働き方改革や人材不足への対応が迫られる中、医療機関は業務効率化をどう進めるべきでしょうか。その対策の一つがICT化です。最近では、ツールの導入で反復する入力作業の自動化を図る病院も登場しています。

 医療・介護の経営誌日経ヘルスケア9月号特集「医療・介護のタスク・シフティング」から、先進事例の一部を紹介します。
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日本赤十字社・旭川赤十字病院(北海道旭川市)

 医療現場における事務作業は、診療録や患者に渡す文書の作成、電子カルテへの代行入力、経費精算書類の作成など多岐にわたる。

 文書作成業務の負担を軽減し、全職員の業務を効率化するため、日本赤十字社旭川赤十字病院(北海道旭川市、一般480床)が今年導入したのが、(株)アシリレラのRobotic Process AutomationRPA)ツール「ロボオペレータ」だ。フル機能版の利用料金は、1アカウント月額12万円。業務に応じた設定などのサポートサービスは販売代理店が有償で行う。

 同院で医師など医療現場の職員のタスク・シフティングを進める際に課題となったのが、事務職員の業務負担の増加だった。事務副部長の長江範之氏は「人材不足の中、無限に職員を確保できるわけではない。事務職員に業務を移管するにも、効率化を図った上で実施することが重要。そのため、文書作成業務の負荷を減らす目的でRPAを導入した」と話す。

 RPAは、パソコン操作を事前に登録することで文書の作成を自動化できるソフトウエアのこと。電子カルテや表計算ソフトなど複数のソフトのファイルに記載された数値やテキストを抜き出して資料を作成したり、大量の電子カルテ情報から一定の検査値を満たす患者情報をリスト化して担当医にメールを送るといった反復作業を自動化できる。事務作業を短時間かつ間断なく行えるのが特徴だ(図1)。

図1 RPAで自動化している電子カルテへの入力作業の画面(提供:旭川赤十字病院)
(※クリックすると拡大表示されます)

パソコン操作をソフトに登録

 同院では以前、医師の電子カルテへの入力を事務職員が手作業で代行していた。RPA導入後は、レセプト登録時に作成した患者リストから患者名や担当医名、疾患名などを電子カルテに転記する作業が自動化された。

 RPAを利用するには、事前に事務職員の代行入力業務で行うパソコン操作を整理してRPAのソフトに登録する作業が要る。具体的には、まず電子カルテを開き、カルテを入力する医師のIDとパスワードでログイン。医師の名前をID番号で検索して選択する。次に患者のID番号から患者のカルテを検索して開き、病名や受診日などの記載を加え、患者カルテを閉じる──といった操作だ。

 1度操作を登録すると、自動で業務を行える。「ソフトの扱いに慣れるまでは、操作を登録する作業に時間がかかる。だが、業務の一部を自動化すればほかの作業に時間を費やせるため、確実に業務の負担は軽減できる」と同院情報システム課の長谷川薫氏は言う。自動化の操作状況は全てリアルタイムで画面に表示され、誤った操作がされていないか、エラーが出ていないかを常に把握できる。

 RPAの導入により、1件当たり数分かけて操作していた業務を1件当たり1分ほどで4422件自動化することに成功した。事務職員の業務負担の軽減につながったという。「安定的に動くまでには手間と時間がかかるが、複数業務を自動化できれば職員の負担軽減はより大きくなる」と長谷川氏は言う。

 今後は、全職員に向けてRPAの機能を説明する研修を行い、各部署から活用できそうな業務を募る考えだ。「負担軽減効果を見極めながら、どのような業務が最も効果を得られるか検討したい」と長江氏は展望を語る。


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