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日経ヘルスケア11月号特集「働き方改革の本丸? 『同一労働同一賃金』に備える」より
離職率が半減! 中小病院の人事考課の工夫とは

 働き方改革がスタートして、年休取得や残業時間の管理に追われる事業者は少なくありません。さらに、2020年4月からは「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が始まり、いわゆる「同一労働同一賃金」の順守が強く求められます。正規職員と非正規職員の待遇に不合理な差はないか、早急なチェックが必要です。

 医療・介護の経営誌日経ヘルスケア11月号特集「働き方改革の本丸? 『同一労働同一賃金』に備える」から、人事考課の工夫でいち早く職員定着の成果を上げた先進事例の一部を紹介します。(定期購読のご案内ページはこちら


医療法人しょうわ会(北九州市八幡西区)

 「近隣の大病院で忙しく働いているが、結婚や出産・育児などを機に一息つきたい。そうした看護師が当法人に入職するという流れができて、看護師不足に悩むことは格段に少なくなった」。北九州市八幡西区で2病院を運営する医療法人しょうわ会マネジメント本部本部長の藤井樹氏は、職員のワークライフバランスを重視して行ってきた取り組みの効果をこう語る。

 社会保険労務士の資格を持つ藤井氏がしょうわ会で勤め始めたのは、同会が企業立病院を買収し、2つ目の病院として正和なみき病院をオープンした2010年。2病院体制への変更に伴う混乱を経て業務が落ち着いてきた2013年ごろから、藤井氏は法人内の働き方改革にいち早く着手した。

 国の施策に先んじてしょうわ会が行った取り組みは、有給休暇取得の促進、法定以上の有給休暇の付与、育児休業・介護休業取得の促進(男性の取得実績も複数)、夜勤に対する配慮、時間外労働の削減、院内研修の必要最小限への絞り込みなど。

 こうした取り組みによって、幼児や要介護の家族を抱える職員は恩恵を受けるが、逆にその負担をカバーする職員には不満がたまりがちとなる。そこで2014年、法人内の人事考課制度も刷新。「業務に積極的に取り組むと賞与や昇給額が上がる一方、家庭の事情などで一時的に“休憩”しても一定水準の待遇は保証される」(藤井氏)という制度をスタートさせた。

「ここを頑張れば高評価」の指導も

 新しい考課制度では、項目を約45個に細分化。以前の評価シートは、単に「協調性」といった項目に対して上司が5段階の評価を付けるものだったが、内容を具体的に定義し、考課のブレを減らすよう工夫した。

 さらに、各項目の選択肢は、達成できない状態をノーマル、つまりNとし、達成度の段階別にポイント(P)を加算する形とした(表1)。こうすることで、「日祝日の勤務を月に1回は行えば1P、夜勤ならば3Pとして評価される」(表1の3-1参照)こととなり、「モチベーションのアップが期待できる」(藤井氏)という。

表1 しょうわ会の人事考課の評価項目(一部を抜粋)
(※クリックすると拡大表示されます)

 考課を行う上司に対しては、あくまで項目1つずつで判断し、対象者の加算ポイント合計を計算して調整を行うことのないよう求めている。職員には期初に考課シートが配られるので、「この項目をもう少し頑張れば、4Pが取れる」と指導する使い方も可能だ。

 各項目の加算ポイントを合計した最大値は100ポイントとなるように設定しているが、実際には80ポイント弱が最高で、毎回きれいな分布になっているという。加算ポイントの合計は、賞与や昇給に反映させるが、いずれも最低水準は保証し、賞与の場合は最大で基準額の5%程度が増える仕組みとなっている。昇給についても、直近2半期の平均ポイントを反映しやすくするよう、俸給表を改良した。

 なお、100ポイントのうち25ポイント分は、看護部やリハビリテーション部など部門ごとに考課の項目を設定することとしている。研修参加や学会・研究会での発表、あるいは感染防止策の徹底など、各部門が重点目標などを考課の項目に加え、半期ごとにアップデートを検討している。

「職務を反映する人事考課制度をつくり上げたので、同一労働 同一賃金への対応に不安はない」と語るしょうわ会マネジメント本部本部長の藤井樹氏

 こうした取り組みが功を奏し、離職率は2014年度以前の15~20%から2015年度以降は5~9%に低下。2018年度は定年退職も含めて8.5%だった。もっとも、勤務時間帯に制約がある職員が増えると、人件費はどうしても高くなる。その分、院内の備品などはできる限り大切に使ってコストを切り詰めるよう努めているそうだ。

 同一労働同一賃金への対応についても、「不安はない」と藤井氏は語る。「家庭の事情により正規職員だったスタッフがパート勤務となり、数カ月後に正規職員に戻るといったケースも珍しくない。そのため、賃金形態の違いはあるが、人事考課や福利厚生については従来から区別していない」と藤井氏。正規職員と非正規職員の役割、業務内容、責任の度合いについて明文化し、均衡待遇を実現していることを周知すれば、「難なく対応できると考えている」(藤井氏)。


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より抜き日経ヘルスケア
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