日経メディカルのロゴ画像

「LIFE加算」算定の先行事例(第3回)
LIFEへの対応強化で今採用すべき専門職は?
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定における最大の注目点は、LIFE(Long-term care Information system For Evidence、科学的介護情報システム)の導入である。数多くの加算の算定要件にLIFEへのデータ提出や活用が位置付けられ、今後の介護経営に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

 LIFEにいち早く対応した通所介護と通所リハビリテーションの事業者の取り組み事例を4回にわたって紹介する。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容の一部です)

 口腔・栄養関連の加算として、通所介護では栄養改善加算(200単位/回)、栄養アセスメント加算(50単位/月)、口腔・栄養スクリーニング加算(I:20単位/回、II:5単位/回)、口腔機能向上加算(I:150単位/回、II:160単位/回)──の4つが設けられた。LIFEへのデータ提出と関連する加算も多い(参考記事:2021年度介護報酬改定と科学的介護情報システム(LIFE)(第2回))。

 以前から口腔・栄養ケアに積極的に取り組んできたデイサービスはーと&はあとでは、2021年4月には加算のみで改定前と比較して月20万円の増収、売り上げに占める割合では3%ほどアップした。社長の宮崎吉昭氏は「改定前から加算として算定できなくても、常勤で管理栄養士を1人置くなど人員配置は多めにしていた。2021年度改定で加算がついたため増収分はそのまま利益になる。さらに、加算を算定したのは4月時点で利用者とケアマネジャーの了解を得られた分だけなので、今後まだ伸びしろはある」と語る。

 同社では2021年6月現在、口腔・栄養関連の加算は「LIFE関連加算」としてまとめて利用者に紹介している。もともと全利用者に対して3カ月に1回、栄養面などのアセスメントを行っていたこともあり、「2021年度改定での国の方針を受けて、アセスメントのデータを提出し活用することになった。今後はその分上乗せの点数が発生する」という旨の説明を行い、理解を求めている。

口腔・栄養両面で加算算定を狙う

 加えて利用者・ケアマネジャーに対し、「はーと&はあとのデイサービスを利用する場合は口腔・栄養両面で何らかの加算を算定させてもらう」とアナウンスしている。具体的には口腔、栄養両面でスクリーニングを行い、栄養面では低栄養リスクを判断した上で栄養改善加算を積極的に算定する。次に、低栄養には至らないが、肥満や筋肉量の減少など栄養状態に偏りが見られる場合には栄養アセスメント加算を算定。そこから漏れた全ての利用者に対して、基本的に口腔・栄養スクリーニング加算を算定するという流れだ(図1)。

図1 はーと&はあとの口腔・栄養関連加算の算定の流れ
(※クリックすると拡大表示されます)

 口腔・栄養スクリーニング加算の様式は、「硬いものを避け、柔らかいものばかり食べる」などの問いに「はい/いいえ」で答え、確認できない場合は「空欄でも差し支えない」と付記されているなど項目は簡単なものとなっている。施設長の末藤氏は「口腔・栄養スクリーニング加算は介護職員もスクリーニングできる」と語る。同社では以前から行っているアセスメントのデータを引き続き活用している。

配食事業で居宅の栄養状態も改善

 東京都内で通所介護事業所を40カ所以上展開する(株)ケアサービス(東京都大田区)では、栄養改善加算(200単位/回)の算定に力を注ぐ。同社では管理栄養士を本社で3人雇用し、事業所を月1回のペースで巡回。アセスメントや計画書の作成を行う。栄養改善加算は、厚労省の介護給付費等実態統計月報(2020年8月審査分)で全国1500件ほどのうち、同社だけで156件を算定していた。取締役執行役員の三浦裕二氏は「弊社だけで全国の算定数の約1割を占める。さらに力を入れていきたい」と語る。

図2 ケアサービスが行う「プラスワンプロジェクト」
(※クリックすると拡大表示されます)

 同社では「プラスワンプロジェクト」と名付け、組織横断的なチームで、ADL維持等加算や栄養関連加算などの算定に向けて検討する取り組みを行う(図2)。栄養改善加算は栄養・口腔チームが担当だ。チームには各事業所から職員が3人参加し、栄養チームには管理栄養士も加わる。現在チーム合同で月1回、ビデオ通話を利用し情報共有を図っている。

 もう1点、栄養改善に向けて力を入れているのが配食事業だ。これまで同社で栄養改善に取り組む中で課題として浮上したのが、利用者の自宅での食事管理だった。利用者の多くは、週に2、3回事業所に通う程度であり、そのうち昼食だけを管理できたとしても効果は限定的になると考えられた。

ケアサービスで提供している夕食用弁当
管理栄養士が献立を考えた夕食用弁当。栄養改善加算を算定している利用者以外も購入できる。1食780円

 そこで配食サービス事業として、セントラルキッチン方式の配食センターを設け、管理栄養士が献立を考えた夕食用の持ち帰り弁当を販売している。価格は味噌汁付きで780円。直接的な栄養改善のほか、自宅に持ち帰って家族らにも弁当を見てもらうことで、意識づけも期待できる。

 弁当は栄養改善加算の対象者のほか、一般の利用者でも希望があれば販売する。2021年6月現在、1日100食程度販売しており、センターから各事業所に配送している。今後は全事業所で販売できる体制づくりを目指す。

外部の専門職との連携強化へ

 ポラリス(参考記事:「LIFE加算」算定の先行事例(第1回))ではこれまでBMIが18を切った利用者へのアプローチなど口腔・栄養の取り組み自体は行ってきたが、人員配置の関係で加算は算定しにくかった。今後LIFEを活用し、積極的に算定していく計画だ。

 2021年6月現在、管理栄養士を1人採用しており、今後46事業所をカバーするために3人まで増やす。歯科衛生士も採用していく方針だ。「今後、大手の通所介護事業所には歯科衛生士がいるのが当たり前になるだろう」(代表取締役の森剛士氏)。

 専門職採用のほか、外部の言語聴覚士を招いたオンライン研修や、口腔フレイル予防に関心のある歯科医師との勉強会など連携も欠かせない。森氏は「体制整備のほかに大事なことは、データ活用と検証に基づいたPDCAサイクルを回し、利用者の結果に結びつけることだ」として、口腔・栄養管理にLIFEを活用する必要性を強調する。

 事業所単独で専門職を採用するのは難しいが、団体としてのメリットを生かす方法もある。大田区通所介護事業者連絡会では、区内や東京都の管理栄養士団体、歯科衛生士団体と連携し、研修会や勉強会を企画する計画を立てている。同会副会長で、通所介護事業所を経営する(株)スマイルクリエーション(東京都大田区)副社長の松橋良氏は「公的な勉強会などを通じて、多職種の連携につなげたい」と語る。

「科学的介護」「介護DX」「介護人材確保」などの対応ノウハウと実例を一挙公開!
『サバイバル時代の介護経営メソッド』好評発売中

 国内の少子高齢化の進展で、将来、医療・介護・年金の財政の逼迫が大きな問題になります。2020~30年代に15~64歳の生産年齢人口が急速に減少し、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければなりません。いわゆる社会保障の「2040年問題」です。
 介護の問題に置き換えれば、介護保険の財政や制度運営が厳しくなるのはもちろん、高齢者の介護を担う人材の不足が深刻化します。介護事業者は、限られた介護職員や経営資源で質の高いケアを効率的に提供できるサービス提供体制を早期に構築しなければなりません。
 そんな問題意識から、本書では「2040年問題」を克服する経営手法のヒントを提示しました。後期高齢者が急増する2025年のさらに先、2040年も見据えた2021年度介護報酬改定の内容を踏まえ、地域包括ケアシステムにおける介護事業の成功の秘訣、新たにスタートした「科学的介護情報システム」(LIFE)の詳細、介護現場でのICT(情報通信技術)の活用事例などを網羅。今後、経営戦略を検討される介護事業者にとって必携の1冊です。

2021年度介護報酬改定の収入試算ツールのダウンロードサービス付きです→詳細はこちらからご確認ください

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載の紹介

病院・診療所も必見! 介護ビジネス最前線2021
2021年度介護報酬改定では、「科学的介護情報システム」(LIFE)へのデータ提出や、ICT(情報通信技術)機器の活用が評価されました。書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容から、病院・診療所にも役立つ介護政策の最新動向や、先進的な介護事業者のノウハウの一部をセレクトしてお届けします。

この記事を読んでいる人におすすめ