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ケースに見る通所介護(口腔・栄養ケア重視型)の事業成功のヒント(第2回)
状態改善の成果を出し「アウトカム経営」を確立
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定では、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年」、現役世代が劇的に減少する「2040年」を見据え、数多くの見直しが行われた。民間企業の中には、高収益の事業モデルを創意工夫で編み出し、改定にもいち早く対応した経営者が登場。介護サービスを提供する病院・診療所にとって、その経営手法から学ぶべき点は多い。

 通所介護は地域包括ケアシステムを担う主力サービスの1つ。その中でも口腔ケア栄養マネジメントを重視したサービスの事業成功のポイントについて、(株)はーと&はあとライフサポート(京都市南区)代表取締役社長の宮崎吉昭氏に2回にわたって解説してもらう。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容の一部です)

POINT④
口腔・栄養関連の加算取得で
さらなる増収を図る

(株)はーと&はあとライフサポート代表取締役社長の宮崎吉昭氏

 2021年度介護報酬改定では、ADL維持等加算の算定要件が簡素化されて単位数が10倍にアップし、加算(I)(30単位/月)、加算(II)(60単位/月)になった(参考記事:「LIFE加算」算定の先行事例(第1回))。一方で、調整済みADL利得の平均値の要件は、加算(I)が1以上、加算(II)が2以上に設定。求められるADL利得のハードルは改定前より上がったといえる。

 また2021年度改定では、口腔・栄養関連の加算の再編や新設も目白押しだった。「栄養改善加算」が1回150単位から200単位にアップし、利用者の低栄養リスクや課題の把握を評価する「栄養アセスメント加算」(50単位/月)が新設。さらに改定前の「栄養スクリーニング加算」(5単位/回)は、「口腔・栄養スクリーニング加算」の加算(I)(20単位/回)と加算(II)(5単位/回)に再編された。管理栄養士歯科衛生士などの専門職を数多く配置し、口腔・栄養・機能訓練の一体的なケアに早くから注力してきた当事業所には追い風が吹いている。

「三位一体」のケア実現へ専門職を手厚く配置
 これらの改定の動向を受け、当事業所では運営体制を強化する意向だ。栄養面では綿密なアセスメントの下、栄養アセスメント加算の算定をベースに、課題解決の優先度が高い利用者には自宅訪問による食事指導で支援しながら、栄養改善加算を積極的に算定していく。また口腔状態を定期的にチェックし、口腔・栄養スクリーニング加算(II)も併せて取得する方針である。どの利用者にどの加算を算定するかの考え方を整理したフロー(図1)を作成したので、参考にしてほしい。

図1 はーと&はあとの口腔・栄養関連加算の算定の流れ
(※クリックすると拡大表示されます)

 通所介護の利用者をアセスメントすると、低栄養状態あるいはそのリスクのある人が70%程度は占めるものだ。その意味では、栄養改善加算を本来ならば利用者の約7割で算定できる。だが、当事業所の利用者の中には、区分支給限度基準額の上限近くまで介護保険サービスを使う人も少なくないため、自己負担が増えないように算定率は3~4割程度に抑えてきた。一方、口腔機能向上加算はケアマネジャーの間での認知度が高いこともあり、算定率は約6割に及ぶ。

 今後は区分支給限度基準額における利用状況も見ながら、全ての利用者に口腔・栄養関連の何らかの加算を取得し、算定率アップを目指したいと考えている。

 栄養指導は利用者のADLの維持・改善をもたらし、ADL維持等加算の安定的な算定にもつながる。実際、2021年度改定の同加算の新しい算定ルールを適用すると、評価対象期間(2020年1月~12月)の調整済みADL利得が平均1以上となり、2021年4月から加算(I)を取得している。

 このほか、国が推進するLIFE科学的介護情報システム)へのデータ提出を要件とする「科学的介護推進体制加算」(40単位/月)、個別機能訓練加算(II)も2021年4月から算定。今後はLIFEからフィードバックされる情報を活用し、利用者のADL改善に生かしていく考えである。

 口腔・栄養・機能訓練の「三位一体」のケアを実現するため、人員体制も充実させている。通所介護事業所に配置している職員の内訳は、管理者(常勤、管理栄養士の有資格者)1人のほか、生活相談員を担う管理栄養士(常勤)1人、生活相談員(常勤)1人、看護師(非常勤)4人、理学療法士(常勤)1人、歯科衛生士(非常勤)2人、介護職員(常勤)4人、介護職員(非常勤)4人。看護師は機能訓練指導員の業務も兼務している。

 栄養改善加算などだけでは管理栄養士の人件費は賄えないが、管理栄養士が中心になって質の高いアセスメントを行えば、通所介護の利用者の確保が促進され、事業所の稼働率や収入が安定する。上記の取り組みで各種加算の算定率を引き上げ、2021年度改定の前は月1万円程度だった利用者単価をさらに高め、3%の増収を目指したい。既に2021年4月実績でこの目標は達成できている。

POINT⑤
訪問看護や栄養ケア・ステーションとの
相乗効果を狙う

 当社の経営面で通所介護事業との高い相乗効果を見込めるのが、訪問看護ステーションと栄養ケア・ステーションの取り組みである。

 本連載の第1回で述べたように、当社は重度の要介護者を中心とした食事療養を広げるため、2017年に大阪府茨木市で訪問看護ステーションを開設。訪問看護師だけでなく管理栄養士を配置して両職種が一緒に患者宅を訪れ、無償で栄養指導を行ってきた。そして2019年11月、訪問看護ステーションに併設する形で「認定栄養ケア・ステーション はーと&はあと」をオープンした。管理栄養士1人を配置し、在宅の高齢者の栄養指導を担っている。

 2021年4月までに訪問看護の利用者約65人を対象に低栄養などのスクリーニングを実施。今後は、糖尿病、腎臓病などの患者や低栄養のリスクを持つ人を掘り起こしながら、かかりつけ医との接点を強化し、栄養指導につなげていく(写真1)。処方薬剤を見直しても糖尿病の改善が見られないため、かかりつけ医と一緒に栄養面からアプローチしている患者も既に出始めている。

写真1 ホームページでは医療機関・介護事業者向けに高齢者の低栄養の問題や介入の必要性を解説している
(※クリックすると拡大表示されます)

 ただ当ステーションは、病院や診療所立ではないので介護報酬の居宅療養管理指導費は算定できない。一方で制度上は、医療機関と契約して訪問栄養指導サービスを受託し、医療機関から報酬を受け取る仕組みの確立は可能だ。その意味でも、当社にとって医療機関との連携が重要になる。採算性に課題はあるが、在宅での栄養支援の充実は今後さらに欠かせなくなるだろう。

 トータルでの在宅食事療養の取り組みは、地域の医療機関やケアマネジャーなどから評価されつつある。その表れが、利用者が使う各介護保険サービスの担当者が集まって行うサービス担当者会議や、病院が実施する退院前カンファレンスへの当法人の管理栄養士の参加だ。

 介護・診療報酬の算定に関連した要件では、これら会議への管理栄養士の出席は必須ではない。それでも、栄養面からの意見を期待して当社の管理栄養士には参加の依頼が多い。実際、サービス担当者会議、退院前カンファレンスへの出席は毎月20件程度ある。今後は、事業展開地域を拡大するとともに医療機関などとの連携をさらに強化して、在宅栄養指導を広げていく方針だ。

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 国内の少子高齢化の進展で、将来、医療・介護・年金の財政の逼迫が大きな問題になります。2020~30年代に15~64歳の生産年齢人口が急速に減少し、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければなりません。いわゆる社会保障の「2040年問題」です。
 介護の問題に置き換えれば、介護保険の財政や制度運営が厳しくなるのはもちろん、高齢者の介護を担う人材の不足が深刻化します。介護事業者は、限られた介護職員や経営資源で質の高いケアを効率的に提供できるサービス提供体制を早期に構築しなければなりません。
 そんな問題意識から、本書では「2040年問題」を克服する経営手法のヒントを提示しました。後期高齢者が急増する2025年のさらに先、2040年も見据えた2021年度介護報酬改定の内容を踏まえ、地域包括ケアシステムにおける介護事業の成功の秘訣、新たにスタートした「科学的介護情報システム」(LIFE)の詳細、介護現場でのICT(情報通信技術)の活用事例などを網羅。今後、経営戦略を検討される介護事業者にとって必携の1冊です。

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連載の紹介

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