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ケースに見る通所介護(口腔・栄養ケア重視型)の事業成功のヒント(第1回)
管理栄養士・歯科衛生士の配置で加算を多く算定
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定では、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年」、現役世代が劇的に減少する「2040年」を見据え、数多くの見直しが行われた。民間企業の中には、高収益の事業モデルを創意工夫で編み出し、改定にもいち早く対応した経営者が登場。介護サービスを提供する病院・診療所にとって、その経営手法から学ぶべき点は多い。

 通所介護は地域包括ケアシステムを担う主力サービスの1つ。その中でも口腔ケア栄養マネジメントを重視したサービスの事業成功のポイントについて、(株)はーと&はあとライフサポート(京都市南区)代表取締役社長の宮崎吉昭氏に2回にわたって解説してもらう。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容の一部です)

(株)はーと&はあとライフサポート代表取締役社長の宮崎吉昭氏

 (株)はーと&はあとライフサポート(京都市南区)は2001年の設立以来、配食事業に力を注いできた。2013年3月には大阪府茨木市に通所介護事業所を、2017年10月には同じ茨木市に訪問看護ステーションを開設。さらに2019年11月、訪問看護ステーションに併設する形で「認定栄養ケア・ステーション はーと&はあと」を開設した。配食・訪問・通所サービスを通じ、「在宅での食事療養を支援する」ことを事業の大きな柱としている(図1)。管理栄養士の採用に積極的で、2021年5月現在、計13人が在籍する。

 配食事業の特色は、食事を宅配するだけでなく、管理栄養士を中心に栄養面のサポートを充実させていることだ。利用申し込みがあると管理栄養士が利用者宅を直接訪問し、1時間ほどかけて栄養面や嚥下機能、身体の状態、ADL(日常生活動作)をアセスメントし、その人に合った食事内容を提案する。さらに利用開始後も3カ月に1回、訪問や電話で利用者の食事状態を確認するほか、食事の配送員も利用者の表情や動作の変化、喫食の状況などをチェック。介護保険サービスを受けている利用者であれば、担当のケアマネジャーなどにも情報をフィードバックする。

図1 (株)はーと&はあとライフサポートの在宅食支援のトータルサービス
(※クリックすると拡大表示されます)

 管理栄養士を配置したカスタマーセンターも設置。食の悩みから体調の相談まであらゆる問い合わせを電話で365日受け付け、担当の管理栄養士や配送員と共有する。利用者個々に合った食事を提供するため、委託会社と密に連携して様々な種類の食事も用意。糖尿病や脂質異常症、心疾患、膵臓疾患などに対応した35種類の食事のほか、低栄養者向けの健康バランス食もそろえている。

 治療食になると1食当たり900円と高めだが、低栄養やフレイル、サルコペニアといった言葉が注目され、食事療養の重要性は増している。ある日突然、濃密な栄養指導が必要になる利用者もいるため、在宅での栄養指導の充実は不可欠だ。

 配食事業の業績は順調である。採算ラインは1日約300食だが、2021年5月の実績は1日1200食に達し、利用者は1400人に上る。

POINT①
通所介護事業所で
実際の喫食状況をチェック

写真1 「 デイサービスはーと&はあと」の外観

写真2 「 デイサービスはーと&はあと」の食堂。正月に餅つき大会を開催した

 配食サービスの難点は、利用者が食べている様子を管理栄養士が直接見られないことだ。そこで当社が茨木市にオープンしたのが、「口から食べること」をコンセプトとした長時間型(6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満)の通所介護事業所「デイサービスはーと&はあと」(定員34人)である(写真1、2)。

 管理栄養士1人を生活相談員として配置するほか、事業所長も管理栄養士の資格を有し、各利用者のアセスメントや食事状況のチェックなどを実施。喫食量やカロリー摂取量だけでなく、嚥下やそしゃくの状態、食の悩みも把握する。その上で、利用者個々に合ったメニューを提供すると同時に、必要があれば自宅でも栄養のある食事が摂れるよう配食サービスの利用を提案している。

 2013年の事業所開設当初、食支援はまだ注目されておらず利用者の確保に苦労したが、2021年5月現在で利用者数は81人で、稼働率は85%で安定している。通所介護と配食の両方を利用している人も15人ほどいる。

POINT②
BIの測定手法を工夫して
ADL維持等加算を算定

 口腔・栄養関連のケアは、2018年度介護報酬改定で多くの介護保険サービスに加算が新設されたのを機に注目を集めている。

 当社は2013年に通所介護事業所を開設した当初、運営が軌道に乗らずに悪戦苦闘し、連携を模索するケアマネジャーや口腔外科の医師からは全く相手にされなかった。そんな中で気付いたのが、利用者のアセスメントの重要性だ。

 口腔・栄養に着目し、綿密なアセスメントを基に利用者のニーズに応じた個別機能訓練計画を作成した上で、質の高いプログラムを提供すれば、状態改善の成果(アウトカム)を出すことができ、ケアマネジャーや医師の信頼も得られる。アセスメント重視の姿勢を打ち出して以降は、利用者も安定的に確保できるようになった。

 当事業所で特徴的なのは、2018年度改定で創設された「ADL維持等加算」を改定直後の4月からいち早く算定できた点である。

 利用者のADLの測定に用いるBI(バーセルインデックス)は、アセスメントの一環として2016年に導入したものだ。それを用いて全ての利用者の状態確認を3カ月に1度行い、隔週水曜日に開くカンファレンスの場でその結果を生かしてきた。2018年4月までの約2年間、BIの測定実績を重ねてきたため、2018年度改定の直後から同加算を算定できるようになったのである。

BIの測定に介護職や管理栄養士も参加
 BIの導入そのものは、決して難しくはない。当事業所では導入当初、機能訓練指導員が全てを測定していたが、経験を重ねる中で測定方法を改良。2018年から測定項目によっては介護職や管理栄養士も加わるようにした。

 介護職が測定するのは、「整容」「トイレ動作」「入浴」「着替え」「排便コントロール」「排尿コントロール」の6項目、管理栄養士が測定するのは、「食事」の1項目。機能訓練指導員は「車いすからベッドへの移動」「歩行」「階段昇降」の3項目を担当する。各職員が普段から接し、観察する機会の多い項目を割り当てている。ただし、最終的に全体を取りまとめる責任はあくまでも機能訓練指導員にある。評価に疑義があれば、介護職や管理栄養士に考え方を確認する。

 複数の目が入ることで評価にはバラつきが生じかねない。例えば、BIで問われる『全介助』とは何か。本当に「1人で全くできない」場合もあれば、能力の有無よりも「職員が実際に介助しているから」という場合も考えられる。評価の考え方を統一するように職員間で話し合いを重ねることが大事だ。BI測定やアセスメントに関する研修も定期的に実施し、各職員の専門性やスキルを高める取り組みが欠かせない。

POINT③
綿密なアセスメントを基に
各種加算の算定率をアップ

 2021年度改定の前まで、ADL維持等加算の単位数は加算(I)が月3単位で、BIの測定データを提出した月に算定する加算(II)が月6単位と極めて低かった。それにもかかわらず、当事業所で利用者単価がアップした理由はほかにある。

 主な要因は、個別機能訓練加算栄養改善加算を算定する利用者が増えたことだ。利用者数に占める旧・個別機能訓練加算(II)(56単位/日)の算定率は、2018年度改定の前は5割程度だったが、改定後に7~8割へ大きく上昇した。

 それを可能にしたのは、前述のアセスメント重視の姿勢にほかならない。当事業所では、アセスメントは体験利用の段階から始まる(写真3)。

写真3 アセスメントなどに活用する体験利用時のシート
(※クリックすると拡大表示されます)

写真4 利用者の口腔状態を歯科衛生士がチェックする

写真5 利用者のニーズに応じた個別機能訓練プログラムを実施している

 食事の摂取状況を確認し、栄養スクリーニングを実施。さらに歯科衛生士が口腔機能をチェックし、基本動作の問題点を確認する(写真4)。それらの結果を基に、サービス開始後の栄養改善加算や口腔機能向上加算、個別機能訓練加算、運動器機能向上加算などの算定の必要性を見極めているのだ。

 こうした緻密なアセスメントを基に、個別の利用者について算定できる加算の幅を広げ、算定率の向上と利用者単価の上昇をもたらした。

 事実、2018年度介護報酬改定の前は月9700円だった利用者単価は、改定後に月1万円前後に約3%アップ。アセスメントを通じた「気付き」をケアマネジャーや利用者にフィードバックすることで、機能訓練に対する潜在ニーズを掘り起こすことができた。当事業所の取り組みを評価する口コミも広がり、機能訓練の希望者が増えていったのである(写真5)。

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 国内の少子高齢化の進展で、将来、医療・介護・年金の財政の逼迫が大きな問題になります。2020~30年代に15~64歳の生産年齢人口が急速に減少し、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければなりません。いわゆる社会保障の「2040年問題」です。
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 そんな問題意識から、本書では「2040年問題」を克服する経営手法のヒントを提示しました。後期高齢者が急増する2025年のさらに先、2040年も見据えた2021年度介護報酬改定の内容を踏まえ、地域包括ケアシステムにおける介護事業の成功の秘訣、新たにスタートした「科学的介護情報システム」(LIFE)の詳細、介護現場でのICT(情報通信技術)の活用事例などを網羅。今後、経営戦略を検討される介護事業者にとって必携の1冊です。

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連載の紹介

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