日経メディカルのロゴ画像

科学的介護情報システム(LIFE)のデータ収集・活用のポイント(第2回)
LIFEの個人データ活用で自立支援の成果を出す!
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定では「科学的介護情報システム」(LIFE)への対応が多くの加算で要件化。算定の可否が介護経営を大きく左右するようになった。データ収集・活用など科学的介護の取り組みで先行する社会医療法人寿量会の野尻晋一氏に、その実践のポイントを3回にわたって解説してもらう。

(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容の一部です。本稿に加えて、LIFEの申請手順や各種の実務、データ活用の方法や実例などは書籍で詳述しています。また、野尻氏が講師を務めるオンラインセミナー「LIFEへの対応、先行施設に見る導入・活用方法」が11月28日に開催予定です)

(IV)LIFEのデータの活用

 LIFEでは事業所単位のデータと個人単位のデータがフィードバックされる。それぞれのフィードバック票の概要・活用目的・活用例を表1に示す。厚労省は「個別化された自立支援・科学的介護の推進例」として、個人データの活用の例、排泄への事業所の取り組みの例をそれぞれ示している。

表1 フィードバック票の概要・活用目的・活用例
(※クリックすると拡大表示されます)

 このうち、個人データの活用の事例は、80歳男性、要介護3の利用者のケースである(図1)。ADLや移動能力が同じような状況の利用者の全国平均値と比較すると、効果が出ていないことが分かる。栄養状態のフィードバックデータを見ると、低体重の状態が継続しており、全国平均より食事摂取量が少ないことも分かる。この結果から、栄養状態を改善しなければリハビリテーションの効果が上がらないと考察。リハビリテーションの提供と併せて間食など食事提供量の増量を推奨し、改善されたという事例である。

図1 個別化された自立支援・科学的介護の推進例(イメージ)
(※クリックすると拡大表示されます)

 なお2021年6月22日、LIFEサイトのトップ画面の「お知らせ」で、「LIFE操作説明書 初回フィードバックについて」が公表されると同時に、最初のフィードバック情報のPDFのダウンロードが可能になった。ただし、まだ暫定的な運用にとどまっている。

 6月28日時点での当訪問リハビリテーション事業所の初回フィードバックの結果の一部を図2に示す。全国集計値のみのフィードバックだが、全国的な訪問リハビリの事業所の傾向と自事業所の比較は可能になっている。LIFEの運用が2021年4月に開始されたばかりなので、本格的にフィードバックデータを活用できるようになるのは同年8月以降になる見通しだ。

図2 LIFEの初回フィードバック結果の例(訪問リハビリテーション)
(※クリックすると拡大表示されます)

 以下では、当事業所のVISITの導入経験から事例を1つ紹介し、フィードバック情報の活用のポイントについて述べる。

(1)フィードバック結果の活用(個人データの活用)
 84歳女性、要介護2、アテローム性脳梗塞、直腸癌術後の利用者に関する2020年5月~2021年2月の経過である(図3)。ADLは排便コントロール、更衣、階段昇降、平地歩行が一部介助、入浴が全介助で、9カ月間変化なく維持されている。IADL(手段的日常生活動作)を見ると、9カ月後の2021年2月時点で、食事の用意、食事の片付けが大きく改善しているのが分かる。同居する娘の仕事が忙しくなってきたため、本人は「少しでも家庭内の役割を担いたい」と思っていることが、2020年11月末のリハビリテーション会議で判明。そこで、通所リハビリテーションにて食事の準備等やそのための耐久力向上の練習を実施し、3カ月後の2021年2月には朝食の用意と後片付けが可能となった。役割を持てたことの実感がフィードバックデータでも視覚的に再確認でき、獲得された活動の維持向上につながった。

図3 VISITにおける個人のフィードバック情報の活用例

 VISITのデータは主にリハビリの情報であり、栄養や口腔機能など他の関連情報は分からないので、個別に他のアセスメント結果とフィードバック情報を照合して考察する必要がある。これに対して、LIFEではより複合的な情報のフィードバックを得られる仕組みである。

(2)個人データフィードバックの課題
 個人のフィードバックデータはPDF化されて提供されるが、個人情報保護の観点からVISITへの提出時に振られたVISIT用の個人コードで戻される。従ってこのデータが誰のものかを別表で照合し、確認する手間が生じる。当事業所のような大規模型の通所リハビリ事業所ではVISITデータの提出対象となる利用者だけでも約300人おり、データの照合作業は煩雑である。LIFEにおいてもこの作業は必要になるので注意したい。

「科学的介護」「介護DX」「介護人材確保」などの対応ノウハウと実例を一挙公開!
『サバイバル時代の介護経営メソッド』好評発売中

 国内の少子高齢化の進展で、将来、医療・介護・年金の財政の逼迫が大きな問題になります。2020~30年代に15~64歳の生産年齢人口が急速に減少し、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければなりません。いわゆる社会保障の「2040年問題」です。
 介護の問題に置き換えれば、介護保険の財政や制度運営が厳しくなるのはもちろん、高齢者の介護を担う人材の不足が深刻化します。介護事業者は、限られた介護職員や経営資源で質の高いケアを効率的に提供できるサービス提供体制を早期に構築しなければなりません。
 そんな問題意識から、本書では「2040年問題」を克服する経営手法のヒントを提示しました。後期高齢者が急増する2025年のさらに先、2040年も見据えた2021年度介護報酬改定の内容を踏まえ、地域包括ケアシステムにおける介護事業の成功の秘訣、新たにスタートした「科学的介護情報システム」(LIFE)の詳細、介護現場でのICT(情報通信技術)の活用事例などを網羅。今後、経営戦略を検討される介護事業者にとって必携の1冊です。

2021年度介護報酬改定の収入試算ツールのダウンロードサービス付きです→詳細はこちらからご確認ください

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載の紹介

病院・診療所も必見! 介護ビジネス最前線2021
2021年度介護報酬改定では、「科学的介護情報システム」(LIFE)へのデータ提出や、ICT(情報通信技術)機器の活用が評価されました。書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容から、病院・診療所にも役立つ介護政策の最新動向や、先進的な介護事業者のノウハウの一部をセレクトしてお届けします。

この記事を読んでいる人におすすめ