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OTCセレクトガイド
便秘 第7回
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 便秘とは、結腸内に便が滞留し、3~4日以上排便がない状態をいう。ただし、患者の主訴は様々であり、毎日排便があっても、便が硬かったり、排便時に不快感や腹痛、排便後の残便感などを伴う場合も、便秘と呼ぶ。

 便秘の原因は、性別や年代によって異なる。女性には、ダイエットや偏食が原因の便秘が比較的多い。これは、食事量が減ると腸への刺激が弱くなり、内容物が腸にたまりがちになるためだ。特に食物繊維の摂取量が減ると、便の量が少なくなる。

 また、排便時に必要な腹筋が弱い人も便秘になりやすい。このほか月経に伴う便秘に悩む人も少なくない。

 男性の場合は、精神的ストレスから腸管が過緊張の状態になり、スムーズに排便できないというケースが多い。

 小児では、朝食をしっかり食べないことで腸の反射が低下し、腸の蠕動運動が始まらず便秘になることが多い。このほか、学校で排便することへの恥ずかしさのため便意を我慢してしまい、慢性的に便意を感じなくなることがある。

 高齢者には、加齢による消化管機能の低下が見られる。

 全年齢を通して見られる原因としては、脱水や摂取水分量の低下、旅行などによる環境変化が知られている。

この成分に注目

 OTCの便秘薬の剤形には、錠剤や散剤のほか、腸を直接刺激して排便を促す坐薬、浣腸がある。成分は、穏やかな下剤である緩下剤と、作用が強い峻下剤の2つに分けられる。

 緩下剤には刺激性下剤成分や塩類下剤、膨潤性下剤、浸潤性下剤、漢方薬などがあり、峻下剤には刺激性成分がある。

刺激性下剤成分

 OTCの便秘薬の多くに使われているセンナ、センノシド、アロエ、ダイオウなどは、腸内細菌の作用で活性体(レインアンスロン)に変化し、胆汁で加水分解され大腸粘膜を刺激する。

 ラキソベロンの商品名で知られるスイッチOTC成分のピコスルファートナトリウムも、アリルスルファターゼによって加水分解されて活性型のジフェノール体となって大腸粘膜を刺激する。

 ビサコジルは、医療用では坐薬のみであるが、OTCでは飲み薬として使われている。腸粘膜の副交感神経末端に作用して蠕動運動の亢進、排便反射への刺激をもたらす。また、直腸内の水分吸収を抑制し、便の容積を増大させる作用も示す。

塩類下剤

 腸管吸収されにくいマグネシウムやナトリウムなどの塩類を服用すると、腸管内と体液とが等張になるよう水分が腸管内に移行するので、蠕動運動が亢進する。酸化マグネシウム、硫酸ナトリウムなど。

膨潤性下剤

 カルボキシメチルセルロースカルシウムや、食物繊維を含むプランタゴ・オバタ種皮は、水分を吸収し粘性のコロイド液となり、便の容積を増大させる。

浸潤性下剤

 ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は、界面活性作用により便に水分を浸潤させて、適度に軟らかくして排泄させる。

 生薬成分としては、膨満感や腸の異常発酵を抑えるコウボク、腸の働きを整えるケツメイシ、胃腸運動促進作用のあるシャクヤクなどが用いられることもある。

刺激性成分

 ヒマシ油は、胆汁、膵液の作用でリシノール酸とグリセリンに分解され、リシノール酸ナトリウムが小腸の運動を亢進させる。また、水分と電解質の分泌、粘膜の透過性も亢進させる。

 浣腸で用いられることの多いグリセリンは、便を軟化させて排出を促進させる。

その他

 OTCの坐薬に配合されている炭酸水素ナトリウムは、発生した炭酸ガスが腸管を刺激して腸の運動を亢進させる働きを持つ。

 下剤とともに、腸管運動や肌荒れに関与するビタミンB1、B5、B6 、整腸剤なども有効である。

製品セレクト

 便秘の患者にまずお薦めしたいのが、コーラックII(大正製薬)である。

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 刺激性下剤成分のビサコジルと、便を軟化して蠕動運動を高めるジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有している。

 有効成分が腸に到達する前に溶けないように、5つの層でコーティングされている。ただし、制酸薬や牛乳によって胃で溶解してしまうことがあるので、これらを飲んでから1時間以内の服用は避けることとされている。

 用法・用量は、15歳以上で1~3錠/日、11~14歳で1~2錠/日を、1日1回就寝前(または空腹時)に服用する。便通の状態を見ながら服用量を患者が調整することができるが、初回は最小量を使うこととされている。

 穏やかな効き目の漢方薬を好む患者には、大黄甘草湯エキス顆粒(ツムラ)がお薦めである。

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 大腸粘膜を刺激するダイオウと、鎮痛緩和作用で腹痛などの不快感を抑えるカンゾウが配合されている。ツムラの医療用漢方(84番)と粒子径やにおいは同じだが、1包に含まれる成分量は医療用の半分になっている。2歳以上から服用できる。

 ただし、連用によって偽アルドステロン症を生じることがあるので、高血圧の既往歴がないかどうか確認し、血圧上昇やむくみ、こわばりが生じたら中止して受診するよう伝える。

 内服薬では、便意がいつ起こるか分からず、外出が怖いという患者にお薦めしたいのが浣腸である。

 浣腸は、内服薬を使用して腸の蠕動による腹痛があるのに、直腸で固まった便が排便を妨げている場合や、残便感のあるときに有効だ。また即効性があり、薬液を入れてから通常3~5分後に効果が見られるので、旅行やイベントなどの環境変化による急な便秘にもお薦めしたい。

 浣腸の中でもイチジク浣腸40E(イチジク製薬)は、グリセリンを主成分とした製品で、ノズルが曲がる構造になっているので挿入しやすい。

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 イチジク浣腸の製品には、グリセリンの用量によって10~40gの4種類があり、さらに30gと40gにはノズルが曲がるタイプ(E)がある。いずれも構造上の特徴として、挿入部が直腸に突き刺さらないように医療用に比べて短くなっている。使用前にノズルを真上に向け、薬液を少し押し出し、先端周囲をぬらすと挿入しやすくなる。容器を40℃ぐらいのお湯に入れて人肌に温めてから使うとよい。

こんな製品も

 漢方薬を好む患者で、大黄甘草湯の他にも試してみたいという患者には、(a)新ドクソウガンG(山崎帝國堂)もよい。

 大腸刺激成分のセンノシド、カンゾウのほか、肌荒れ、吹き出物に作用するサンキライ、血行を改善するセンキュウ、腹部膨満感や腸内の異常発酵を抑えるコウボクが含まれるので、便秘に伴う皮膚症状などに悩んでいる方に向いている。

 ドリンク剤のように手軽に服用できるのが、(b)スラーリア便秘内服液(ロート製薬)である。

 塩基性下剤の硫酸マグネシウム水和物と塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)が配合されており、付属の目盛り付きカップで計って服用する。黄色い液体で柑橘系の酸味と苦みがあるが、にがりのような苦さで、水と一緒に服用すればそれほど気にならない。15歳以上で服用可能。

 便秘とともにガスが多く腹部膨満感に悩む患者には、(c)ウィズワンプラス(ゼリア新薬)がよい。

 成分としてセンノシドとプランタゴ・オバタ種皮を含有しているほか、腸内で発生したガスを除去するジメチルポリシロキサンが配合されている。

 内服薬を使っても残便感があるという患者には、10~30分という短時間で生理的な排便反射を促す(d)新レシカルボン坐剤S(ゼリア新薬)がお薦めである。

 炭酸ガスを発生させる炭酸水素ナトリウムと、その発生を助ける無水リン酸二水素ナトリウムが含有されている。炭酸ガスで腸を刺激するため、挿入後は激しい運動をすると坐剤が出てしまうことがある。挿入してから排便するまではあまり動き回らないように指導するとよいだろう。

 一方、寝たきりの患者などは運動不足などのため便秘になりやすく、家族などが浣腸を行う場合も少なくない。そんなときにお薦めなのが、挿入チューブが長く、長さを調節できる(e)ケンエー浣腸L40(健栄製薬)である。

 また、(f)リセッチ(イチジク製薬)は、他のイチジク浣腸製品と成分や形状は全く一緒だが、女性をターゲットにした新製品である。「飲まない、便秘のお薬」というキャッチコピーで、一見すると浣腸薬であることが分からないパッケージである。

 便秘の乳幼児には、(g)マルツエキス(和光堂)を紹介したい。主成分は麦芽糖で、腸内細菌により発酵したガスが腸管内を刺激する。医療用と同じ量と味で、3歳までが対象となっている。水あめ状になっており、そのまま服用するか、少し癖を感じる場合は温湯やミルクに溶かして服用する。9g入りのスティックが12本入っているものと、260gの缶入りがあるので、使用頻度に合わせて紹介する。

 また、塩基性下剤の錠剤(h)ミルマグLX(エムジーファーマ)は、5歳から服用できる。かすかなレモン風味でほんのり甘いので、服用しやすい。

 便秘の患者には、普段から腸内環境を整えるため、整腸剤の服用もお勧めするとよいだろう。

 (i)ザ・ガードコーワ整腸錠PC(興和)は、腸内の善玉菌である納豆菌末、ラクトミン(乳酸菌)、胃腸管内のガスを除去するジメチルポリシロキサンのほか、弱った胃に作用する生薬(センブリ、ケイヒ、ウイキョウ)、胃粘膜保護作用のメチルメチオニンスルホニウムクロリドなどが配合されている。胃酸から乳酸菌を守るための制酸剤も入っているので、胃腸の不調を訴える患者に向いている。

 ただし、納豆菌が含まれていることから、ワルファリンを服用している人は医師に相談するように伝える。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 便秘薬を連用しても改善しない場合は、腫瘍や炎症など消化管疾患の可能性があるため、受診を促す。

 また、抗コリン薬や麻薬、抗癌剤など、便秘を起こしやすい薬剤が原因となっているケースも少なくない。腫瘍や炎症による腸管閉塞や、術後の癒着などの通過障害で便秘を来している場合もある。

 このほか、糖尿病や膠原病などによる便秘も考えられるため、術歴、腹痛や血便の有無、便秘の発症時期を確認し、必要に応じて受診を勧める。

副作用

 便秘薬の内服薬による副作用には、激しい腹痛、悪心・嘔吐、下痢などがある。用量を減らすことで軽減することが多いが、症状が継続したり、ひどくなったりした場合には、服用を中止して受診するよう促す。

 また、ビサコジルは、連用や乱用によって脱水が起こり、尿が濃縮して過剰なアンモニアと結合して酸性尿酸アンモニウム結石が起こることがあるので注意する。

 センノシドやセンナ、ダイオウ、ヒマシ油は母乳に移行し、乳児の下痢を引き起こすことがあるので、授乳中は服用しない。便秘に悩む授乳婦には、浣腸を薦める。

 浣腸の副作用としては、立ちくらみ、肛門部の熱感、腹痛、不快感がある。こうした副作用が長時間続くようであれば、速やかに受診するよう伝える。

その他

 便秘の患者には、生活習慣の改善を勧めるべきである。食物繊維の多い食生活、水分や電解質の摂取、ストレス解消と十分な睡眠、適度な運動を促すほか、便意がなくても朝食後に定期的にいきんでみて、排便習慣をつけるような工夫を提案するとよい。

 ただし、腎疾患や心疾患がある患者には水分や電解質の摂取は控えるように伝える。また、こうした疾患がなくても、にがりや硬度の高いミネラルウオーターを摂取し過ぎると体内の電解質のバランスが崩れ、高マグネシウム血症などを起こす恐れがあることも注意しておきたい。

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