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覆面調査がそんなにイヤなら…
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

 OTC薬のリスク分類が導入されて以降、厚生労働省が定期的に実施している「一般用医薬品販売制度定着状況調査」の第2回の結果が公表された。覆面調査員が実際に薬局や薬店を訪れてOTC薬を購入し、情報提供の仕方などをチェックする「覆面調査」である。

 第2回調査では、第1類の販売時に薬剤師が規定通り文書を用いて説明していた店舗が3割しかなかったという。あり得ないほどの低い数字に、思わず目を覆った方も多かったろう。

 この覆面調査について、2月末に行われた日薬の臨時総会では、代議員から「やめさせるべきだ」という趣旨の発言があったという。

 確かに、覆面調査の矢面に立たされるわれわれからすれば、全くのルール違反とは言わないまでも、学生時代の「抜き打ちテスト」のような、何となくイヤな感じは少なからずある。

 きちんとOTC薬を販売していると胸を張って言える薬局でも、どこかに調査員が紛れ込んでいるのではないかと思うとストレスだし、薬代はもらうとしても、本当は必要のない指導に時間を取られることへのいら立ちもある。しかも、そんなイヤ感が漂う調査で、薬剤師にとっては不都合な真実が明るみに出ているわけで、「お上のそんな愚行を、なぜ日薬は放置しているのか」とかみつく気持ちも分からないわけではない。

 だが、この覆面調査、行政が監視目的でやるからイヤな感じになるのであって、マーケティングの世界では非常にメジャーな手法である。海外では、ミステリーショッパー調査とか、ミステリーショッピングなどと呼ばれ、顧客目線での指摘を取り入れてサービスを向上させることを目的に、小売業や飲食店などのサービス業に広く取り入れられている。古くは1940年代から行われていたとされ、その手法でホテルやレストランの格付けを行う『ミシュランガイド』は、日本でも有名だ。

 そこで提案である。厚労省の調査に文句を言うのではなく、ここはあえて日本薬剤師会が主導する形で、「薬局ミシュラン」を作ってしまうというのはどうだろう。OTC薬販売だけでなく、できれば保険調剤の部分も含めて、覆面調査員が徹底的に調査を行い、本家と同じように、三つ星、二つ星、一つ星でランキングして、星を獲得した薬局だけが実名で表彰される形式である。調査自体は、公平を期して、本来ならミシュランのような民間企業が行うべきだろうが、保険調剤まで含めるとレセプト処理などのややこしい問題があるので、そこは主導する日薬が裏で処理してくれることを期待したい。

 星を獲得した薬局は、当然、「3年連続で三ツ星を獲得しました!」といった形で対外的にアピールできる。日薬主導であれば、評価の対象は日薬の会員薬局だけでいいだろう。星を獲得した薬局だけが張り出せるステッカーのようなものを作れば、いつの間にか姿を消してしまった「くるくる看板」(日薬の基準薬局を示す看板)の代わりにもなりそうだ。

 本誌2012年1月号の特集にもあったように、一般国民は、薬局にあまり期待をしていない。それは、そもそも、優れたサービスを提供する薬局が、世の中に存在することを知らないのも一因だろう。

 星を獲得した薬局のことを新聞などで知り、「多少遠いけど、今日は隣町の三つ星の薬局に行ってみよう」となって、実際にその素晴らしいサービスに触れて、以降はその薬局に通い続ける─。なんてことが普通に起こるようになれば、かかりつけ薬局制度は定着し、ダメ薬局は淘汰されていく。そうなれば、もう厚労省の覆面調査なんて怖くない。第1類を正しい手順で売れないような薬局は、とっくに廃業しているはずだから。そんな時代が到来することを夢見ている。(十日十月)

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