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日経ヘルスケア1月号特集「医療・介護 令和のソリューション」より
AI搭載ロボットを導入、運搬業務などを代替へ

 少子高齢化が加速する今後、医療・介護の「財源の逼迫」「人手不足」の難題に対応するには、あらゆる手段でサービス提供の効率性を高めることが欠かせません。中でも期待が高まっているのが、AI、ICT、センサー、ロボットなどを活用した業務の効率化です。

 医療・介護の経営誌日経ヘルスケア1月号特集「医療・介護 令和のソリューション」から、最新製品・システムの導入で業務改善、人手不足解消などの成果を上げた先進事例の一部を紹介します。
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グッドタイムリビング(株)(東京都港区)

 高齢者住宅などを運営するグッドタイムリビング(株)(東京都港区)では、2019年6月から米アイオロス・ロボティクス社とコンサルティング契約を結び、AI搭載型サービスロボット「アイオロス・ロボット」の実証試験を進めている。

 「人間のような見た目のロボットの方が環境に溶け込みやすく、入居者にとっても親しみやすい。ロボットの動き方も、なるべく人間の動作に近付け、日常生活に寄り添えるロボットを目指している」と米アイオロス社の創業者でCEO(最高経営責任者)のアレキサンダー・フアン氏は話す。

 アイオロス・ロボットの身長は1メートルほど。アームの先の手でかごを持ったり、エレベーターの昇降ボタンを自分で押して、エレベーターが来たら乗り込み、行き先の階のボタンを押し、目的の階で降りるなど、人間と同じ動作を行う。

(※クリックすると拡大表示されます)

エレベーターなどを自己判断で操作

 特徴的なのは各種のセンサーや機械学習、ディープラーニングなどのAI技術を用い、職員が初期操作を行った後は、ロボット単独で周囲の状況を把握し、自律的に動作する点だ。

 ロボットの頭部にはカメラを搭載し、屋内の壁、廊下、階段などのほか、家具、テーブル、椅子などの物体を認識。施設内の3D地図を自動作成し、その地図を参照しながら自己判断で移動する。さらに顔認証技術も搭載しており、入居者や職員の顔を識別。音声でコミュニケーションを取れる。身体の骨格を認識する機能も搭載し、後ろ向きでの人物でも認識できる。

米アイオロス・ロボティクス社創業者兼CEO のアレキサンダー・フアン氏(左)とグッドタイムリビング代表取締役社長の森川悦明氏(右)

 7カ所の関節で構成されるロボットアームを両腕に有し、かごや箱などの物品の運搬が可能。2kg程度までの荷物を運べる上にロボットアームの手(グリッパー)の部分は着脱可能で、用途に応じてロボットが自動的に判別して自分で付け替えることができる。

 脚部には超音波センサーや赤外線センサーなどを搭載し、周囲との距離を計測。例えば、椅子や人などが倒れていた場合も、自動的に察知して衝突を回避し、迂回したり職員に通報するといった動作が可能だ。

 米アイオロス社は2019年11月に量産を始め、受注を開始。2019年12月には介護大手のセントケア・ホールディング(株)(東京都中央区)や高齢者住宅大手の(株)学研ココファンホールディングス(東京都品川区)などから2000万ドルの出資を受け、本格的に介護事業者向けに提供していく計画だ。日本の販売代理店は技術商社の丸文(株)(東京都中央区)とケアボット(株)(東京都中央区)が担当。グッドタイムリビングと結んでいるコンサルティングパートナーシップ契約を、今後、学研ココファンホールディングスなどとも結ぶ予定だ。

 販売形態はリース形式で、2年間の契約の場合、料金は月15万円(税抜き、最低レンタル契約期間は4カ月から)。介護職員1人分をイメージした料金設定という。ロボットをサービスとして提供する「Robot as a Service(RaaS)」によって初期コストを抑えて導入できるようにして、介護現場へのロボットの普及を図りたい考えだ。

運搬業務の代替に期待

 ロボットの用途としては、物品の運搬のほか、施設内の定期巡視や見守り、緊急時の連絡、入居者とのコミュニケーションなどが見込まれている。グッドタイムリビングではアイオロス社に30項目の「ロボットで代替したい業務リスト」を提示し、段階的な性能向上を依頼。郵便物や新聞などの運搬に始まり、例えば廊下の手すりを滅菌しながら拭くといった作業ができないかを検討している。

 グッドタイムリビング代表取締役社長の森川悦明氏は「見守りに関しては、既にセンサー搭載型の見守りシステムがあるので、ロボットには主に運搬を担ってもらいたい」と語る。例えば、朝刊や郵便物を居室まで配達したり、脱衣場からランドリー、居室へと洗濯物を届けるなど、介護職員の仕事のうち、物を運ぶ業務は結構ある。「これらの仕事は専門性が問われず、ロボットで代替できる」(森川氏)。

ロボット、ICTで介護の専門性向上

 ロボットのほかにも、グッドタイムリビングではこれまで様々な機器を活用してきた。例えば介護リフトだ。壁収納型のリフトを開発し、一定数の居室に配備。床走行型のリフトに比べて使い勝手が良く、利用者の自立支援にもつながるという。

 また、見守りシステムにはノーリツプレシジョン(株)(和歌山市)の「Neos+Care(ネオスケア)」を導入。このシステムは本体を居室の壁の上方、エアコンの横などに取り付け、センサーでベッド上をシルエット画像として記録。ベッド上での起き上がりや端座位を取った際や離床した際など、あらかじめ設定した条件に該当すると、業務中に全職員が携行しているスマートフォンに通知を送る仕組みだ。

(※クリックすると拡大表示されます)

 「シルエットで画像を見られるので、なぜ転倒などに至ったかなどを検証したり、入居者が夜間などにどう行動をしているかなどを把握し、ケア計画の策定に生かせる」と森川氏は話す。

 このほか、ホームの介護記録や介護報酬等の請求に関しては(株)富士データシステム(静岡市駿河区)の「CARE KARTE(ケアカルテ)」、住宅型有老ホームで提供する訪問介護サービスなどは(株)ロジック(金沢市)の「CareWing 介護の翼」で管理。CareWingは、居室に設置したQRコードを読み取ることでケアプランを呼び出し、サービス提供完了後にはサービスの開始・終了時刻の記録、サービス提供内容の印刷と実施内容のケアカルテへのデータ送信までを人の手を介さずに行う。これらはiPhone用のアプリがあり、1台で各システムの操作が可能だ。

 介護ロボットやICT機器を積極的に導入している背景には、「介護職員の専門性を高める」という目的がある。「介護職員の専門性を高めるには、直接ケアに携わる時間を増やす必要がある。専門性の低い業務をロボットやICT活用などで『どれだけ削れるか』が重要だ。そして、介護職員の業務が専門化していけば、現在の人員配置基準の見直しも図れるのではないか」と森川氏は期待を寄せる。


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