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日経ヘルスケア10月号REPORT「多職種・法人連携をICT活用で円滑に」より
転院受け入れまでの日数が大幅短縮したワケは?

 地域包括ケアシステムの構築に向けて、多職種・法人連携が求められています。ただ、異なる法人・施設間での連携となると、なかなか進みにくいのが実情です。そこで近年、SNS型の情報共有ツールなどを活用し、地域全体での連携を図る動きが出てきています。

 医療・介護の経営誌日経ヘルスケア10月号REPORT「多職種・法人連携をICT活用で円滑に」から、ICTによる連携強化に取り組む先進事例の一部を紹介します。(定期購読のご案内ページはこちら


医療法人清水会・京都リハビリテーション病院(京都府伏見区)

 情報連携ツールは、病院同士や法人内の医療機関・介護施設の間でも活用されている。医療法人清水会・京都リハビリテーション病院(京都市伏見区、64床)では、地域の医療機関と空床情報の共有などにサイボウズ(株)(東京都中央区)の「kintoneキントーン)」を利用。ツールを使って作成した専用ウェブページに連携先がアクセスする形で情報共有している。

「院内・院外の連携に必要な機能を、現場の要望に合わせて簡単にカスタマイズできるのが魅力」と語る京都リハビリテーション病院の瀧村孝一氏

 また、他院からの転院依頼や訪問リハビリテーションの提供依頼を受けた際の報告・相談など、複数の職員で情報共有して判断しなければならない業務でもキントーンを利用。進捗を常に管理することで、業務が滞らないようにしている。「以前は複数の職員で情報を共有するのに約2日かかっていたが、キントーンの導入により、数分で共有が可能になった。情報共有のタイムラグが大幅に減り、業務効率化につながっている」と同院地域医療連携室の瀧村孝一氏は導入のメリットを説明する。

 キントーンの活用により業務を改善した結果、積極的に周辺の医療機関や介護施設に営業に行けるようになった。加えて、他院から患者の転院依頼が来て受け入れるまでの期間が約15日から約10日に短縮。迅速に紹介患者を受け入れられる体制を築いたことで、急性期病院からの紹介件数が増加した。「今では入院患者の99.7%が近隣の急性期病院からの紹介。入院期間を短縮しながら90%前後の稼働率を維持できており、黒字化も達成できている」と瀧村氏。

 院内業務においても、キントーンを使い経営指標に関するデータ資料や、近隣の医療機関・介護施設向けの営業資料、訪問リハビリテーションの実施記録を作成することで、文書作成にかかる手間と時間を減らしている。院内の事務作業が減り、多くの職員が定時に帰宅できるようにもなっているという。

 同院は、地域の医療需要の変化に対応するため、2016年の新築移転時にリハビリテーションに特化した病院に機能を転換。需要の少ない外来診療を週3、4日、1日20人程度へと縮小し、64床の一般病棟(10対1)を全て回復期リハビリテーション病棟に変更した。

 移転当初は病床機能を大きく変えたこともあり、他院からの患者受け入れに手間取り、入院患者数が伸び悩む要因の一つとなっていた。「病院経営を黒字化させるためにも、急性期病院が紹介しやすい環境をつくる必要に迫られていた」と瀧村氏は導入の経緯を説明する。

 その後、宇治徳洲会病院と空床情報の共有(図1)にキントーンを利用したことをきっかけに、本格導入を決めた。紙や表計算ソフトで管理していた書類のうち、複数の職員と共有する目的で作成した文書や常にデータを更新して集計しなければならない文書から、キントーンでの管理に切り替えていった。

図1 京都リハビリテーション病院が近隣の医療機関と共有している空床情報
(※クリックすると拡大表示されます)

1年を要した活用スキルの獲得

 キントーンは、ITの知識が乏しくても、無理なく業務内容に応じたアプリケーションを構築できるクラウドサービス。利用する職員のコメントやタスクの進捗、文書の更新状況といった業務に必要な情報を、同一の画面に時系列で表示する業務管理アプリケーションを比較的手軽に開発できるのが特徴だ。

 データを追加するたびに自動集計した結果を改めて表示させたり、アンケート入力フォームなどを作れるほか、ウェブサイトの作成ツールと連携させれば、キントーンで作成・更新したページを医院のウェブサイトに表示させることも可能だ。キントーンを活用するほかの法人と連携するページ「ゲストスペース」をキントーン上に作れば、法人間での情報共有も容易になる。作成したウェブページにアクセス制限をかければ、院内の情報を連携先のみに開示することも可能だ。

 法人内であれば、業務アプリケーションとして入力フォームを1度作成すれば、同じネットワーク内で共有できる。同院では瀧村氏が作成した入力フォームに各職員がアクセスして情報を入力する形で運用している。

 だが、キントーンを活用するには、導入費用がかかるほか、利用には入力フォームや業務アプリを自ら作成する手間が要る。

 導入費用は、当初は瀧村氏だけが使用していたため、5万円程度。現在は、15人ほどの職員が中心となって利用していることに加え、グラフ共有ツールや印刷ツールなどの連携サービスを用いているため、法人全体で月額約10万円の費用を支払っている。

 アプリケーションの作成は簡単ではなかったようだ。「当初は、導入している医療機関や介護施設が少なく、参考にできるものが少なかったため、業務の空き時間を使って約半年かけて操作方法を私1人で学んだ。院内の職員からの要望に応えられるアプリケーションになるまでに、1年ほどかかった」と瀧村氏。数十万円かけて導入支援サービスを活用する選択肢もあったが、院内で保守運用できるようにすることを重視し、瀧村氏がスキルを身につけたという。

 なお、キントーンの操作方法は瀧村氏が職員に直接レクチャーしている。職員からの入力フォームの変更・作成依頼、使用法の説明依頼には瀧村氏が随時、業務の合間に対応する。

 課題は、「キントーンを導入していない近隣の医療機関や介護施設との連携強化」と同氏は言う。同院や宇治徳洲会病院など民間病院が中心となって連携を進めていることに加え、地区ごとに様々なツールが導入され、小規模での連携体制ができていることがネックで、地域全体での連携にはなかなか結びつかないという。

 そこで依頼があればキントーンの導入支援を行うなどして連携強化に努めている。「情報共有ツールの導入効果は十分に知られておらず、利用をためらう医療法人は少なくない。だが、医療・介護施設の業務は無駄が多く、確実に改善できる」と瀧村氏はみる。同氏はキントーンで活用できる様々なツールをウェブサイトで公開しており、「医療・介護現場での導入・連携が進むよう促していきたい」と語る。


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