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DIクイズ1(A)
抗凝固薬が減量された心房細動患者(A)
日経DI2012年4月号

2012/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年4月号 No.174

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

ダビガトラン(商品名プラザキサ)とベラパミル塩酸塩(ワソラン他)を併用すると、P糖蛋白による排出が抑制されてダビガトランの血中濃度が上昇するため。

 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサ)は、2011年3月に発売された経口抗凝固薬である。同薬は血液凝固反応で重要な役割を果たすトロンビンの活性を阻害し、トロンビンが可溶性のフィブリノゲンを不溶性のフィブリンに変えるのを抑制する。

 従来、唯一の経口抗凝固薬であったワルファリンカリウム(ワーファリン他)に比べ、ダビガトランは、ビタミンK含有食品の摂取制限をしなくてもよく、原則的には凝固能を測定しながら用量調節をする必要がないため、服薬上の制限が少ない。

 ただし、ダビガトランでもいくつか注意事項がある。11年11月に発売元の日本ベーリンガーインゲルハイムがまとめた市販後調査の最終報告によると、11年3月から9月までの6カ月間に、139例が重篤な出血性イベントを起こした。ダビガトランの出血リスクを高める危険因子は、(1)高齢(70歳以上)(2)腎障害(3)併用注意薬の併用(4)出血や消化管潰瘍の既往・合併─の4点である。これらの因子が当てはまる患者は慎重投与となっており、薬局でも注意が必要である。なお、腎障害に関しては、高度の腎障害は禁忌で、中等度腎障害は慎重投与となっている。

 他剤との併用では、ダビガトランエテキシラートがP糖蛋白の基質となるため、これに起因する相互作用には気を付けなくてはならない。特に、今回のケースでWさんに追加されたベラパミル塩酸塩(ワソラン他)は、P糖蛋白との親和性が強く、P糖蛋白阻害薬として働く。ベラパミルにダビガトランを併用するとP糖蛋白によるダビガトランエテキシラートの排出が抑制され、ダビガトランの血中濃度が上昇するので、これらは併用注意となっている。

 実際、外国人健康成人を対象に、ベラパミルとダビガトランの相互作用を調べた臨床薬理試験によると、ベラパミル120mg投与から1時間後にダビガトラン150mgを投与したところ、ダビガトランの血中濃度曲線下面積(AUC)が2.43倍、最高血中濃度(Cmax)が2.79倍に増加した。一方、ベラパミル120mgを1日2回3日間反復投与し、4日目にベラパミルを朝投与した1時間後、ダビガトラン150mgを投与したケースでは、ダビガトランのAUCが1.54倍、Cmaxが1.63倍となった。

 これらのデータから、ベラパミルを1日2回反復投与すると3日以内には定常状態に達し、ベラパミルの定常状態下ではダビガトランへの影響が減弱すると考えられている。また、ダビガトランをベラパミルの2時間前に投与すれば、ダビガトランの吸収過程の大部分が終了した後でベラパミルを服用するので、相互作用が小さくなることも分かっている。

 このような知見を踏まえて、ダビガトランとベラパミルを併用する場合は、ダビガトランを1日220mg(通常は1日300mg)に減量し、併用開始から3日間は、ベラパミル服用の2時間以上前にダビガトランを服用することとなっている。なお、併用開始から4日目以降はベラパミルとダビガトランを同時に服用してもよい。

 P糖蛋白を介した相互作用では、イトラコナゾール(イトリゾール他)がダビガトランと併用禁忌になっている。併用注意薬には、アミオダロン塩酸塩(アンカロン他)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド他)などがあり、これらの併用時はダビガトランを減量する。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 確かに、プラザキサには血栓をできにくくする働きがあり、脳梗塞が再発しないようにするとても重要なお薬です。ですが、今回追加されたワソランとプラザキサを一緒に飲むと、プラザキサの血中濃度が普通より高くなってしまいます。これを避けるために、ワソランを使うときはプラザキサの量を減らします。また、ワソランの使い始めから3日間は、飲み合わせの影響が出やすいので、朝と夜のワソランはプラザキサを飲んでから2時間後に飲んでください。4日目以降は、ワソランとプラザキサを一緒に飲んでも大丈夫です。

 最初の3日間は飲み方が煩わしいですが、ワソランとプラザキサの効果を最大限出すために考えられた飲み方ですので、この飲み方を守るようにしてください。

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