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)のテープ剤を処方することが多い。より臭いの少ない外用薬を希望する患者には、フェルビナク(セルタッチ)などを処方している。仕事の都合ですぐに痛みを取ってほしいといった要望のある患者には、局所麻酔薬の注射(トリガーポイント注射)を行うこともある。

 腰痛の痛み緩和には、コルセットの使用も勧めている。コルセットを装着することで腹圧を高め、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できる。中には、「コルセットは1日中装着するもの」と誤解している患者がいるが、実際には8時間を目安に使用すれば有効とされており、少なくとも就寝時には外すように指導する。またコルセットをきつく締め過ぎると腸に負担をかけてしまう。薬局でも、コルセットを使用する患者に正しい装着方法を指導してほしい。

 しばしば腰痛の患者から聞かれるのが、患部は温めた方がよいのか、冷やした方がよいのか、ということだ。腰痛も、基本的には足関節の捻挫などと同様に、1~2日間は氷や保冷剤などで患部を冷やして炎症を抑えるとよい。その後は、ぬるめの湯に長めにつかるなどして温めて血行を良くするように指導するとよいだろう。

「安静=寝ていること」ではない

 腰痛患者に安静を指示すると、「安静=寝ていること」と考える人が多い。しかし、腰痛患者にとっての安静とは、寝ることではなく、腰椎への負担が少ない姿勢で過ごすことを意味している。

 腰椎の椎間板にかかる圧力は、直立の状態を100とすると、椅子に座った状態では140、前傾して立った状態では150、座って前傾する姿勢では185の圧力が掛かるとされる。

 日常生活で「前傾して立った状態」とは、例えば洗面台で顔を洗うときや物を持ち上げるときの姿勢である。そんなときは膝を軽く曲げて、腰の位置を下げると腰椎への負担が小さくなる。また「座りながら前傾する姿勢」は、机に向かってパソコン作業をしているときなどが当てはまる。私は、腰痛の患者には、1時間のデスクワークのうち、10分程度は椅子から立って、腰を伸ばし、歩くようアドバイスしている。膝が股関節よりも高くなるようにするのも腰椎への負担軽減に効果的だ。座面が高い椅子の場合は、足元に台などを置いて調節するとよいだろう。

 寝るときの姿勢も大切だ。側仰位(横向き)で膝を曲げた姿勢が最も腰への負担が小さい。仰向けなら膝の下に、うつ伏せなら腰の下に、枕やタオルを入れるとよい。なお、腰痛と枕に関係があるという説もあるが、現在のところ明確なエビデンスは示されていない。

「ただならぬ腰痛」には受診勧奨

 多くの場合、5~7日程度安静にしていれば軽快する。しかし、安静にしても症状が改善しなかったり、夜間痛やしびれ、筋力低下、排尿障害などを伴う「ただならぬ腰痛」では、腫瘍や脊椎感染症などの可能性がある。患者からそのような訴えを耳にしたら、すぐに整形外科の受診を勧めてほしい。

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