日経メディカルのロゴ画像

ケースに見る通所介護(機能訓練型)の事業成功のヒント(第3回)
通所介護の営業成功のカギは成果のアピール方法
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定では、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年」、現役世代が劇的に減少する「2040年」を見据え、数多くの見直しが行われた。民間企業の中には、高収益の事業モデルを創意工夫で編み出し、改定にもいち早く対応した経営者が登場。介護サービスを提供する病院・診療所にとって、その経営手法から学ぶべき点は多い。

 通所介護は地域包括ケアシステムを担う主力サービスの1つ。その中でも短時間の機能訓練型サービスの事業成功のポイントについて、(株)メディックプランニング(岡山市北区)代表取締役の三好貴之氏に3回にわたって解説してもらう。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の一部です)

POINT⑧
ケアマネジャーへの営業では
改善効果をアピール

(株)メディックプランニング代表取締役の三好貴之氏

 通所介護の利用者確保で欠かせないのが営業活動だ。メインの営業先は、ケアマネジャーがいる居宅介護支援事業所、病院・診療所などの医療機関である。

 通所介護事業所の場合、設備やメニューだけでは差別化要素になりにくい。機能訓練特化型であればマシントレーニングのプログラムや理学療法士(PT)等の配置は他の同タイプの事業所と変わらないし、1日預かり型でも食事や風呂は他の事業所にもある。「利用者さんに筋力トレーニングに励んでいただきます」「利用者さんを連れて花見に行きます」といった話をケアマネジャーにしても意味がない。

 機能訓練特化型の通所介護事業所の場合、個別機能訓練プログラムで利用者の身体状態や生活機能がどう改善したのかをアピールしたい。例えば、「1人で買い物できるようになりたい」「旅行がしたい」といった本人の目標がどれくらい実現したのか、「ビフォー・アフター」をケアマネジャーに詳しく説明するのである。1日預かり型の通所介護事業所ならば、「自宅では認知症の症状がひどい利用者さんを事業所で預かり、〇〇のケアを提供したら落ち着いて過ごせるようになりました」などと報告するようにしたい。

 その通所介護事業所が受け入れる利用者像をケアマネジャーが具体的にイメージできれば、新規の利用者を紹介しやすくなるはずだ。

POINT⑨
ICT活用で業務効率化を図る
「記憶に頼らないケア」も可能に

 業務を効率化する上では、ICT(情報通信技術)機器をぜひ活用したい。

 「リハビリテーション颯(そう)」の場合、FC本部が「颯システム」を2016年に開発。アセスメントや個別機能訓練計画などの入力・閲覧などを、タブレットやパソコンで一元的に行えるクラウド型のシステムに移行した(写真2)。画面には利用者一人ひとりのプログラムやマシンの負荷条件などの設定が表示され、それを見ながら職員はトレーニングなどを指導する。以前は紙ベースだった通所介護計画や業務記録をペーパーレスに変えて報酬請求ソフトにも連動させ、ほぼ残業ゼロを実現した。当事業所では職員の大半が40歳代以下と若く、ICT機器の操作に慣れているため、タブレットやパソコンを利用しながら会議やアセスメントも行っている。

写真2 「 颯システム」の画面の例

 さらに書類の電子化で、「記憶に頼らないケア」を推進できる。例えば、当事業所で日々使用する「リハビリ(機能訓練)チェックリスト」の活用方法を紹介したい(図3)。その日の利用者の一覧と訓練メニューを記したリストをプリントすれば、職員が随時確認可能だ。利用者のADLは常に変化するため、以前は車いすだった利用者がつえ歩行になっても気付かないなど、記憶に頼ったがゆえの失敗も起こり得る。書類を電子化しておけば、「記憶ではなく記録」に基づき、成果の出るサービスを提供できる体制を容易に構築できるわけだ。

図3 「 リハビリ(機能訓練)チェックリスト」の例
(※クリックすると拡大表示されます)

 今後は、個別機能訓練計画の目標設定をLIFE(科学的介護情報システム)やICF(国際生活機能分類)コードに合わせた形で半自動化する予定で、一段と効率化を進めていく。

 なお、こうしたシステムは独自開発しなくても、既存のICT機器を使えばよい。例えば、(株)エス・エム・エス(東京都港区)の介護業務支援ソフト「カイポケ」の場合、通所介護計画書の作成から業務記録、介護報酬請求までをカバーし、システム利用料は月2万円と安い。

POINT⑩
LIFEへのデータ提出に取り組み
ADL維持等加算の算定に注力

 2021年度介護報酬改定の当社の経営面への影響にもう少し触れておきたい。

 まず「個別機能訓練加算」について。改定前は旧加算(I)(46単位/日)と旧加算(II)(56単位/日)を併算定していたが、改定での加算の統合に伴い加算(I)イと(I)ロに再編され、併算定できなくなった。つまり、加算(I)ロ(85単位/日)を算定しても、合計17単位のマイナスだ。そこで、改定後はLIFEへのデータ提出を要件とする個別機能訓練加算(II)(20単位/月)、「科学的介護推進体制加算」(40単位/月)の算定を目指す方針を打ち出した。改定前は月曜日から金曜日の週5日の営業体制を取っていたが、今後は土曜日にも事業所を稼働させることで収入面の穴埋めとさらなる増収を図っていく(2021年5月時点)。

 収益基盤の強化という点では、「ADL維持等加算」も積極的に算定していきたい。2021年度改定で算定要件が見直され、「5時間以上の通所介護の算定回数が5時間未満を上回る」との要件が撤廃され、当社のように短時間の機能訓練を柱にしてきた通所介護事業所にとっては大きなプラスになる。利用者の状態改善の実績は、通所介護事業所の差別化につながる強みになる。

POINT⑪
通所リハビリを「卒業」した利用者の
受け入れ体制を強化する

 今後の通所介護の経営戦略を検討する上では、通所リハビリテーションの動向も押さえておく必要がある。2021年度介護報酬改定で見直された加算の算定要件には「卒業」を求める旨が随所に盛り込まれている。介護予防通所リハビリや介護予防訪問リハビリで一定期間を超えると減算されるルールが導入されたことにも注目したい。

 こうした点を踏まえると、通所リハビリ事業所や訪問リハビリ事業所でリハビリを終了した高齢者を通所介護事業所で受け入れ、機能訓練プログラムで状態を維持するという流れが強まる。今後高齢者人口が増えていく地域であれば、短時間の機能訓練特化型の通所介護事業所にとって利用者確保の面で有利に働くだろう。

 言うまでもなく、通所リハビリや訪問リハビリを実施する医療機関との連携が重要になる。今までは通所リハビリと通所介護の対象利用者はほぼ同じで、いずれも平均利用期間が4年程度だったが、今後は通所リハビリの利用期間はより短く、通所介護はより長くなっていくと思われる。

 従来の通所介護事業所では入浴介助と食事付きの長時間サービスが主流だった。これから先は、短時間の機能訓練に加え、中重度者ケアや認知症ケアなど多様な特色も求められるだろう。地域のニーズに合わせた運営体制の見直しが不可欠だ。

「科学的介護」「介護DX」「介護人材確保」などの対応ノウハウと実例を一挙公開!
『サバイバル時代の介護経営メソッド』好評発売中

 国内の少子高齢化の進展で、将来、医療・介護・年金の財政の逼迫が大きな問題になります。2020~30年代に15~64歳の生産年齢人口が急速に減少し、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければなりません。いわゆる社会保障の「2040年問題」です。
 介護の問題に置き換えれば、介護保険の財政や制度運営が厳しくなるのはもちろん、高齢者の介護を担う人材の不足が深刻化します。介護事業者は、限られた介護職員や経営資源で質の高いケアを効率的に提供できるサービス提供体制を早期に構築しなければなりません。
 そんな問題意識から、本書では「2040年問題」を克服する経営手法のヒントを提示しました。後期高齢者が急増する2025年のさらに先、2040年も見据えた2021年度介護報酬改定の内容を踏まえ、地域包括ケアシステムにおける介護事業の成功の秘訣、新たにスタートした「科学的介護情報システム」(LIFE)の詳細、介護現場でのICT(情報通信技術)の活用事例などを網羅。今後、経営戦略を検討される介護事業者にとって必携の1冊です。

2021年度介護報酬改定の収入試算ツールのダウンロードサービス付きです→詳細はこちらからご確認ください

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載の紹介

病院・診療所も必見! 介護ビジネス最前線2021
2021年度介護報酬改定では、「科学的介護情報システム」(LIFE)へのデータ提出や、ICT(情報通信技術)機器の活用が評価されました。書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容から、病院・診療所にも役立つ介護政策の最新動向や、先進的な介護事業者のノウハウの一部をセレクトしてお届けします。

この記事を読んでいる人におすすめ